Part3 ごんぶとエルフは盗賊に捕らわれる
1/17 改稿しました(´・ω・`)
森の街道を歩き続けること数時間、途中で見つけた木に、
食べられる果実を見つけた。
「これは、リンゴか? 狩りの能力は食べられるって言ってるけど、
試しに収穫してみようかな?」
彼の実家のリンゴの木によく似ているが、背丈は遥かに高く、
手を伸ばしても取れそうにはなかった。
ふと思いついて、道端から適当な大きさの小石を拾ってくると、
大きく振りかぶって木の実に投げつけた。
ボンッ!
バキィィィン!
またしても轟音と共に閃光が走り、木の枝ごと吹き飛んでしまった。
「あちゃ~ 思いっきり投げすぎたかな?」
試しに思いっきり加減して投げてみるものの、
結果はどれも似たようなものだった。
どうやら新しい体にまだ感覚が追い付いていない様だ、
仕方ない、木を揺すってみるか…
軽く木に手を当てて揺すろうと力を入れたとたん、
ボキッ! メリメリッ…… ズシィィィーーン!
「――嘘だろ? 木が倒れちゃったよ……」
直径60㎝くらいの幹が、裂けるように折れてしまっていた。
(これ、見られたらちょっとまずくないか?)
そう思った彼は、木の実を適当にもぎ取ってアイテムボックスに入れると、
周囲を確認しながら折れた木を持ち上げて地面に深々と突き刺した。
「エルフが森を破壊とか、ヤバすぎるよね……
森の精霊様、ごめんなさい…… リンゴ?の木さん、ごめんなさい」
彼はそそくさとその場を後にした。
しばらく街道を歩くものの、一向に人の気配はなく、空が茜色に染まる。
「しょうがない、今日は野宿かなぁ、でもどうしよう、
こんなところで寝ても大丈夫かな?」
現代を生きてきた人間にとって、森の中での野宿はハードルが高く、
ましてやモンスターやら盗賊が居る世界では、
少なくない危険が伴う行為には違いない。
この世界の気候も知らないし、夜になったら冷えるかもしれない。
地面に寝そべって変な虫とかが湧いてきたら確実にパニックになる。
途方に暮れながら歩いているうちに、どんどん周囲は暗くなってきて、
気温も下がってきた。
ハーゼルが夕食替わりのカロ〇ーメイトを頬張って水を飲んでいると、
森の奥に薄明かりのようなものをが見えた。
「おっし! 第一村人発見かっ!?」
彼は現代日本というぬるま湯で育った……
この時はまだ、異世界人と日本人の"警戒度"に、
大きな開きがあることを知らなかった。
森の木の間を縫って進むと、川沿いの岩場に出た。
岩場の先には洞穴があり、数人がその前で焚火をしている。
「あの~、すいません、こんばんわ……」
小さな声で話しかけると、すでに向こうはこちらの存在に気が付いたのか、
鋭い剣を両手に構えて、こちらの様子をうかがっている。
背丈の高く強そうな男が、もう一人の小柄な男につぶやいた。
「おい、お頭呼んで来い! エルフ様のお出ましだぜ……」
「うっす!」
小柄な男が洞窟の奥に駆け込むと、もう一人が話しかけてくる。
「エルフ様がなぜ、一人でこんなところをうろついてやがるんでしょうか?」
「あのっ、俺、人里を目指して旅をしているんです……
村から出たばかりで道がわからなくて、そのっ、明かりが見えたもので、
こちらに来たのですが……」
若干の嘘を交えながらも一生懸命に説明した。
できるならば、この場である程度の情報収集をしたかったし、
人恋しさも多少はあったのだ。
(うっは! このエルフ、何にも知らねぇはぐれエルフってとこか?
大方どっかの村から食い扶持減らすために追い出されたのかもしれねぇな)
「ちょっとそこで待っててくださいやせんかね?
うちらの"商隊"のお頭に話してきまさぁ」
「お願いします! 俺ここで待ってますんで……」
男はニコニコと優しそうな顔でほほ笑むと、
松明をもって洞窟の中に入っていった。
しばらくすると、洞窟の奥から恰幅が良い男が出てきた。
50歳くらいで、立派な髭を蓄えている。
「私がこの商隊を率いております"ドン・ダバサ"と申します。
エルフ様が夜道でお困りだとお伺いして、居てもたっても居られず、
慌てて飛び出して参りました」
「あっ、はい、すいません、夜分に突然お邪魔してしまい申し訳ございません」
「この森の街道を歩いて人里を探していたのですが、暗くなってきちゃって……
心細いというかなんというか……」
彼は日本人の癖で、どうしても腰が低くなってしまうのだが、
それがドン・ダバサの目には"困り果てたはぐれエルフ"だと映ってしまう。
「それはさぞかしお困りの事でしょう、ささっ、どうぞ中へお入りください、
暖かい毛布と食事を用意しております。
エルフ様のお口に合うかどうかわかりませんが、
少しばかりの酒も用意してございます」
「ありがとうございます、あの、これは街道沿いの木の実ですが……」
ハーゼルがアイテムボックスから、木の実を取り出して見せると、
ドン・ダバサの顔つきが鋭く変わった。
「おい、今どこからその木の実をだしやがり…ましたでしょうか?」
「あっ、アイテムボックスの中にしまってたんです、
急に出してしまって申し訳ございません」
(いきなり物を取り出すのって、誰だって驚くよな)
「あっ、いえいえ、エルフ様は何もお気になさらずに……」
(こいつ、アイテムボックスのスキルもってやがったのか!
完全に手ぶらだったから油断したぜ!
