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84. 黒いマスクの四銃士

 さて…………。



 美月の視線の先にあるのは、一本の動画ファイル。

 美月だけではない。カケル、大輔、そしてコジロウこと西本丸誠の4人は、そのコジロウがTEPAドライプより" 盗んできた "動画ファイルを見つめていた。



 ファイル名は、日本の女子高生複数人でレイプ。



 酒井可憐が、恋人だった一ノ谷英磨、他2名の男にレイプされている動画だ。


 美月は、なかなか再生ボタンを押せないでいた……。

 可憐が命を絶ったあの雪の日に、可憐より譲り受けたスマホの中も、美月は見れなかった。生前の可憐の姿を見るのが恐かったのだ。思い出に押し潰されそうで、画像も動画ファイルも開く気になれなかった……。

 だから……この動画ファイルを再生しようとする手は、動かぬままだった。



 ………………確認するんだ……確認しなければ、次に進めない…………!


 美月は、隣室で読書をしているであろう、陸には聞こえないようにイヤホンをし、再生ボタンをクリックする。




「やだ、やだ! やめて……!」


 最初から酒井可憐の悲痛な声が聞こえる……画面に映るのは、ベッドの上で男に後ろから両手を押さえられている女の子、酒井可憐……。

 可憐の後ろで両手を押さえているのは、英磨の腰巾着、寺澤裕也テラサワユウヤだろう。画面にもう一人の男の後ろ姿が映るとその男は、身動きが取れない可憐のスカートに手をかけ、脱がし始める。


「おお~~! やっぱ可憐ちゃんのパンティって、白なんだあ~~♪ イメージ通りだなあ~♪」


 下品な男の笑い声が聞こえてくるが、これは動画を撮っている畑野誕琥ハタノタンクの声だ。


「ってか、ちょっと待てよ、おい! 可憐ちゃん、タンポン入れてんの? 紐見えてんだけどさあ~~♪ ギャハハハハ! マジうける♪♪」


 他人の心情などまったく気にしない、下劣な生き物の笑い声がカメラ越しに聞こえてくる。辱しめられた少女は目に涙を溜めながらも、必死に状況から抜け出そうとする…………。


「英磨君、お願いやめて! 誰にも言わないし…………英磨君のこと、好きでいるから……!」


 可憐は涙声で懇願するが、英磨……おそらくは画面に後ろ姿で映る男は情け容赦なく、暴れる可憐の足を押さえながらスカートを脱がす。

 一方で、可憐の両手を押さえていた寺澤は、この期に及んで可憐に同情心でも湧いたのか、押さえていた手を緩め、慰めるように可憐の耳元でなにか囁くが、そこで可憐は脱がされていたコートを素早く掴んで布団の中へと逃げ込む。


「おい、裕也! ちゃんと押さえとけや~!」


 ぼやく声が聞こえるが、これは英磨の声だ。


「おい、布団はげって!」


 動画を撮っている誕琥の声に誘導されるように、寺澤が布団をはごうとするが、可憐が中から布団を掴んでいるのか、なかなかはげない。


「足掴め、足! 布団から出てる足! 引っ張り出しちまえよ♪」


 半ば笑いながら誕琥が指示を出し、獲物を追い詰める狼の群れのように寺澤と英磨は、布団の中に逃げ込んだ可憐を引っ張り出す……!

 泣きながら半裸の状態で引っ張り出された可憐は、二人の男に再び押さえつけられ、ショーツも脱がされた。 

 そして……………………。




 ………………アパートの一室で、美月は呆然と動画を見ていた……。

 その動画が見せるのは、一人の少女の尊厳の破壊と、それを笑う男、無言で己の欲望を満たそうとする男、どうでもいい情けをちらつかせながら、自身を正当化しようとする姑息な男……だった。




