表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

チャイニーズマフィアの報復

「チェン大人、このまま黙っておくのか。

 わしには、そんな事は出来ない。

 ここまで馬鹿にされては、治まりがつかないではないか。

 それに、このままではあの二人が余りにも可哀想でならない」

 ワンの、怒りが爆発していた。

「何をするつもりだ」

 チェンが訊ねると、

「あの男を雇った張本人は解っている。

 今度は、此方から攻めるのだ」

 ワンがそうお答えた。 

 すると、

「どうせやるなら、わしも加えてくれないか」

 チェンがそう言った。

 今度ばかりは、二人とも怒りを抑えきれないでいた。

 イタリアンマフィアもアサシンも、等々チャイニーズマフィアを怒らせてしまった。

 二人は、それぞれ幹部を呼び寄せた。

「今から中国の本部に連絡しなさい。

 わし等の力を、ドン・ジニーニョに思い知らせるのだ」

 どちらか一つの組織だけでも、凄い勢力を持っているチャイニーズマフィアだ。

 しかし、今回は二大組織が一緒という事になれば、その力は数倍にもなる。

 簡単に言えば、国と戦争を起こす様なものなのだ。

「はい、解りました」

 双方の幹部達はそう返事をすると、各々の本部に連絡を取りに向った。


 そんな事など知る由も無いジニーニョ邸では、二人の暗殺が失敗した事を知らされていた。

「お前が直々に行っても失敗するとはな。

 まあ、まだ時間はある。

 今度こそは、確実に仕留めるんだぞ」

 今までの殺し屋達は、部下に指示して雇っていた奴等ばかりだった。

 しかし今回の件は、ジニーニョ自らが依頼をしていたのだ。

 依頼を受けた殺し屋組織は、『アサシン』のボスであるウィリアムスだったのだ。

「ああ、解っている。

 昨日の件は、こちらも油断していた。

 次は必ず殺してやる。

 二人とも、あの世に送ってやるから心配するな」

 受話器の向こうから、そう返事が返ってきた。

 アメリカFBIが調べていた『アサシン』とは、ウィリアムスをボスに持つ殺し屋軍団だった。

 それは、世界中から集めてきた殺し屋達で結成されていた。

 中国の少林寺出身の達人や、元海兵隊に居た者達や、元SERSに居た傭兵達。

 それに、音に聞こえた殺し屋達。

 この組織も言わば、生きた兵器の塊の様なものだった。

「それで、今度は何時やればいいんだ。

 俺達はいつでも準備は出来ている」

 ウィリアムスは、今回の失敗で少し焦っていた。

 ジニーニョは、それを察知してウィリアムスを静めるかの様に、

「そう慌てるな。

 明日は俺のパーティーだ。

 世界中から来賓が来る。

 そんな中では、暗殺は出来ないからな。

 それが終ってからでも遅くはないだろう。

 それまでは、綿密な計画を立てて待っておけばいいだろう」

 その言葉に、

「そうだな。

 それでは、お前からの連絡を待つ事にしよう。

 その時、チャイニーズマフィアの最後の時になるのは確実だ」

 そう言うと電話を切ったウィリアムスだった。

「これで、あいつ等も終りだ。

 それまでは、精々このイタリアで残りの人生を楽しめばいいさ」

 ジニーニョは、勝ち誇ったかの様にそう言った。

 

