Part4 ごんぶとエルフvs盗賊
初めての戦闘…(´・ω・`)
1/17 改稿しました。
朝目が覚めるとやたらと丁寧に布団が掛けられていた……
いや、むしろこれは縛られているのだろうか?
寝相が悪すぎて縛られた可能性も考えつつ、周囲を見渡すと、
ドン・ダバサと目が合った。
「よう! 大将、目が覚めたか?」
「……おはようございます…俺、そんなに寝相が悪かったですかね?」
「んっ? こいつぁ傑作だ! おう、おめぇら、エルフが目を覚ましたぞ!
おもしれぇからちょっとこっち来てみろ!」
「あら? 起きたのハーゼル、おはよ~」
簀巻き状態のハーゼルの上に、盗賊の女が座ると、
頬を指で優しくなでながら微笑みかける。
「あっ、あの、そろそろ出してほしいんですけど……」
「それはだめよ~ だって貴方、これから出荷されちゃうんですもの~」
そこまで言われて初めてハーゼルは自分の状況を把握できた。
現代日本ならば、無償で寝床を提供してくれる優しい人も居ただろう……
暖かい夕食を食べさせてくれる人も絶対に居る……
しかし、ここは"異世界"なのだから、当然悪事を働く人間だっている。
迂闊な自分を呪いながら、現状をどうしようかと考え込んでいると、
周囲にいた盗賊の仲間が、笑いながら集まってきた。
「姉御、こいつらエルフって、こんな間抜けな奴らだったんですかぃ?」
「こんな簡単に捕まえられるんなら、魔石かっぱらうんじゃなくて、
もっとたくさんエルフを売ったほうが、儲かるんじゃねぇ?」
「そうね~ エルフが全部こんなポンコツ頭だったら、
今頃私たちは、都に豪邸構えてるわよ~」
「「「はははっ、ちげぇねぇや!」」」
(やばいやばいやばいっ! これは売られちゃうパターンだっ、どうしよう……
どうにかして逃げないと)
そう思って両腕に力を入れたところ、ブチン!パァン!と、
音を上げて、ミスリルのロープが千切れ飛んだ……
「へっ? 今こいつ何しやがった?」
「おい! ミスリルのロープが切れてるぞっ!」
「お頭ぁ! エルフの奴がロープ千切りやがった!」
「馬鹿野郎! さっさと取り押さえろ!」
すぐに屈強な男が折り重なるようにして押さえつけてくるが、
さすがに女性に乗られるのはうれしい出来事でも、
おっさんに押しつぶされるのは好きではない。
ハーゼルは布団から飛び起きると、男を払いのけた!
ブボンッ!
「へっ? あっ……あああっ! おっ、俺の腕がっあっアッギャァァァアア!」
軽く手をはらっただけで、ハーゼルを取り押さえていた男の腕が吹き飛とんだ。
「この糞エルフ! 何をしやがった!」
「おっ、俺は何もしてないっ! ただ払いのけただけだっ!」
「うぉぉ! ケインのかたきだっ! 死ねぇぇえええっ!」
ドン・ダバサの隣にいた男が剣を抜き、ハーゼルに襲い掛かる。
慌てたハーゼルが右手を前に突き出すと、男の背中から腕がはえた、
ドクン! ドクン!
ハーゼルの手にはまだ鼓動を続ける心臓が握られていた……
その手を横に払うと、まだ痙攣している男の体が抜け落ち、動かなくなった。
その光景を見つめるドン・ダバサが怒りに震えながらハーゼルに怒鳴る!
「てっ、てんめぇぇぇ! 何てことしてくれやがった!」
騒ぎを聞きつけた盗賊の仲間が、次々とハーゼルの周りを囲んでいく。
「……始末しろっ!」
まってました! と、言わんばかりに一斉にハーゼルに飛びかかり、
手に持った短剣や斧でハーゼルを滅多打ちにする。
パキン! パキャン! ベキン! バリッ!
ハーゼルを打ち付けた武器は、ことごとく粉砕され、
柄だけを握りしめた盗賊たちが棒立ちになる。
そこにハーゼルの拳が炸裂すると、男たちの上半身がまとめて吹き飛んだ!
ボバァン!
グチュッ!
飛び散った血を全身にかぶり、真っ赤に染まったエルフが立っていた……
「おめぇ! やりやがったなぁ! ジョセフとダインとリッケルが死んだっ!」
「あっ、あんた達が俺を売り飛ばそうとするからだろっ!」
「うるせぇ! んなこたぁどうでもいいんだよ…… と、言いたいとこだが、
おめぇに暴れられたら俺たちじゃぁ皆殺しだろうよ……
悪いが、俺たちのこたぁ見逃してもらって、こっから出てってくんねぇか?」
どうやら盗賊は俺より圧倒的に弱いらしい。
売り飛ばそうとしていたのは間違いないが、大切な仲間を殺されたのだから、
これ以上ハーゼルがこの場にいるのは良くないだろう。
「分かった、もう行くよ…… できればエルフの国に行きたい、
どっちに進んだらいい?」
「……あ~ エルフの国な、どっちだったかなぁ、
街道に出たら右だよ、東に進みなっ!」
(馬鹿めっ! 東に行けば魔王国だぜ! 入り口で潰されちまえっ!)
