24. 魔法が通じない!?
……カケルがセイイチローにイラついてる間にも、グループチャット内ではカケル…もとい、カグラ@kagurazaka34を抜きにして話が進んでいる。
[なんで会えないの?
おかしいよね、悪かったって言っておきながら
会いたくないって、本当に自分が悪いと思ってるのかな?」
[ファンの人と個人的に会うとか、できないよ
アヤ丸君、お願い! わかって!]
カケルがもえの助太刀に入る。
[性犯罪者に会いにいけるわけないでしょ]
[蒼高校の神楽坂カケルさん、性犯罪者って誰ですか?]
…わざわざ名前出しやがって……それも高校の名前まで…。プレッシャー与える作戦か?
ちくしょうが…あまり、かなりいい気分じゃない……
しかし、それならこっちも……!
[あんただよ!
2X24年8月3日、13歳女子児童への不同意わいせつ罪で逮捕されてるよね!?]
[知らないなあ~]
[ふう~~ん、あんたじゃないんだ
じゃあ、これらの情報、ゼータで拡散しても文句ないですよね?]
[ないですよ、どうぞ]
………………………………なんだ、こいつ……!
性犯罪者ってばらされるんだぞ…それも13歳相手のわいせつ罪。確実に人生終わるだろ……!
それなのに………なんでこいつは平然としてられる!?
自傷動画を好きな女の子に送り付ける人間って、やっぱ狂ってるのか…他人にどう思われようが、どうだっていいのか?
…………いや…違う!
こいつ、動画内で顔隠してたな…映ってる部屋もシンプル、いやシンプル過ぎる。極力身元バレを恐れてる!
カケルはウンほじのアカにプライベートメッセージを送る。
[もえさん、アヤ丸の顔が映ってる動画か画像ってある?]
[ないよ 彼、身バレを凄く警戒してるようなんだよね
だからカケル君に本名ばらされてるのに、平然としてるのが不思議なんだ]
やっぱりか!
自傷動画を送るのに、後ろめたさがあるな。
もえさんを完全にコントロールできるまでは、正体を明かさない気なんだろう…。
それだけ警戒してる奴が、なんで慌てない?
名前どころか、犯罪歴まで晒してるのに………!
カケルはパソコンデスクに膝をつき、考えにふける。
グループチャット内では、アヤ丸が翡翠もえに出会いを求めている。
[カケル君っていうのは、ハッカーかな?
さっきからずっと個人情報を言ってくるよね?
もえさん、いったいどういうことですか?]
[どうって言われても]
[ファンの個人情報を盗んだうえに、人を性犯罪者呼ばわり。
酷過ぎませんか、これ。ちゃんと謝ってもらえますよね?]
くそお~~~晒しが、かえって不利になってる……!
カケルはウンほじアカにメッセージ。
[もえさん、なんとかするから、もうちょっとだけ耐えて!]
[わかった、頑張る!]
カケルはライチョウマークの黒スマホを手に取る。
「ベル…いまさらだが、串を刺してると在在センから情報を持ってこれない、なんてオチはないよな?」
『串…匿名性を高める、プロキシサーバーのことですね。
それはありません。
モバイルネットワークからインターネットに接続しようとした場合、その電波はキャリアの基地局に飛びますが、そこで在在センへと情報が送られます。プロバイダーを通じてネットに接続される前に送られるので、プロキシをいくら刺そうが意味ありません』
「そっか…ちなみに山崎は、どこの基地局を経由してるんだ?」
『モバイルネットワークではなく、Wi-Fiからのようです』
「…Wi-Fiからなら、基地局に電波は飛ばないだろ。
その場合、在在センの情報収集はどうなる?」
『スマホからの電波が飛んだ先、Wi-Fiルーターから収集されます。
こちらもネット接続前ですから、プロキシは意味を成しません』
「そうか……」
まさかとは思ったが、やはり在在センからの情報は正確か…。
なら、やはりアヤ丸の正体は山崎満……。
『在在センからの情報を疑うなら、スマホの位置情報を調べてみますか?
山崎満が今居る場所は……』
『はああああああ~~~~!?』
「どうした、ベル! エロ動画だと思ってクリックしたら釣り動画だった、みたいな声出して!!」
『マスター! エロガキ丸出しの例えはやめて下さい!!』
「う、うるさい! それよりなんだよ?」
『……山崎満は今、北海道札幌市に居ます』
「ほ…北海道!?
………沖縄じゃないのか?
北海道と沖縄って、どれだけ離れてるんだよ」
『直線距離にして、約2,200km~2,400kmですね』
…マジレスせんでいい……。
というか……どういうことだ?
カケルはゲーミングチェアから立ち上がると、スマホを持って部屋の中をウロウロし始める…。
…北海道に旅行しに行ってる?
いやいや、無職だろ。どこにそんな金があるんだよ……じゃあ、いったい…。
………………………………………
………………あ…
…………まさか……!
赤の他人のスマホを使ってる!!?
振り返り、モニターを見る。
ストーカーと追い詰められたコスプレイヤーの会話。
[もえさん、ネットでただ謝られても誠意は感じないですよ
直接会って謝るのが礼儀なんじゃないですか?]
[だから直接は会えないの! お願い、わかって!]
[じゃあ、しょうがないですね。
蒼高校に連絡して、僕の個人情報を流した神楽坂カケル君について聞いてみるしかないか]
[カケル君は関係ないよ!]
[ありますよ。僕を犯罪者にしたんだから!]
…………こいつは…山崎満じゃない。
カケルはモニターを長い前髪越しに睨みつけながら呟く…。
「誰だ、お前………
魔法使いに幻影を見せるなんて……いい度胸だな」
カケルの部屋の時計は、夜の10時を回っていた。
同時刻…カケルの住む神奈川県より約1300キロ離れた、北海道札幌市のどこか……。美しいタイル外壁の家の一室。
電灯が消えた暗い部屋で、左手首に包帯を巻いた若い男がスマホを見ながら不敵な笑みを浮かべていた…。




