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ごんぶとエルフ転生~人間に搾取された異世界で魔王になった~  作者: 白咲犬矢
ごんぶとエルフ魔王誕生編
10/14

Part10 ごんぶとエルフの魔王力測定

まさか…エリーゼ様が(´・ω・`) みんなごめんね

 戴冠式の翌朝、エリーゼに連れられて王都のギルド本部に足を運んでいた。

 ハーゼルが正式に新魔王となり、デプルが国王となったのだが、

新魔王のハーゼルが一度も魔法を使ったことがないことがわかり、

魔王に適合するかどうかの、いわば"実力テスト"が行われることになったのだ。

 王城をでて大通りを北に進むと、中央に大きな円柱状の建物が見えてくる。


「ハーゼル様、あれがこの国の国営ギルド"宵の明星"ですわっ!」


「おぉ……なんか想像していたよりずっと大きくて立派ですね、

この国に来てからは、王城以外見たことが無かったので驚きましたよ」


「ふふっ、そうでしたわね、ちなみにこのギルド本部は、昔の魔王城ですのよ?」

「ぇっ? そうなんですか? 確かに丈夫そうですし、やたらと大きいな~とは

思ってましたけど……」


 王都タルンドルの北大通りの中央にそびえたつ国営ギルド"宵の明星"は、

人族から逃れてきた魔族が最初にこの地に築き上げた拠点であり、

タルンドル王国にとっては歴史的重要建造物の一つらしい。

 外壁は魔力を練り上げて作った石のブロックを積み上げて作らており、

直径50m、高さ30mの3階建ての建造物だ。

 1階がギルド受付や、冒険者の訓練施設と魔力測定室等があり、

裏の入り口には、素材や魔物等の買取カウンターが設置してある。

 2階にはギルド職員の執務室や、冒険者用の宿泊施設があり、

3階は、かつての魔王城の名残で謁見の間等がそのまま残されているそうだ。

 北の大通りは、ギルド本部を囲うように、ぐるりとその周囲をまわりこんでいて建物を中心に、東西南北に大通りが続いていた。


 ギルドの大きな扉をくぐると、受付カウンターが設置してあり、

見目麗しい双子と思われる女性が座っていた。


「ハーゼル様、ご紹介いたしますわね、こちらのお二人がギルドの看板受付嬢、

マリアとエルシアですわ!」


「初めまして、新魔王ハーゼル様、姉のマリアです。以後お見知りおきください」

「こんにちわっ! 魔王様っ! 妹のエルシアだよっ! 仲良くしてねっ!」


「わ~ぉ…… 見た目は一緒だけど雰囲気が全然ちがうよね、

お世話になります、新魔王のハーゼルです。新参者ですがよろしく頼む」


「エルシアっ! 新魔王様にしつれいよ? ハーゼル様ごめんなさい、

妹と私を区別するためにわざと口調を変える様にしていたら、いつの間にか

戻らなくなってしまって……」


「あぁ、いいですよ、俺も堅苦しいの苦手だし、いまいち魔王ってやつも

まだわかってないんですよね」


「あはっ! 魔王様、やっさし~ぃ! エリーゼ様が居なかったら、

私がツバつけちゃうんだけどな~ ざんねんっ!」


「ちょっ、ちょっとエルシア!? やめてよもぉ~ 

私とハーゼル様はそんな関係じゃないわよ?……でもチャンスがあればっ…

いえ、何でもないわっ、それじゃあエルシア、

ハーゼル様の魔力測定をお願いするわね」


「はいは~い! それじゃ魔王様っ! 一緒に行きましょ!」


「はっ、はい…… 受付嬢が魔力測定もするんですか?」


「えっ? 当たり前でしょう? 冒険者に仕事を渡すのは私達よっ?

虚偽の報告をされたら、適正レベルの依頼を渡せないじゃない!

安心してっ、私達が受付になってから、冒険者の死亡報告は多分ゼロよっ!」


 明るくて活発な美少女のエルシアに手を引かれて、

ハーゼルは魔力測定室に入った。この測定室では、魔力の属性や、

保有量を調べることが可能で、その結果を元にしてライセンスカードを

発行するという仕組みらしい。

 5m四方の部屋の中央には、透明な魔力柱と椅子が設置してあり、

四方の壁と床、天井には、魔力量を測定するための計測用魔石が取り付けてある。 

「魔王様は魔法を使ったことがないんだよね?」


「うん、一度も使ったことはないよ、そもそも魔力があるかどうかもわからない」

「え~っとね、人型の生き物はほぼすべて体の中に魔力結晶があって、

そこから魔力を取り出してるんだよっ!」


「へぇ~俺の中にもあるのかな?」


「ん~ たぶんないってことはありえないかな~? 

大きさとか密度は人それぞれだとおもうけどねっ、とりあえず計測してみるよ!

そこの柱に両手を置いてね、それと、この耳栓をつけておいてっ。

計測中は計測魔石が共鳴してうるさいと思うけど"絶対に手を離さない"でね?