 その頃大島警部は、ビジネスホテルの自分の部屋に一人で考え事をしていた。

 そこにキャサリンが入って来たが、その事にも気付かずにいた。

 その状況に、掛ける言葉が見つからなかったキャサリンは、そのまま黙って後ろから抱き締めた。

 そして、

「田辺警部補はよく頑張ってくれたわ。

 確かに、彼を失った事は辛い事だけど。

 昨日、あなたは言ったわ。

 必ず『アサシン』を捕まえてやると…… 。

 だったら、明日からの計画を立てないといけない。

 このままじっとしていては、田辺警部補に申し訳がないわ」

 ゆっくりと耳元に語りかけた。

 キャサリンは、昨日の出来事は知らないままだったのだ。

 大島警部も、その事には何も触れる事は無かったからだ。

 そして、

「すまないが…… もう暫く、一人にさせてくれないか」

 力の無い小さな声で、そう呟く大島警部だった。

「そ…… そうね。

 私は、大島警部を信じているから。

 必ず、田辺警部補の仇を取ると信じているから…… 」

 泣きながらそう言ったキャサリンは、部屋を出て行った。

 それからも、一人になった大島警部は考えていた。

〔一体なんだったんだ。

 どうしてワンとチェンは、田辺とフェイを追うなと言ったんだ。

 それに、二人は何処へ行ったと言うんだ〕

 その時、ワンが話していたリュウという男の事を思い出した。

〔フェイは、あのリュウと言う人物が育てた孤児だと言っていたな。

 それじゃ、その時に言っていたもう一人の少年。

 それが…… 田辺…… 。

 いや、そんな筈はない。

 田辺は警部補だ…… あり得ない。

 だけど…… だったら何故フェイは、田辺を連れて行ったんだ。

 とにかく、日本の警視庁に連絡を取って、田辺警部補の過去を調べてみよう。

 そうすれば、何か答えが出る筈だ〕

 直ぐに警視庁に電話をして、田辺警部補の経歴を調べるよう指示した大島警部だった。

 そして部屋を出ると、そこには寂しそうな表情のキャサリンが立っていた。

「キャサリン、心配かけてすまなかったな。

 君が言った通り、今は落ち込んでいる暇などないんだ。

 早く『アサシン』を捕まえないとな。

 あいつに叱られるよな。

 …… キャサリン、有難う」

 そう言って、優しく抱きしめる大島警部だった。

 その胸の中で、 キャサリンは涙ぐんだ瞳で微笑むと、小さく頷いた。

 そして、

「そうと決まれば捜査開始だ。

 先ずは、あの二人の所に行こう。

 何か動きがあるかもしれないからな」

 そう言った大島警部は、キャサリンを連れてビジネスホテルを出て行った。

 しかし、チャイニーズマフィアが宿泊していたホテルには、既に二人の姿は無かった。

 それどころか、大勢の部下達の姿も消えていたのだ。

 この状況に、大島警部は不吉な予感を感じた。

「キャサリン、このホテルには誰も居ない様だ。

 あの二人は、等々動き出した。

 あの二大組織が動き出したという事は、最悪の事態が起こりうるという事になる。

 俺は二人の足取りを調べる。

 キャサリンは、イタリア警察に行って状況を話し、応援を頼んで来てくれ」

 その指示に、

「了解したわ、大島警部。

 ただし、くれぐれも自分の判断だけで行動しないでね。

 必ず、私に連絡してね。

 同志なんだから」

 キャサリンは、今の大島警部が冷静でない事に気付いていた。

「必ず連絡するよ。

 心配してくれて有難う」

 大島警部は、そう言った。

 その言葉に、安心してホテルを後にしたキャサリンだった。

 大島警部は、二人の足取りを追った。

 いくらチャイニーズマフィアとはいえ、あれだけの人数が動き出せば何処に居るか解る筈だ。

 そう思っていた。

 キャサリンもイタリア警察と共に、二人の行方を虱潰しに捜した。

 しかし二人はおろか、その部下達の手掛かりすら見つけ出す事が出来なかった。

 これが、世界中の闇組織の頂点に君臨するチャイニーズマフィアなのだと言う事を、思い知らされたのだった。

 

