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26. 反撃開始!!

 伊藤蓮イトウレン  伊藤一馬イトウカズマ


 ………どっちだ。

 カケルは人差し指で、画面に写った二人の名前を交互に指さす。

 どっちかが、もえさんのストーカーで間違いない…!


 どっち………


 どっち、どっち! どっち!!


 指は激しく動くが、状況はぴくりとも動かない。



 動画…。

 あの動画に、なにか映ってないか!?


 できれば見たくないが、そうも言ってられない。

 アヤ丸が手首を切りつける動画を再生し、食い入るように見る。

 注意深く動画を見るが、手掛かりになりそうなものは見つけられない。



 [もえさん、好き! 好き好き! 大好き!!

 でも自分は嫌い!!

 今度生まれ変わってくる時は、もえさんに振り向いてもらえる男になります!!

 その時は…! 僕のPMに、『大好きだよ』って言っでぐだざぁい!]



 異常だな…この男……。


「ベル…この音声を分析して、個人を特定することってできないか?」


『無理ですよ。

 そこまでの性能を求められても困ります』


 まあ…そうだろうな……。


 だめ元で聞いてみたが、やはりだめだった。

 そしてこれまた、だめ元で動画ファイルの情報を見てみるが……



 作成日 2X26年1月18日

 作成者 不明


 だめかあ……ちくしょお…!



『マスター、そろそろ5分です』


 ベルに呼びかけられ、モニターを見る。



 [だからもえさん、電話番号を教えてください。

 もえさんと連絡を取るためです]


 [連絡はゼータのPMでも、できるでしょ?

 わたし、アヤ丸君をブロックなんてしないよ]


 [ゼータですと蒼高校一年生の神楽坂カケル君に見られるおそれがあります。

 だから、スマホの番号を教えてください。

 二人きりでお話しましょう]



 こいつ、調子に乗りやがって…!

 カケルは再び動画に目を向ける。

 叫びながらザクザクと手首を切り刻むアヤ丸。


 [今度生まれ変わってくる時は、もえさんに振り向いてもらえる男になります!!]


 自殺をほのめかしてるが、死ぬ気なんてさらさらないんだろな…。

 この動画撮り終えたあと、速攻で病院に駆け込んでるだろ、この口先野郎が!!




 ………………………………………………



 両腕で前髪をかきあげるように頭を抱えながら動画を見ていたカケルの脳裏に、一滴の" しずく "が落ちる………



「あ…………!」



「ベル!!

 伊藤蓮と伊藤一馬のマイナ保険証の履歴を調べろ!

 動画が撮られた1月18日から今日までの通院歴!!」



 カケルは振り向き、モニターを見る!

 グループチャット内の翡翠もえはモンスターに捉えられ、身動きが取れない!


 [じゃあどうやって僕と連絡を取るんですか!

 嫌ですよ。人の個人情報を得意げに晒すスーパーハカーの神楽坂カケルがいるPMで、やり取りなんて!]


 [電話番号はダメだよ!]


 [明日、朝一番で蒼高校に連絡します!!

 いや、今警察に相談したほうがいいかな]


 [やめて!]



 ベルが情報を伝達する。


『マスター!

 伊藤連はその期間での通院歴はありません』


「伊藤一馬は?」


『1月18日午後3時5分、榎本エノモト整形外科で切創セッソウの治療を受けています!』



「こいつだ!!!」


 カケルは、" ビンゴ! "とばかりに、デスクを景気よく叩く!

 立ち上がり…立つ意味はなかったが、落ち着いて座ってなどいられない。



「ベル!

 山崎満名義のスマホは、いつ契約されてる!?」


『2x25年10月10日です』


「よし、じゃあ今度は伊藤一馬のスマホだ!

 現代人なんだから、本人名義のスマホは持ってて間違いない。

 一馬のスマホのネット履歴を探れ! 2x25年10月1日から動画を撮った2X26年1月18日まで。

 ネットで飛ばし携帯を入手したのなら、ログが残ってるはずだ!」


『分かりました! しかしマスター、少々時間がかかります』


 だろうな…SNS、メール、通話アプリと全部調べることになる……しかし!



「構わない、調べろ!」


『了解、検索モードに入ります!』


 ベルは目を閉じ、画面内で直立不動で静止する。ベルの大きな眼鏡が白く光ると膨大な量の文字列が次から次へと、そのレンズに表示されては流れていく……。

 …飛ばし携帯を入手したという決定的な証拠が掴めれば……………

 カケルはモニター画面に視線を移す!


 このモンスターを今度こそ仕留められる!!




 勝ち誇ったような、モンスターアヤ丸のメッセージ。

 [もえさん、返事は?]



 [わかったわ

 電話番号教えるから、カケル君を警察に突き出すのはやめて!]


 [そう言ってもらえると嬉しいよ。もえさん!

 それじゃあ番号をよろしく]



 [もえさん、教えなくていい!]


 [カケル君!]


 [もえさん、ありがとう…おれを信じて待っててくれて……

 もう大丈夫、ここから…反撃する!!]



 [もえさん、早く番号を教えてよ♪]


 アヤ丸はもう、カケルのことなぞ眼中にない。

 自分の正体を見抜けず、カケル自身はその正体を曝け出された哀れで阿呆な引きこもり…。

 遠い北海道の地で、アヤ丸こと伊藤一馬は勝利の笑みを浮かべていた。


 ……カケルが、もう一言発するまでは。




 [そろそろ終わりにしようか、北海道在住の伊藤一馬]

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