とりあえずこのままいい人のフリを続けるか)
「外は冷えますので、どうぞ中へお入りください……」
「では、お言葉に甘えてお邪魔させていただきます!」
優しそうなドン・ダバサの言葉につられて、洞窟の奥へと進むと、
すでに連絡がいっていたのか、ハーゼルの為に暖かな食事が用意されていた。
「ところでエルフ様、お名前をなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「……俺はハーゼルと言います」
「ではハーゼル様とお呼び致しますね、おい! おめぇら!
ハーゼル様に"アレ"をお出ししろっ!」
ドン・ダバサが声をかけると、奥から数人の女性が出てきて、
ハーゼルにグラスを持たせてお酌を始めた。
「いいんですか? 俺、お金とか持ってませんけど?
あとハーゼル様もやめてください、同じ人間じゃないですか!」
「「「えっ? 人間!?」」」
(しまった! 俺はエルフに転生してたんだ!)
「ははっ! 何をおっしゃいますか、そのプラチナブロンドの髪、
切れ長の耳と―――筋肉? 間違いなくエルフですよ!」
(あれ?筋肉のところだけ言いよどんだよね?)
「失礼ながら、最初はオーガとのハーフかと思っておりました」
「ですよね? 俺もこの体はちょっとおかしいなって思ってましたよ」
「いえいえ、その美しい髪と特徴的な耳は間違いなくエルフの証ですよ!」
「そう、ですよね、あれ?お酒が回ったのかな?
おかしなことを言ってしまって申し訳ないです。忘れてください……」
お酌をしてくれた女性が体をペタペタとさわってくる。
「すっごいごんぶとですね! エルフでこんなにたくましい体見たの初めて~」、
やたらとスキンシップをしてくるので、恥ずかしさから、
酒を口に含んでごまかしてしまう。
「ハーゼルはエルフの国から来たのかしら?」
「えっ、エルフの国があるんですか?」
「あら? 貴方、村のエルフなのね? だから認識票も何も持ってないのね?」
「はっ、はい、そうなんですよ、認識票?」
「エルフの国ではすべての国民に認識番号が振り分けられているのよ?
国を出るときは、必ず居場所を示す魔法がかかった、認識票を渡されるの」
(へぇ~エルフの国って進んでるなぁ~)
「じゃあ、村のエルフってどうなっているんですか?」
「ん~ 村のエルフはねぇ~ 認識番号も何もないし、
基礎的な戦闘訓練とか、エルフの国の加護を受けてはいないわね」
「村のエルフって大変なんですね、国の加護とか、認識票が無いと、
困ることってあるんですか?」
「……そうねぇ~」
女性が後ろに目をやると、ドン・ダバサが首を縦に振った……
「もし、認識票が無い村のエルフだと、盗賊に捕まっちゃったりして、
人間の奴隷商に売られちゃうかもね~ こんな風に、ねっ!」
突然女性がハーゼルを押し倒した……
目を白黒させながら女性を見ると、ハーゼルの上に馬乗りになっていた。
「あはははっ! ビックリしたっ!? 嘘よ~」
「もう、驚かさないでくださいよ! あれ? 力が……入らない……」
(飲みすぎてしまったのだろうか?フラフラしてきた)
「ハーゼル様は旅でお疲れでしょうから、そろそろお休みになったほうが…」
ドン・ダバサが困った顔をしているのがみえる。
「すいません、飲みすぎてしまったみたいです。
もう少しお話を聞きたかったのですが…もうダメみたいです……」
「おい、おめぇら、ハーゼル様を"寝床"にお連れしろっ!
フラフラだから転んでケガさせんなよっ?」
「「へ~ぃっ」」
「では、ハーゼル様おやすみなさいませ!」
「うん、ありがとう、おやすみ……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おいっ、エルフは寝たか?」
「へい! 魔封じの毛布に突っ込んでおきやした!」
「よし、起きないうちにミスリルのロープで縛っておけよ?」
「お頭! さすがにミスリルのロープじゃなくても……
抜け出せねぇんじゃないですかい?
魔法が使えないエルフなんて目じゃねぇっすよ!」
「馬鹿かてめぇ? あのエルフ見ただろ? あのエルフのガタイを!
暴れられたら押さえつけるのが面倒だから、しっかりふんじばっとけ!」
「「「へぃっ!」」」
「それにしても俺はついてるぜ! ここで魔王国の魔石を狙って構えてりゃぁ、
はぐれエルフが一匹でのこのこやってきやがった! 笑いが止まらねぇぜ、
アイテムボックススキルも持っているとなりゃ、売りさばきゃぁ大儲けだぜ!
カモがネギを背負ってきやがった! んはははははっ!」
「可哀そうなエルフね~ 人間の奴隷か、魔力結晶を抜かれて廃棄か、
もしかしたらあの顔立ちだもの、好事家の手に渡るかもしれないわね、
いずれにせよ、ろくな死に方はできそうにないわね……」
「なんだおめぇ? 情でも湧いたか?」
「う~ん、昔飼育してた牛を市場に卸す時くらいには可哀そうよ?」
「んはははっ! おめぇも相当ひでぇ奴だなぁ、まあ、出荷先が決まるまでは、
おめぇが面倒みてやりゃぁいい」
「嫌よ~だって私、牛の面倒見るのが面倒だったから盗賊になったんですもの、
それに、非力で無能なエルフなんかより、貴方のほうがずっと魅力的よ~」
ズッキュゥーーーン!
この夜、ドン・ダバサの手下達は、洞窟の奥から聞こえてくる嬌声に、
眠れない夜を過ごしたという……
Part4も直します(´・ω・`)




