76. ネットの海を探せ!
2X26/02/10 19:029 ■red tree
皆さん、そろそろ本題に入りませんか?
東京都の稲田大学学生寮からアクセスしている、赤木大輔こと■red treeが発言する。パソコンデスクには、ペットボトルのお茶とおにぎり。コンビニで買ったこれらが、大輔の夕飯だ。
2X26/02/10 19:30 ■コジロウ
そうだよ
下らねえ話してねえで、とっとと一ノ谷攻めの作戦会議といこうぜ!
関東から遠く離れた岐阜県より、西本丸誠こと■コジロウ。
ダボダボのTシャツに黒のハーフパンツという真夏のような恰好……。暖房がガンガンに入った部屋で、ギフテッドのニートは真っ赤な髪を燃える炎のように揺らしながら、書き込みをする。
2X26/02/10 19:31 ■酒井カレン
お前なあ~!
つうか、雑談したいなら会議が終わり次第、黒々ますく掲示板のほうでやってくれ
本題にいくぞ
埼玉県若緑市
酒井陸の部屋のリビングで、美月は陸が淹れてくれたコーヒーを飲みながらブラマスのメンバー達と会議の真っ最中だ。
陸の方は立ち上がって、風呂を沸かしにいく……。
「ん……?」
陸は洗面台の前で、ケースに入った歯磨きを見つけた。
「……なんだ、今日泊まっていくのか?」
「お邪魔だったか?」
美月がパソコンの画面を見ながら答える。
「別にいいけど……オレ、明日も仕事だぞ」
「わかってる。朝食はわたしが作っとくよ……宿代だ。今夜はゆっくり寝てくれ」
「……そうさせてもらうよ」
風呂場にいく陸に、美月が振り向き言う。
「寝間着、持ってきてないんだ。Tシャツ貸してくれないか?
帰る時に洗濯しとくからさ」
「タンスに入ってるから好きなの使え。寝る時だけだろ? いいよ、洗わなくって。
……というか、下着も忘れたとか言うんじゃないだろうな?」
「下着の替えはあるよ……心配するな」
そう言いながら美月は、テーブルの上に置かれた陸のほうのコーヒーを味見するように飲む。陸はというと、風呂場へと消える。
……甘い。砂糖入れ過ぎなんじゃないか? 性格も甘い奴だが、味も甘党なんだな。
ブツブツとパートナーへの文句を垂れながら、美月はネット上の会議を進める。
[美月ちゃあ~~ん、魔法使い君にマロ助の住所教えてもらったらしいけど、ブラマスメンバー引き連れて、レイプ犯のトコにカチコミ行くわけ?]
[それも考えたが、却下だ
殴り込みはすでに、■red treeがやっている]
[正月に英磨をぶん殴って、逮捕されたよ
奴のおじいさんに火傷まで負わされたけど、向こうが過剰防衛に問われることはなかった]
[英磨のおじいさんって、元法務次官だっけ?
いろいろと顔が効くのかな]
[ペケゾーちゃん
一ノ谷家って、総理大臣も輩出してる超名門家系なのよ
ちょっとやそっとの法律違反なんて、簡単に揉み消せるっしょ!]
■red treeが問いかける
[居場所がわかっても、力ずくは無理だ
■酒井さん、どうする?]
[英磨が可憐をレイプした証拠を見つけて、それを奴に突きつける!]
[証拠って、可憐さんの下着? レイプ犯の体液が残ってたって聞いた]
[ペケゾー、それはあくまで可憐と複数の男達が性行為をしたという証拠に過ぎん
男どもは卑怯にも、あくまで合意の上でセックスをしたと言うだろうよ
レイプされた可憐が死んでる以上、それは証拠にならない]
[じ、じゃあ、レイプした証拠って……どんなのだよ!]
[そうだ……タンクの奴が言ってたな]
[レッドさんよお、それってどういう意味?
つか、タンクってなんだよww 完全にDQNネームじゃんw]
大輔の代わりに、美月が答える。
[畑野誕琥
本人いわく、親父がタンクローリーの運転手だったから、こういう名前になった……らしい
名前だけじゃなくて、本人もどうしようもないクズだよ。そのクズが言ってた]
" 可憐とヤッた時の動画、持ってんだあ~ "
[あいつらは……可憐をレイプした時に、動画を撮っていた。
警察に言ったら動画をばらすからな! と脅しの材料のつもりで撮っていたみたいだが、それは結果的に犯罪の証拠になった
その動画を探す!]
[探すって、ちょっと待って美月ちゃん!
それって、奴らのパソコンの中から探すってこと? 不可能じゃね?]
[誕琥のバカは、その動画を一度ネットにアップロードしてたらしい 自慢したかったのかどうかは知らないが……
そのあと消したみたいだけど、誰かがダウンロードしているなら別の場所にアップロードしている可能性がある それを探す]
[おいおい、待て! それって海のどこかに沈んだ沈没船から、金塊を引き上げるって事と一緒だぜ? 無限に広がるネットの海から一本の動画を探す気かよ!?]
[ああ、そうだ……というか…………それしか方法が思い当たらない」
[……魔法でも使わないと無理だな]
と、■red tree。
そのあとに魔法使いペケゾーが続く。
[つまり、おれの出番ってこと?]
[そうだ……結局のところ、魔法使いに頼らざずをえない。
在在センには日本に居住する人達全員のインターネットや電話、クレジットカードなどの、電波で飛ばせるもの全ての情報が記録されているのだろう?
ならばペケゾー、在在センにアクセスして、一度消されたタンクの動画が再アップロードされてないか、探し出すことはできないか?]
神奈川県蒼町
カケルは食べ終えたカレーライスの皿をテーブルに置き、モニター画面を見つめる。
在在センからファイルを探すのって、やったことないけど……でも理論上は可能だよな。
「おい、ベル。動画を探してくれないか?」
『はい? 動画……?』
ベルは画面内で、夕飯だろうか……パスタを食べている。
『どんな動画をお探しですか?』むしゃむしゃ……ちゅる。
「17歳の女子高生が、いや、やめて! って言いながら3人の男達とエッチしてるやつ!」
『マスター!!!
パソコンの中身、全世界に晒しますよ!!!』
「パスタ食いながら怒鳴るな! 汚ねえな!!」
『汚いのは、マスターの心です!!
なんて動画を探させるんですか! サイッテーー! 女の敵!!』
「勘違いすんな! 正義の為に言ってんだ!!」
『性器の為ってなんですかあ!! このエロショタ!!』
「性器じゃねえ!! 正義だ! 人の話をよく聞けい!!」
数分かけてカケルは事情を説明した……。
『……ったくもう。最初からそう言ってください!』
「言ってるだろ……。で、どうなんだ? 探せるか? タンクが上げた動画」
『……探すことはできますが、一度削除されてますから、見つかるかはわかりませんよ。
タンクって人が、その動画をいつアップロードしたのかわかりますか?』
「わからない……だけど動画が撮られたのは2X23年12月27日で間違いないから、そうだな…………そこから一ヶ月、2X24年1月31日までの間にタンクがアップロードした動画の情報をくれ」
『了解です』
数十秒後、ベルがアップロードされた動画の情報を持ってくるが……。
「……なんでこんなにあんだよ」
その数は12件あった。