 その頃ジニーニョは、明日のパーティーの為に会場のホテルに来ていた。

 そこへ一人の幹部が走って来た。

「ボス、大変な事になりました」

「何をそんなに慌てているんだ。

 わしは忙しいんだ。

 それに、お前は明日のパーティーに来られる客を出迎える準備をしなければいけないだろう」

 ジニーニョは、呆れて言った。

「それが、来賓の方々が…… 」

 言葉を止める幹部だった。

「どうした、早く言いなさい。

 さっきからも言っているだろう。

 わしは忙しいのだよ」

 幹部に対して苛立つジニーニョだった。

 すると、

「は、はい…… 明日来られる筈の御客様が、全員キャンセルされました」

 と幹部が言った。

 その言葉を聞いたジニーニョは、耳を疑った。

 「どういう事だ。

 何を言っているのかが、さっぱり解らない。

 もう一度、解り易い様に説明しなさい」

 そう問い質すと、

「はい…… そ、それが、明日招待を受けている御客様から、パーティーに来るのをキャンセルすると言う連絡が相次いで入って来ています」

 震えながら幹部がそう言った。

「何故だ。

 一体、何が起こったんだ。

 パーティーは明日だぞ。

 招待状を送った者の中には、既にこの国に入国している者も居るだろう。

 何が…… 」

 その時、もう一人の幹部が血相をかえて走って来た。

「今度はなんだ、どうした?」

「ボス、大変です」

 そして、ジニーニョは幹部の言葉に驚愕した。


 ジニーニョ邸では、幹部達が明日の準備の為に忙しく動いていた。

 その時だった。

 突然、大きな爆発が起こったのだ。

「どうしたんだ。

 何が起こったというんだ」

「解りません。

 何者かによって、突然ミサイルが打ち込まれました」

 尚も、ミサイルの攻撃は続いた。

「何処から攻撃している。

 お前等、ボスにこの事を知らせるんだ」

「そ…… それが、どの電話も使えなくなっております。

 携帯電話も繋がりません」

 その時は、もう遅かった。

 全ての連絡網は、断ち切られていたのだ。

 別の方向からは、機関銃の攻撃が起こっていた。

 そして更に、屋敷内には黒装束の軍団が侵入していた。

 そこに居た幹部や手下達は、次々に殺されていった。

「誰だ。

 一体、誰がこんな事を?」

 最後に残った幹部がそう言うと、額に鋭い刃物が突き刺さった。

 やがて、屋敷の上空に数台の武装ヘリが現れた。

 そして一斉攻撃が始まった。

 その攻撃が終わった時には、ジニーニョの屋敷は跡形も無くなっていた。

 出来事は、それだけでは済まなかった。

 街に散らばっているジニーニョの幹部や、ジニーニョと協定を結ぶファミリーにも、その攻撃が及んでいたのだ。

 ある者は、自宅で撃たれて死んだ。

 ある者は、パーティーに参列する為の準備の買い物の最中に、街で襲われて殺された。

 ある者は、車で移動中に交通事故に見せかけて殺された。

 たった数時間で、ジニーニョと関係のある全ての者達が殺されてしまったのだ。

その状況を聞いたジニーニョは、恐怖に慄いた。

「ここには誰も入れるな。

 それと、ウィリアムスに連絡するんだ。

 いいか、みんなでわしを守れ」

 体を震わせて、部屋から出なくなったジニーニョだった。

 だが、

「はい、畏まりました」

 そう言った幹部が、ジニーニョの前に立ちはだかった。

 そうしてもう一人の幹部が、ジニーニョの後ろから口を塞いで身体を抑えつけた。

「うっ、ううっ」

 必死に抵抗するジニーニョだったが、全く動く事が出来なかった。

 そして、こめかみに銃口が突き付けられた。

 その直後、サイレンサーでかき消された銃声だけが響いた。

 ホテルに居た残りの幹部達も、全員殺されていた。

 これで、イタリアンマフィア『ジニーニョ一家』は、一夜にして滅んだ。

 その出来事は、直ぐに大島警部とキャサリンの耳に入った。

「どういう事だ。

 こんな事があるのか。

 あの巨大組織が、一夜にして無くなるなんて…… 」

 そう言いながら、この事態の首謀者が解っていた二人だった。

「この街からチャイニーズマフィアの姿が消えた時に、気が付かなきゃいけなかったのよ。

 こんな事が出来るのは、あの人たち以外にないでしょう」

 キャサリンは、震えながら呟いた。

「これがチャイニーズマフィアの…… いや、あの二人の力なのか」

 大島警部も、震えが止まらなかった。

 

 そしてもう一人、

「ううっ、あいつ等め。

 こんな事をして、唯で済むと思うなよ。

 必ず、叩き潰してやる」

 ウィリアムスは、怒り狂っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