二十・惹石の守護神
「ねぇ、リリス…この洞窟やっぱり不気味なんだけど…もう外出ない…?」
目ぼしい宝も無いし、白い人影も出るし…さっさとここから抜け出したいんだけどなぁ…でも…
「何を言っているのですか!洞窟の奥からプンプンと怪し…いや、た、宝物の気配を感じます!こんな所で引き返したら冒険者の風上にもおけませんよ!」
ですよねー…というか冒険者になった記憶無いんですけど…まぁでも確かにここで引き返したらただの時間の無駄だよな。
”キュリン!“
突然、キュリンが俺達の前に飛出て“着いてこい”という合図をしていた。俺とリリスは不思議に思いながらもついて行くことにした。歩いていると段々と洞窟の風情はどんどんと変わっていった。最初の薄暗い洞窟に比べ、鮮やかな鉱石や魔石により虹が掛かったかのような明るい洞窟になっていた。
「すご…まるで虹を歩いているかのようだ…」
「美しい景色ですね、奥から溢れ出ている魔力の影響で洞窟に変化が起きているようですね。」
景色に見とれながら歩くこと数分…俺達は大きな古びた扉にたどり着いた。
「なに、この如何にも怪しげな扉…」
「この扉の向こうから魔力が流れているようです。」
「つまり…とんでもない魔力の正体があると…
よし!帰ろうっ!こんな危ない扉なんて無視無視!」
中に化け物じみた魔物とか居て怪我なんてしたくないしね触らぬ神に祟りなしってね!
「何を言ってるんですかァ?!この扉の先には金銀財宝が溢れてるかもしれないでしょう!!?」
「い、いやまぁそうなんだけどね…てかリリスお宝とか興味無いだろ…」
はぁ…俺が説得しても時間の無駄だろう…リリスも居るし化け物が出たとしても何とかなるか…覚悟を決めよう。
「分かったよっ!開ければ良いんだろ!開ければ!
こうなったらやけだ!鬼が出るか蛇が出るかっ!こんな洞窟にわざわざ足を踏み入れたんだ!俺を驚かせてみろ!
ヨイッショ!!」
”ギギィ…“
俺は扉を力一杯押した。
あれ…ちょっと重い…いや相当重い…!なんだこれめちゃくちゃ踏ん張ってんのに全く動いていない…だと…
リリスも見てんのに恥ずかしいじゃないか……!
扉1つ開けれないのは流石に幻滅されるよな…
「はぁ…はぁ…あ、あの…リリスさん…とっても恥ずかしいこと言うけど………全く開かないんだが…」
「フッ…ヒナタ様は貧弱なのですね!」
なっ!?は…鼻で笑われた…?!恥ずかしさで顔から火が吹きでそうだ。
「冗談は置いといて…この扉…強固な結界が張られているようです。」
「冗談!?なんだ冗談か…というかどうして扉に結界が…?」
「詳細は分かりませんが中に見せたくない物を隠したのでしょう…それに…この術者は相当な手練です。魔王に匹敵する程の…」
「ま…魔王に…?!だったら尚更開けちゃ行けないんじゃ…」
もし、結界を張ったのが魔王本人だったら目をつけられ兼ねない…
「いえ!こんな結界吹き飛ばしてやりますよッ!」
“シュルル”
「ちょっ!ちょっとリリスさん?!な、何を??!」
リリスは右手に魔力を集めていた。その風圧に洞窟は今にも崩れ落ちそうな具合だった。
「リ、リリ──────」
””ドカァンンンン““
「ケホッケホッ…一体何が…」
リリスは扉を魔力の拳でおもいっきり殴っていた。しかし…
「私の力でも…破れない!??」
扉はリリスの力を持ってしてもビクともしなかった。
「リリスの力で破れない?!そんなこと有り得るのか…
この結界…リリスを封印していた結界と同等かそれ以上の強度なのか!?か、帰ろうリリス!!この先は本当に危険だ!!関わらない方が良い!」
「まだです!!私にはこの結界は破れませんでしたが…主様なら…!」
「無理だよ!
リリスが出来ないのに俺なんか───」
「〝我が主に不可能は無いッ!!!〟」
買い被りすぎだよ…でも…そこまで言ってくれたんだ…
期待に応えたい…!
「分かったよ…一回だけだよ…“ハァァ───”」
右手に魔力を集めるイメージ…!
リリスがダメだったんだ…半端な力じゃ通用しない!
やるなら全力…
俺の右手は青い雷を纏っていた。
「行くぞ…全力…!!
