105. 出るか、出ないか
プルルルルゥ……!
カケルの部屋に、スマホの着信音が鳴り響く……。
パソコンのモニター画面には、顔は見切れてはいるが、スマホを耳に当てて着信を待つ配信者タヒ子の姿……。
ほ……ほんとにかかってきた…………。
驚くカケル……そしてゼータのグループチャットには、状況を知ろうとするブラマスメンバー達の書き込み。
[おい、ペケゾーちゃん
タヒ子の奴、配信で電話かけてるけど
ほんとに、かかってきてるのか?]
[状況を教えてくれ
誓って言うが、わたしはほんとに
お前の電話番号、漏らしてないぞ]
それに対してカケルが答える……。
[タヒ子から電話がかかってきてる……]
着信音が鳴る部屋でカケルはベルに尋ねる。
「ベル……今、おれのスマホにかけてる奴は誰だ?」
『岩田葉亜兎羅舞さん名義のスマホから、かけられてますね』
…………マジか……。
カケルは驚きの表情でモニターを見る。
「ペケゾーくうぅ~~ん! お願い、電話出て! でないとリスナーにヤラセ認定させられちゃう!」
グループチャットには、赤木大輔の書き込み。
[カケル君、タヒ子さんがかけてるのって、君のスマホ?
それとも家の電話?]
[おれのスマホ……
なんでおれの番号知ってんだよ、ちくしょう]
[っていうか、
これ、どうしたらいい?
さっきからずっと鳴ってんだけど]
[この際だから、電話出てみ?]
コジロウの発言を大輔が否定する。
[いや、全世界に公開されてる配信だよ
迂闊に出ないほうがいいと思う]
[わたしも、そう思う
電源ボタン押して切るなよ?
相手に切られたと思われるから
鳴らしておけ]
[う、うん
ありがと、みんな
ほっぽっとく]
子供部屋にスマホの着信音がひたすら鳴り響く……。
モニター画面には、スマホを耳に当てた状態の配信者タヒ子…………であったが、ようやく諦めたのか、スマホを切って話し始める。
「えっとお……ペケゾー君、出ないなあ…………。
夜の10時だし、外に出てるってこと、ないと思うんだけどなあ」
[結局ヤラセじゃねえか!]
[どうせ知り合いのトコにでもかけて、放置させてただけだろ]
[そもそも仮にペケゾーが出たって、そいつが本物かどうかは判断できねえしな]
「いや、ヤラセじゃないから……! ほんとだから!!」
……ほんとなんだよなあ…………クソが!
この配信者、なんでおれの電話番号知ってんだよ……。
「ペケゾー君には繋がらなかったのでえ……えっと次は、ペケゾー君とレスバした相手に電凸してみようと思いま~~す」
……………………は!?
タバコを吸い始めてたタヒ子は、もう一方の手でメモ帳を広げる……。
「えっとお……誰にしようかなあ~~」
お……おいおいおい! 待てよ……なんだよ、それ!
おれだけじゃなく、今までレスバした相手の電話番号も知ってるってこと!?
[ペケゾーに電凸できなかったからって、誤魔化してんじゃねえぞ!]
[レスバ相手に電凸とか、どうせ嘘だろ]
いやいやいや! こいつは多分、レスバ相手の電話番号も知ってるぞ!?
流れるコメント欄をカケルは驚きと不安の表情で見つめる……。
タバコを吸いながら、タヒ子が話す。
「ミツボシ電機って、あれか……ハッカー集団、ブラックマスク誕生のきっかけになった会社。
ペケゾー君、そこの元部長ともレスバしてるけど……パワハラ部長なんだよなあ……。やだな、恐いなあ~」
ミツボシ電機の部長……富田さんだっけ?
たしか今年の一月だったよな…………彼とレスバしたの。
「男の人はやだなあ……恐いもん。
女の人がいいな…………あ、この人……港区女子を名乗ってた人」
……ん? 港区女子?
………………ああ、あいつか!? 去年のクリスマスイブに、スレまで建ててヒキ板を荒らしてた人!
「ああ、じゃあね……この人に電凸してみたいと思いまーーす!
えっと、上の名前だけ言うとね……磯貝さんです」
[はいはい、ヤラセヤラセ!」
[どうせまた出ねえってオチだろ]
[磯貝ってのも、今考えた名前だろww]
…………いや、たしかそう……磯貝って名前だった……。
磯貝…………磯貝寿美子って名前だったと思うけど……。
「磯貝さん、出てくれるかなあ~~~」……すぱぁあ~~
画面ではタヒ子が新たなタバコを吸いながら、電話をかけている。
こいつは…………なんでなにからなにまで、知ってんだよ……!