「そうか…… ついでに剣を一本くれないか? そうすれば見逃してやる」
「おい! ジョセフが使ってた装備を持ってきてやれ!」
「へっ、へいっ…」
(ジョセフ…… さっき俺が殺した奴か)
「お頭っ、もってきやした!」
「おうっ、ってこれ、ミスリルの剣だろ! 銅の剣で良いんだよ!」
(あっ、あの剣ミスリルの剣なんだ、綺麗だし高そうだもんなぁ……
銅の剣でもなんでも、とりあえずの装備があればいいか)
しばらく待っていると、盗賊の手下が大きな剣を引きずりながら持ってきた。
「お頭ぁ~ 銅の剣ってこれしか無いんですが、これで良いんですかぃ?」
「この際仕方ねぇだろっ! どうせ街道の魔族から奪った剣だ、くれてやれ!」
(たしかこれは魔族の商隊を護衛してたやつの武器だよな、
重くて使い物になんねぇし、くれてやるにはちょうどいいじゃねぇか!
俺様超さえてるっ!)
「ほらっ、よっと! 受け取れや!」
ゴトン!
ドン・ダバサから放られた剣を拾い上げてみると、
想像していたよりもずっと軽かく、意匠をこらしたデザインであり、
どこかの家紋のようなものが見える。
「受け取ったならさっさと消えてくれよ!」
「そうだっ、出ていけっ!」
「か~え~れ~っ、か~え~れっ!」
まじまじと剣を見つめていたら、いきなりの帰れコールになってしまった。
そのまま洞窟をでて、元来た街道まで少し早歩きで戻ってきた。
街道に出たら右、つまりは日が出てきた方向と反対側に進めば良いらしい。
「うぁ~俺、人を殺しちゃったよ~…これって罪に問われるのかなぁ?」
そうつぶやくものの、天の声が聞こえてくるわけでもなく、
森の木々の葉の音や、鳥の鳴き声しか聞こえてこなかった…
アイテムボックスから水を取り出すと一気に飲み干した。
「とりあえず東に進もう…」
ハーゼルは盗賊に教えてもらった通りに、東を目指して歩きだした…
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そのころ、盗賊の洞窟では全員が床にへたり込んでいた・・・
「やっべぇ! やっべぇよあいつ! ハエでも潰すみたいにして殺しやがった」
「あれってホントにエルフなの~?」
「お頭ぁ、あいつが戻ってこねぇうちに逃げましょうよぉ!」
「くそぅ! 撤収だっ、本国にいったん戻るぞっ!
国のお偉いさんにも報告が必要だ! 場合によっちゃぁ
"勇者様"に出てきてもらわにゃぁならんかもな!」
「お頭、勇者って俺らみたいな盗賊の為も仕事するんですかぃ?」
「「「えっ?お前しらなかったの?」」」
「この街道沿いの魔石はエルフの国に売られてるのよ~?
魔族の商隊を定期的に襲って、そこから魔石を奪わないと、
エルフの国が力を蓄え続けちゃうじゃない? だからこそ、
国営で盗賊団を雇って、魔石を盗み出してるってわけよ~」
「まっ、大っぴらにゃぁ出来ねぇけど、俺ら公務員ってことだなぁ」
「「「公務員!?」」」
「おめぇら、知らなかったのか? まぁいい、
昼前には本国に向けて出発するぞ!」
「「「はいっ!お頭っ!」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ところ変わって魔王国
「フットル将軍閣下!偵察に出ていたガーゴイルからの連絡で、
西の街道にて将軍閣下の剣を握りしめたエルフを発見致しました!」
「なんだとっ!?人族の盗賊団を見つけたのかっ?」
「それが、どうやら剣を持っているのはエルフ?のような?者です……」
「なぜ疑問形なのか説明しろ! それと戦闘用ガーゴイルを向かわせろっ!」
「はっ! エルフと思わしき者なのですが"真っ赤な髪と肌"をしておりまして、
特徴的なエルフの耳はあるものの、体格はオークのように大柄なのです。
我々も判断に迷うところであります!」
「赤髪のエルフかっ、聞いたことがないな……人族の偽装の可能性もあるか、
よし、ガーゴイルをひとあてさせたら先遣隊を向かわせろっ!
可能であればゴーレムを用いた先制攻撃も許可する。
あの盗賊団の仲間かもしれぬ、抵抗する場合は遠慮なく叩き潰せ!」
「はっ! 承知いたしました、将軍閣下!」
次回、ごんぶとエルフvs魔王軍