十八・気配
「どうした…ひなた?顔色悪いぞ。」
「……あ、ああ大丈夫…大丈夫。」
紫苑に心配されてしまった。まずいな動揺が隠せない…
あの人は……一体………
その後、俺達は王都で宿泊している宿に戻った。ここの宿では一人一部屋なんて贅沢はすることは出来ず、俺、紫苑、小林の三人は同じ部屋だった。
「ヒナタ〜午後やること無くねー?」
「ん?あ、あぁ…」
そういえば、昨日リリスに“国王との謁見が終わったら一緒に王都を回りましょう”って言われてたんだっけ。というかそのリリスは何処へ…?
「あー俺はちょっと外に用があるから出てくよ。」
「なぬ!?デートか!?デートなのか…!!?」
「違うって…それじゃあ行ってくるよ。」
「相手は…相手は誰だ…!!?
七瀬さんなのか!?七瀬─────」
”ガチャン“
俺はリリスに念話をして待ち合わせ場所を決め、そこへ向かった。どうやら今までストレッチとかいう理由で洞窟で魔物を狩っていたらしい…洞窟の魔物も気の毒だな…
リリスとの待ち合わせ場所は王都の中でも最も賑わっている市場だ。
「お…!主様…!探しましたよ!」
あれ…探していたのは俺の方だと思っていたんだけど…まぁいいか。
「ん…うん…そういえば、リリスに聞きたいことがあったんだ。今日、王宮である男に会って……俺はその男の気迫を前にして動く事が出来なかった…人間の本能が直感したんだと思う…コイツは敵に回しちゃイケナイって…!あれは化け物だ……」
「(ヒナタ様が怯えるほどの人間が…!!?そんな存在が居るのなら…魔王クラス…?)おかしいですね…そんな存在が居たのなら私が感知しない筈がありません…!」
「確かに…俺以外のみんなも何も気付いていなかった…
あと、その男の名はアレックス。アレスと呼ばれているらしい。聞き覚え無い…?」
「アレス…知りませんね…なんせ二百年以上封印されていましたからね!!」
「そ…そっか…」
「(アレス……恐らく奴は魔力やオーラを完全に隠す能力を持っている。魔力を隠すことは容易に出来る。だが我にも感知出来ない程に完璧に隠すことは不可能に近い。只者では無いのは確かだな…今後ヒナタ様の障害になるやもしれん…警戒が必要だな。)」
「まぁいいや…それでリリス。最初に何処へ行くの?」
「今は正午ですよ!…と言ったら行く場所はひとつ…!」
「え……?」
どうやら昼御飯を食べに行くらしい…確かに朝から何も食べてないな…アレスの衝撃でそれどころじゃ無かった…
「す…凄い…!!これは…雷小魚の天ぷら!こっちは匂猪のチャーシュー!!ヒナタ様!ここには見たことも無い食べ物が沢山ありますよ…!!!」
「まぁまぁ…ほら、ヨダレを拭いて…」
この露天商には見たことも無い食材やらが売られていた。俺はリリスに付き合わされ、食べ歩きをしたのだった。店の件数は十を超えていただろうか…俺の胃袋はもう限界だ…
「う…ゲプッ…もうお腹いっぱいなんだけど…」
「ヒナタ様!そんなんじゃあ立派な人間になれませんよ!」
コイツの胃袋はどうなっているんだ…?
それから数十分、リリスの買い食いに付き合わされた俺は何故だか分からないが…クタクタに疲れていた。
「ふぅー腹も膨れましたし…そろそろ行きましょう!」
「え…?行くって…どこに?」
すると、リリスは俺を抱えるように持ち上げた。
「え…ちょっちょっと待ってくださいよォ!!リリスさぁぁぁんんんんん!!!そ、空…空飛んでるからァ??!!!」
なんてことだろうか…リリスはそのまま空を飛び始めたのだった。
リリスの奴…どこに連れて行くつもりなんだ?!俺が高所恐怖症ってこと知ってんだろ……??!
”ドゴォォンン“
「着きましたよ!」
「え…もう?」
驚くのも無理は無い…何故なら王都のすぐ側に着地したからだ!なんだ…ここ?
「ここは私がストレッチに使っている洞窟の一つです。」
「ここが例の…(可哀想な魔物達の洞窟…)
そ、それでどうして此処に?」
「それが…どうやらこの洞窟には変わった気配を感じるのです。先程調べようとしたところ…ヒナタ様との約束の時間になってしまったので!!」
ふふ…なるほどな…つまりただのリリスのしがない探求心に付き合えって事だな?!
「まぁまぁ!そんな嫌そうな顔しないでくださいよぉ。ほらッ!食後の運動だと思って!ねっ!」
「う…俺はただ…付き合わされただけなのに…グスンッ。まぁいいや…行くよ…行けばいいんでしょ!!」
「さっすがはヒナタ様!一度ヒナタ様と洞窟の中で温もりたかったんですよね…!」
「んんなんか卑猥な言い方やめて〜?
それで、変わった気配って一体…?」
「はい…仄かに…人というか、何かの強大な力の気配を感じます。」
洞窟の中には強い魔物達も居るだろうに…魔物じゃ無いなら…亡霊とか…?!ヒェッ…少しこの洞窟に入りたく無くなったなぁ。
「まぁ…入口で話しててもしょうが無いし…入ろうか!
洞窟へ───────」




