28. 引きこもり男子の戸惑い
10代引きこもり男子が、" 男性 "から「会いたい」と言われた時の心理。
やめろよ……人となんか会いたくない。
どうせ、おれのことをバカにしてるんだろ。
おれはあんたみたいに、周りと上手くやっていけない…なんの取柄もない。
おれの気持ちが分かるとかやめろ! 分かりもしないくせに……!
理解したい? 気持ちを知りたい?
嘘つけ!!
バカにしたいだけだろう!
もう、ほっといてくれ…………。
部屋のドアを開けて……だと? 開けるわけねえだろ、このヤロー!!
偉そうなこと言いやがって! このクソヤローー!!
とっとと帰れよ、一般人!!!
10代引きこもり男子が、" 美少女 "から「会いたい」と言われた時の心理。
「ぼくも会いたいです!!」
[えっと……もえさん、会いたいって言うのは……]
[え? そのまんまの意味だよ
会って、きちんとお礼言いたいしさ
アヤ丸君、もうアヤ丸でいっか!
アヤ丸撃退した時のカケル君、超カッコよかったよ!]
[あ、ありがとう!]
『鼻の下のびのび』
ベルがツッコミを入れる。
おそらくは鼻ウンコほじほじとかけてるのだろう。
「うるさい! いちいち茶々入れるな!」
「翔琉~いい加減、夕飯食べちゃいなさい」
階下から母親の声……現実に戻される。
現実………。
カケルは、引きこもりである。それも外に出れない、真性引きこもり。
[も、もえさん]
気持ちは嬉しいんだけど、その…………
[おれ、引きこもりだから、外には出れない]
[ああ、そうだったね]
…………情けない。
先ほどの勝利の余韻はどこへやら……カケルはPM欄を眺めながら、うなだれる。
[じゃあ、わたしがカケル君の家に行くよ]
………………………………
え…!?
えええええええ!?
[う、うちに来るの!?]
[うん、だめかな?]
い、いや……
ちょっと待てよ、おい……!
話がドンドン進んでないか!
[えっと……来週の日曜日って空いてる?]
に、日曜日……?
えっと…………まず今日は、何曜日で何日だっけ?
……毎日が日曜日の引きこもりに、曜日の概念はない。
[ちょっと待って!]
引きこもりであるカケルの予定は、いつでもウエルカムだ。
しかし…………
問題は家に居る両親の予定である。
両親の予定を確認しようとしたら、もえより返信。
[なんかさ……
PMのやり取りだと、うざったいから
電話番号の交換しようよ]
……………で、電話…!?
思春期ド真ん中の引きこもり男子が、" 男性 "から「電話で話したい」と言われた時の心理。
人と話したくないって言ってんだろ! なんで電話すんだよ!
電話のコール音が恐いんだ……心臓がバクバクする……!
なんで分かってく……
以下略
思春期ド真ん中の引きこもり男子が、" 18歳Gカップ美少女 "から「電話で話したい」と言われた時の心理。
「ボクもお話したいです!!!」
コスプレイヤー翡翠もえの電話番号……。
さっきまでのグループチャットで、アヤ丸こと伊藤一馬が執拗に聞きだそうとし、拒絶されていたものだ。
それをカケルは、いともあっさりと承諾された……というか、むしろ翡翠もえのほうから求められた。
レスバトルの勝利者カケルは、ちょっとだけ優越感を味わった。
PM欄にウンほじこと翡翠もえが電話番号を晒す。
翡翠もえは、まだアヤ丸のことを警戒しているのか……アヤ丸がいたグループチャットではなく、あえて鼻ウンコほじほじのPM欄にスマホの電話番号を送っている。カケルはそれを見ながら、コスプレイヤー翡翠もえのスマホに電話をする。
引きこもる前は、リア充だったカケルだ。
女の子のスマホに電話するのは、初めてではない。しかし……!
フォロワー数10万人以上の人気コスプレイヤーに電話するのは、人生初だった。
緊張する……。
「もしもし、カケル君?」
「は、はい……! カケルです!」
「ふふ、やっと話せたね♪」
「は、はい…えっと………!」
会話が続かない……
中学の時だったら、女子と話すなんて、造作もなかったんだけどな……とはカケル。
「カケル君、いつなら都合いいかな?
今週は無理なんだよね、あたし。
来週も土曜日はイベントがあってさ……
日曜なら空いてるんだけど」
「ええ~~と……ちょっと待ってください…!」
カケルは子供部屋のドアを開けて、" 下界 ”の様子をうかがう…。
父親の書斎から光が漏れている。
" あいつ "は自室だな……母親は……風呂かな。
カケルは自分の家の階段を、まるで敵の城に侵入した忍者のように気配を殺して降りて行く……。
目指すは、ダイニングルームのホワイトボード。そこには家族……両親の予定が書いてある。
一階に降りたカケルは、脱衣所の電気がついているのを確認しつつ、ダイニングに入ってホワイトボードの前に立つ。ダイニングルームのテーブルには、母親がラップをかけたカケルの夕飯が置いてある。
午後3時に起きて、朝食(昼食)をとったのが3時半過ぎ…夜の11時になろうかという、この時間になってようやく、「腹減ったな……」と思うカケルだった……。引きこもりの生活習慣は、完全に一般人とずれている。
空腹が気になりかけたカケルであったが、ここは当初の目的であるホワイトボードに目をやる。
来週の日曜日……。
あいつは単発バイトか…金あるだろうに、ご苦労なこった。AM8:00~PM2:00までって書いてあるな。
母親は………予定が書いてないぞ、くそお~~。
……でもどうせ、したつづ味に手伝いに行くだろ。
したつづ味……カケルの母親、神楽坂久美子の友人夫婦が経営する、食堂だ。
「あの、もしもしカケル君?」
「あ、ごめん!
聞いてる、聞いてるよ!」
スマホから応答する翡翠もえにカケルは言葉を返す。
[えっと……もえさん。
来週日曜の午前中なら、大丈夫そうです
日曜の9時から……午後1時くらいですかね」
「う~~ん……じゃあ、日曜の10時くらいにお邪魔してもいいかな?」
あ………えっと……
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、家の場所教えてもらっていい?
カケル君ん家、訪ねるのにさ」
「……はい」
というか…………本当にウチに来るのか……コスプレイヤー翡翠もえ。
「翔琉、電話なの?」
風呂場から母親が声をかける。
思わず、ドキっとするカケル。
「ち、違う!」
そう一言告げるとカケルは、降りてきた時同様、忍者の如く足早に階段を登って、自身の城とも言うべき自室へと逃げ帰る……!
「か、カケル君? えっと、住所は……?」
「ち……ちょっと待って!」
自室に帰還したカケルは、もえの電話に住所に教える。
「…………………………」
「じゃあ、来週の日曜日……会いに行くね♪
ふふ、楽しみだなあ~~
魔法使いさんに会うの♪」
そう言って電話は切れた。
や、約束してしまった………。
来週…もえさんが来る……おれの家に…。
来週日曜、午前10時……。
…………………ん?
午前……10時?
…………………おれが今日起きたのは、午後3時。
やばい!!
昼夜逆転、治しておかないと……起きれないぞ!!