 東京の学生寮の一室で、赤木大輔は、こらえきれずに大粒の涙を流していた。


 神奈川県では、神楽坂カケルが怒りに身を震わせていた……。

 引き籠り……人との関わりを拒絶していた彼は、自分にはまだ" 悪 "を憎む気持ちがあったのかと驚いてもいた。


 岐阜県。

 物心ついた時から天才と言われてきた男の、電子タバコを吸う手は止まっていた……。

 一ノ谷発言の真意を知りたい! ただそれだけの目的で■酒井カレンこと美月の復讐計画に乗ってきた天才の身体の奥底には、熱い正義の波が大波となって押し寄せていた。




 …………動画を見終えた美月は、すっかりと冷めたコーヒーの残りを飲み干し、書き込みをする。

 時刻はそろそろ、夜の11時になろうとしていた。



 2X26/02/10 22:52 ■酒井カレン

 まずはコジロウとペケゾー、礼を言う

 お前らのおかげで、英磨を追い詰める証拠が手に入った

 ありがとう!



 2X26/02/10 22:53 ■酒井カレン

 しかしだ!

 お前ら二人は、可憐の事件とは関係ない

 そしてこれから戦うのは、日本のエリート一ノ谷家だ

 抜けても恥じゃない

 ここで降りても、決してお前らを卑怯者とも臆病者とも思わない!

 むしろ感謝している

 だから……返事を聞かせてくれ



 美月は、すぐに返事は来ないだろうと思っていた。

 考えに考えたうえでの決断……そう思っていたが、思春期真っ只中の少年二人からの返信は、時間がかからなかった。



 2X26/02/10 22:54 ■コジロウ

 ここまできて、降りるなんて選択ねえよ! 

 ゴミ溜めと言われた掲示板から生まれたハッカー集団、おれら■Blackブラック Maskマスクが、真のゴミどもを掃除してやろうぜ!!



 2X26/02/10 22:54 ペケゾー

 前にも言ったろ、一緒にやるって!!

 一ノ谷家だろうが、なんだろうが関係ない!

 可憐さんを傷つけた連中に、罪を償わせる!!

 やめろって言われたって、やるからな!!



 年下の男の子二人の即レスに感動する一方で、関係ない子供を巻き込んでしまったと思う美月でもあった……。


 2X26/02/10 22:56 ■酒井カレン

 ありがとう


 覚悟は、できてるわけか



 2X26/02/10 22:56 ■red tree

 みんなありがとう

 頼もしいな!

 アニメみたいな熱い展開って、リアルでもあるんだな



 2X26/02/10 22:58 ■コジロウ

 現実はアニメより奇なり、なんてな!

 そうだ! 三銃士の誓い、またやりますか!

 いや、今はペケゾーちゃんが加わったから、四銃士かな?



 2X26/02/10 22:59 ペケゾー

 ん? 

 三銃士の誓いって、なんすか、先輩

 三銃士って、あの三銃士?



 ペケゾーの質問に美月が答える。


 [あの三銃士だよ 昔、アニメにもなってたな

 フランスの小説で、銃士見習いのダルタニアンが主人公の冒険活劇

 その小説の中で、強大な敵を前にしたダルタニアンが言うんだ


 ひとりは皆のために、皆はひとりのために! ]


 [まあこれ、日本語の誤訳だけどな

 実際は、『ひとりは皆のために、皆は勝利のために!』

 って意味らしいけど、おれは日本語訳のほうが好きだぜ]


 [ああ、自分もそっちがいいっすね]


 [ペケゾー君が合流する前、ぼくらだけで会議をしてた時に

 ■コジロウ君がやりだしたんだ

 気合を入れるためにってね]


 [いや、そん時はよ……ただの軽いノリで言っただけよ

 でも今は違うぜ、本気だ!

 ひとりのために、おれはやる!]


 美月が続く。

 [ああ、ひとりのために]


 [可憐さんは、いつもみんなの為に行動してくれてた

 だから、今度は可憐さんのために]



 カケルが、なにかに導かれるように書き込む……。


 [ひとりは皆のために]



 そして……皆もそれに続く。




 [ 皆はひとりのために!! ]



 強大な権力によって踏みにじられた、一人の少女の尊厳を守るため、四人の銃士が立ち上がった!!

 倒すべきは若緑市の支配者にて日本有数のエリート一族、一ノ谷家。

 誰も逆らえない一族に、黒いマスクを着けた銃士達がインターネットのゴミ溜めより、正義の銃口を向ける……!!

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