十九・洞窟探検
洞窟の中には強い魔物達も居るだろうに…魔物じゃ無いなら…亡霊とか…?!ヒェッ…少しこの洞窟に入りたく無くなったなぁ。
「まぁ…入口で話しててもしょうが無いし…入ろうか!
洞窟へ───────」
「あれ…?洞窟に入ってからはや数分…魔物の姿形、気配すらないんですが…?もしかして、リリスに怯えている?」
「それはそうですよヒナタ様!ここには何度も出入りしているのです。私に歯向かえばどうなるかぐらい、低級の魔物でも理解するでしょう…」
気の毒な魔物達だ…そりゃあこんな異次元な魔力を持つ化け物の前にのこのこ顔を出す馬鹿は居ないよな…
溟藜洞窟の中は鮮やかな色を放つ、結晶石や魔石で覆い尽くされていた。俺達は更に洞窟の奥に進んだ。すると、”コツンコツン“と足音のような音が洞窟に響いた。
「な、なに!?この音…!!まさか…幽霊…!??勘弁してよ……」
「んん?この音は……」
リリスは音の方に歩いていく…
ちょっと待ってよリリスさん…幽霊とかほんとに無理なんですよ…
俺は恐る恐るリリスの後に続く…リリスは急に立ち止まった。どうやら音の正体を突き止めたようだった。その音の正体は…
“「キュリン」“
「は…………?」
そこに居たのは冷や汗をかきながら今にも泣き出しそうなほど怯えた表情をした小さなキモカワイイ生物だった。
「え、何このモジャモジャした生物…」
「子奴は低級魔物の怠懐魔。普段は人前に姿を表さないのですがね…珍しい。」
このキュリンの今にも泣き出しそうな顔を見るに…俺達から逃げ遅れたんだろうな…ドンマイ……
「えっと…俺達は君に危害は──」
「キュリンはどんな味がするんでしょう…ジュるり」
“バチンッ”
「辞めなさい…!ほら!リリスが冗談言うからこんなに怯えてるじゃないかーまったく…」
キュリンに同情をした俺はあまり関わらずに洞窟の先へ進んだ。…と俺の気持ちをふみ捻じるかのようにキュリンは隠れながら後へ着いてきていた。
「ねぇリリス…なんで着いてくるんだろ…」
「さぁ…我等が怖いはずなのですがね…」
するとリリスは後ろに振り向く。
「おい下級生物、何故着いてくる…喰われたいのか?」
キュリンは今まで以上に怯えていた。
でも確かにどうして怖いはずの俺達に着いてくるんだろう…
“ズズズッ”
「ん?なんの音───ってえぇぇ!!?モンスター!??」
音の方向を見るとそこには巨大な蛇のような見た目の魔物が居た。
「なんだこれ…映画の中に出てくる奴じゃんん!!」
「ほぉ…私の前に姿を見せるとは…命が惜しく無いようだな。」
たしかに!いくら大きな蛇だからって…相手が悪すぎるよ!なんせ相手は竜なんだからね…
アナコンダもどきはその長い尾でキュリンを掴みあげた。キュリンの泣き叫ぶ声が洞窟中を駆け巡る。
「リ、リリス!これってまずいんじゃ…このままだとキュリンが潰されちゃう!」
「別にあの下級生物がどうなろうと私には関係の無いことです。…が、私に歯向かう愚か者には教えてあげなければいけませんね…ふふっ…”力の差を“」
”ゴゴゴゴォォォォォ“
「お、おいリリス!」
リリスから溢れ出すオーラで洞窟に揺れが起こる。
おいおい、このままだと洞窟が崩れてぺしゃんこになっちゃうよ…リリスさんは加減を知らないからな…
「ストォーっプ!!ストォーっプリリス!!!」
「…主様?」
「落ち着けリリス!蛇どころか俺まで消し炭になる勢いだったよ!??もぉいいから俺に任せて…」
リリスは頬を膨らませて拗ねていた。
さてと…どうしたものか…アナコンダもどき自体は俺の敵ではないと思う…けど奴の尾にはキュリンが捕まっている…
リリスの言う通り、キュリンはただの魔物だ。助ける義理なんか無い…ただあんな無害な魔物を見捨てるなんて俺の良心が痛む。キュリンを助けつつ、アナコンダもどきを倒す方法か… ࿓《絶炎焔》࿓ や༄《焉怒雷》༄だと攻撃範囲が広すぎてキュリンにも当たってしまう。こんな時、なにか武器でも合ったら楽なんだけど…色んな戦術も試してみたいし、今度お手軽な価格な剣でも買っておこう…
“キュリン!キュリン!!”
おっといけない…考えてる場合じゃ無かった。
ここはひとつ、試してみるか。
右手に“魔力の刃”を持っているイメージ…鋭い…刃のイメージ!!!
俺の右手を中心に魔力の圧による風が渦巻いていた。
────── ࿓《神薙》࿓ 獲得シマシタ…
お…!でたでたご都合展開!!有難く使わせてもらいます!キュリンに当たらないように…とアナコンダもどきの頭を狙おう。
「࿓《神薙》࿓!!!」
“シュキンッ”
俺の右手から放たれた赤黒い稲妻を纏った黄金の斬撃は、アナコンダもどきの首を真っ二つに斬り裂いた。
「す、すげぇ…」
この威力…もし誤って人にでも当ててしまったら一生のトラウマもんになるぞ…使い所気を付け──────なんだ…!人の…気配…?違う…!これは⋯
突如、洞窟が白く明るくなり奥から女性らしき姿の白い影が俺に向かって迫って来た。
なんだ…!?身体が動かない…いや、動かないんじゃない…動けないんだ!これは思考の中か!時間が進んでいないだ!!ちょっと待って…!白い影が俺に迫って来てるんですけど!??ぶつかる!!!
””シュイン““
白い影が俺の身体をすり抜けた後、影は消滅し俺は身体の支配を取り戻していた。
なんだ...今の─────
「キュリン!!」
ん…?キュリンが俺に寄り添って来た…キュリンの俺を見る目はキラッキラに輝いている。もしかして、俺に救われたことを感謝してる?俺が無害な人って分かったのかな。
「主様、どうかされたのですか?顔色が優れないみたいですが…」
「リリス…!今、白い人影見えなかった!!?」
「人影…?主様...さてはこの洞窟に霊が出ると怯えているのですね!フッフッフ…」
やっぱりリリスには今の白い影は見えていなかったか…それにしても一体なんなんだ?白い影に身体を通り抜けられても何も感じなかったけど…まさか本当に”幽霊“なんて言わないよな…
でも…あの瞬間…俺の身体をすり抜けるあの瞬間…確かにあの影は、俺の耳元で何かを囁いて微笑んでいるように見えた──────────




