五十・弓の名手達
《常葉の庵》に来て、数日が経った。
未だに魔族の襲撃はない。
(……静かすぎる。)
警戒を解くつもりはないが、このまま何も起こらないとは思えない。
あの後、襲撃した男たち――タリオンたちは、村の牢に入れられたらしい。
村の者たちがどう対処するかは知らないが、少なくとも、もう勝手な動きはできないはずだ。
それにしても……
(この森に飛ばされて、あの三姉妹にオーラを見破られ……そのせいで怪しまれて襲撃され……)
俺のオーラ、隠しきれてないのか?
俺は胸元に手をやる。そこには、リリスにもらった“ペンダント”――もとい、封印石がある。
(……もう、効力が弱くなってるのか?)
確か、リリスもこう言っていた。
「今の封印石じゃ、魔力を完全に封印することはできません。ただ、オーラを抑えることなら……」
とか言ってたような...
つまり、この封印石だけじゃ、もう隠しきれなくなってきている。
そういえば……俺、 ࿓《魔力操作》(まりょくそうさ) を習得してたよな。
(……これ使えば、オーラ消せるんじゃね??)
馬鹿か俺は……! 今頃気がつくなんて……!
俺はすぐさま**࿓《魔力操作》࿓を発動する。
――自身の魔力を、意識する。
(ほ…ほう……確かにこれは良くないオーラだ……。)
禍々しく渦巻く黒い魔力が、まるで意思を持っているかのように俺の周囲に漂っている。
(……こりゃ、疑われても仕方ないな。)
俺は集中し、**࿓《魔力操作》࿓を駆使して魔力とオーラを収縮させていく。
ギュゥゥゥン……
(おぉ! いい感じ!!)
徐々に、俺の体を包むオーラが小さくなっていく。
(どんどん収まってく……!)
この調子なら、今後は余計な疑いをかけられることもなくなるかもしれない。
――そして、ふと思う。
(良かった……勇者たちに気づかれなくて……。)
もし、あいつらにこのオーラを感づかれていたら、余計な面倒ごとになっていたに違いない。
少しホッとしながら、俺はさらに魔力の制御を細かく調整し始めた。
出来た……!!
完全には消せなくても、人並みのオーラにはなったはず……!
これで怪しまれることもないし、必要に応じて自由自在に調整できる。
俺は軽く息を吐き、胸元に手をやる。
――そこで、ふとペンダントを握った。
(……この効力はもう無いし、正直、今の俺には不要なものだけど……。)
封印石としての役目は果たせなくなった。もう、ただのアクセサリーに過ぎない。
それでも――
(リリスがくれたものだし、とりあえずは大切に肌身離さず持っておこう。)
俺はそっとペンダントを握り直し、静かに目を閉じた。
「ヒナタさ〜ん! こっち来て遊ぼ!」
ん……この声は、三女・ルルンか……。
気づけば、俺は三姉妹や他のウッドエルフたちと仲良くしていた。
最初は警戒されていたし、俺も疑心暗鬼だったけど……いつの間にか、馴染んでしまっている。
(……まぁ、悪くはないか。)
俺は軽く伸びをしながら、ルルンの方へと向かった。
「今日は何して遊ぶの……?」
俺が問いかけると、ルルンが楽しそうに笑いながら答える。
「ふふっ、今日はお姉ちゃんたちと弓勝負!」
どうやら、誰が一番の弓使いなのかを決める勝負らしい。
ルールは単純――制限時間内に、より多くの獲物を仕留めた方が勝利。
すると、次女・リーリャが薄ら笑いを浮かべながら俺に問いかけてきた。
「ヒナタさんの……予想は?」
その視線が妙に鋭く、まるで試されているような気がする。
「う〜ん……そうだね……」
俺は腕を組み、少し考え込んだ。
正直、この三姉妹は結構強い。
今の勇者たちにも引けを取らないくらいの実力はある。
むしろ、弓の才能に関しては、勇者パーティーの弓使い・二階堂さんの良き師匠になれそうなレベル。
俺の知る限りの情報を整理する。
•長女・ラミア → 剣術と魔法弓が得意。
•次女・リーリャ → 暗殺系に長け、魔法・弓全般が得意。
•三女・ルルン → 怪力と範囲魔法に加え、弓の腕も確か。
(……あれ?)
俺はふと気づく。
こいつら全員、弓得意じゃね?
てか、スペック高すぎない??
……なんかもう、誰が勝ってもおかしくない気がしてきた。