༄《焉怒雷》・纏༄!!!」
“ゴォォォンン”
「あ…開いたァァ??!!」
諦め半分で放った打撃で意図も簡単に扉が開いていた。
ど、どうしてだろう…リリスが無理だったのに俺に開けれるなんて…それに…打撃の衝撃で開いたと言うよりも触れた瞬間になんの抵抗もなく開いたように感じたんだよな。
「流石ヒナタ様!我らの道に壁など存在しませんねッ!」
「まぁ…なんで開いたか分からないけど、中に入ってみよう。」
扉を抜けるとそこには今まで以上の魔石や鉱石が広がっていた。
「す、凄…」
辺りは魔力が充満していた。
どうやらこの空間から魔力が発生していたのは間違いでは無かったか…
俺は一歩前に足を踏み出す。その瞬間─────
”キュイイイン“
「な、なんだ!?トラップか…!」
床一面が光に包まれていた。その光の正体は魔法陣だった。すると風圧が俺達を襲った。目を開けるとそこには禍々しい姿をしたゴーレムが立っていた。
如何にもゲームに出てきそうだ…
「ゴ…ゴーレム…?!なんでここに…」
「この部屋の何かを護っているのでしょう。ヒナタ様!子奴は私が相手します!さっきの挽回をさせて下さい!」
リリスの奴、扉を破れなかったこと気にしていたのか…この洞窟がリリスに耐えれるか心配だが仕方がない…
「分かったよ…でも!くれぐれも無茶はしないように!」
「えぇ!期待に応えてみせましょう!
覚悟はいいか…脆き岩の塊よ。」
リリスの戦いを見るのは久しぶりだなぁ〜
自称【最強の竜】VS【部屋の守護神】…激アツだな!
“コゴォォォ!!”
ゴーレム突進していくがリリスは目にも止まらぬ速さで回避した。
「そんな単調な攻撃が我に通用するとでも…?一撃で終わらせてやろう。」
リリスの奴大技を繰り出すつもりなのか?!あ、あの構えは…構えは…デコピン??!
”ズドォォーン“
「え…えええぇ!?まマジかよ…」
リリスの放ったデコピンはゴーレムを粉々に粉砕していた。その姿はもうゴーレムの原形を留めていなかった。
相手が悪すぎた…流石にゴーレムさんに同情するよ…
「フンっ相手になりませんでしたね!さぁヒナ───」
“ドォォンン”
「リリス!!!?」
突如リリスが吹き飛んだのだ。
どうして…何が起きた?!
その答えはすぐに分かった。俺の目の前にはリリスが粉々にしたはずのゴーレムが立っていたのだ。
どうしてゴーレムが!?再生の能力でも持っているのか?
「少々油断しました…」
「リリス無事だったか!」
「この程度、痒みしか感じませんよ。ただ、見くびっていたようです。子奴…ただのゴーレムではありませんね…ゴーレムの上位種…王ゴーレムといったところでしょうか。まさか…こんな力を持つゴーレムが存在しているなんて…珍しい!!」
王ゴーレム…強そうだな…って、おいおい!ゴーレムがこっちに向かって突進してきてるんですけどぉぉ!!?
「ん!ヒナタ様!」
「あっ…ぶな!!」
危機一髪回避することが出来たが、ゴーレムは追い打ちをかけるようにさらに俺に向かってきた。
「おいおい…落ち着けぇ!
࿓《闇縛永鎖》࿓!」
俺の放った鎖はゴーレムをぐるぐる巻きにして動きを封じた。
「なんなんだよ…全く。けどこれで大人しくなっただろ。」
「お見事です主様…!先の挽回をしたかったのですが、これではまたお手を煩わせてしまいましたね…」
「まぁ…気にしないで。それより…このゴーレム、どうやって始末すんの…?」
粉々になっても再生してたし…攻撃は通用しないのかな…
”スゥゥゥゥッ“
なんだ…砂?
突然、砂埃が酷くなっていた。
「砂埃…?ん!?ゴーレムは!!」
咄嗟にゴーレムの方を見るが明らかにさっきよりも鎖で巻かれている中の厚さが無くなっていた。
「まさか…」
「ヒナタ様後ろですッ!!」
俺は後ろを振り返る。そこには右手を大きく振りかぶっているゴーレムが居た。
「マジか…避けきれ──────」
死を予感し、半ば諦めていた俺は身動き出来ずにその運命を受け入れようとしていた。─────が、その運命をぶち壊す者が居た。そう…リリスだ。リリスは俺の危機を察知した瞬間に自分自身が盾になるようにゴーレムの前に立ち塞ぎ護ってくれたのだ。
「リ、リリス…」
リリスとゴーレムの拳はキュリンが吹き飛ぶ程の衝撃を生み重なり合っていた。
俺は驚いていた。何故ならリリスの表情は初めて見るほどに…
「岩玩具の分際で…我が主に危害を加えようとするとは…茶番は終わりだ。」
─────────怒りに満ちていたからだ…