計測が終わったら、吸い上げられた魔力がそのまま戻ってくるから、

心配しなくても大丈夫! 疲れたらその椅子に座っててもいいよ!」


「あの……もし手を放しちゃったらどうなるの?」


「ん~ 魔力量にもよるけど、オーバーフローした魔力があふれて、

もしかしたら"ボンッ"ってなるかもねっ!」


「まじか~俺"絶対に手を離さないから"安心してくれ」


「大丈夫だよっ! どうしてもだめな時は、屋上の魔力放出装置を作動させるからなにも心配ないよ!」


 エルシアがドアを閉めると、静穏な空間にハーゼルだけが取り残された。

ドアの小窓に目をやると、エリーゼがこちらを見て手を振っていたが、

『手を離さないでね』と言われていたため、微笑みかえすだけにとどめた。

 しばらくすると、手を置いている透明な魔力柱がひかりだし、

茶色く濁り始めた。


「あぁ、これって属性って奴かな? なんかめっちゃ茶色いけど、

これって土属性か何かかな?」


 そう思っていると、今度は緑、赤、青と明滅を繰り返し、

徐々に間隔が早くなっていった。

 小窓の外にいるエリーゼが心配そうにこちらを覗いているので、

ハーゼルも少し不安になっていた。


「なんか明滅しすぎて吐きそうなんだけど……ポ〇モン現象かな?」


 明滅が終わったかとおもったら、今度は魔力柱が真っ黒に染まりだし、

気持ち悪さを感じていると次は金色に光輝いた。 




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 測定室の隣には、同程度の大きさの観測室があり、

数人の分析担当者とエルシアが詰めていた。


「ちょっと! 魔王様の魔力属性すごいんですけどっ!

全属性を扱えるなんて、流石エルフだよ!」


「すごいわー、俺らも全属性適正なんて初めてみたさ!

エリーゼ様も4属性を扱える貴族だけど、魔王様だって全属性は使えないぞ?」


「私ちょっと見てくるねっ! 貴方たちはこのまま魔力測定をお願いね」


「「「う~ぃ」」」


 エルシアが扉を開けて廊下に出ると、エリーゼが心配そうな顔をして

測定室のハーゼルを覗き見ていた。


「エリーゼ様っ! 魔力属性の測定が終わったよ! まさかの全属性だった!」


「……やはり全属性だったのね……ここから見ていてそうだと思ったわ、

私の4属性適正だって相当なものだと自負しているけれど、

全属性適正をみせられちゃうと、自身をなくしそうよ」


「でも魔王様になってくれたんでしょ? 素直に喜んだらいいのにっ!」


「……そうね、こんなに格好良くて素敵で優しくて逞しくて……

それにとても良い匂いがするエルフですもの、全属性適正くらい当然よね?」


(うへ~ エリーゼ様、こりゃ相当ヤバいわ~ 

きっと洗濯物とかクンクンしちゃってるよね?)


「あっ、あはは~ そろそろ魔力測定始まりますよっ! 

わたし、測定時に出る魔力光をみるのが好きなんですよ~

エリーゼ様も一緒に見ましょうよ!」


「そっ、そうね、一緒にカッコいいごんぶとハーゼル様を鑑賞しましょう!」


 外でそんなやり取りがされているのが測定室の小窓から見えているのだが、

防音効果が付与されている部屋の内側には声が聞こえてこない。


「なんか外でエリーゼさんとエルシアさんが楽しそうに話をしてるけど、

測定ってもう終わったのかな? まぁ、終わったら声をかけてくれるよね」


 ハーゼルが魔力柱に両手を載せたまましばらく待っていると、

腹の底から何かが昇ってくるような感覚があり、両腕を通して魔力柱に

引っ張られていくように感じ始めた。


「うぉっ! これが魔力かな? 俺の中にも魔力結晶あったっぽいね」


 最初はゆっくりとした流れを感じていたのだが、徐々に引き出される量が

増えていったのか、次第に『あれ?これちょっとヤバくね?』と感じ始めた。

 魔力柱が光り始めたかと思うと、光が床と壁を伝い、最後は天井が光り始めた。

 リィィィィイイイイイイイイン!


 ィィイイイイ! ガガッ! ガガガガッ!


「あれっ? 地震かな? なんか揺れ始めたんだけど……エリーゼさーん!」


 ハーゼルが計測室の小窓の外にいるエリーゼに呼び掛けるものの、

強力な魔力共鳴音と、部屋の防音性に阻まれて聞こえることはなかった。

 そのころ、観測室では観測員たちが大慌てで装置の停止を試みていた……


「魔力回路切断いそげっ! 物理的に破壊してもかまわんっ!」


「……だっ、ダメです! 流れ込む魔力が強すぎて破壊できませんっ!」


「ならば回路をバイパスして施設の魔石に流し込めっ!」


「もうやってます!」


「くそっ、なんて魔力量だっ! こうなったら多少危険だが、

魔王様を魔力柱から引き離すんだっ! 万が一に備えて観測員以外は退避だ!」


 一方、測定室のドアの前にいたエリーゼとエルシアも、この異常事態に気付き、ハーゼルに"魔力柱から手をはなす"ように叫び続けていたのだが、

 防音扉の外にまで響き渡る共鳴音により、彼女たちの声は届かなかった。


「ハーゼル様っ! て・を・は・な・し・て!」


「魔王様、こうだよ、こう! 手をパッと上げるんだよ!」


 二人は一生懸命身振り手振りや、口パクでハーゼルに訴えかけるが、

いくら頑張ってもハーゼルにその意味が伝わらなかった。


「さっきから振動がひどくなってるけど、これって手を離したらダメなんだよね?……て・を・は・な・す・な? 分かったよエリーゼさん! 

あと、エルシアさんのダンスやめてくれないかな、笑って手が離れそうだよ、

俺を落ち着かせるためにそこまでしなくてもいいのに、ははっ」


「エリーゼ様、ダメです! 魔王様が笑ってる! 

もう既に限界を超えて、意識が飛びかけてるのかも!」


「……仕方ないわっ、屋上の魔力放出装置を使うわっ!」


「エリーゼ様! そんなことしたら魔王様が魔力枯渇しちゃうよ!」


「ハーゼル様ならきっと大丈夫よっ! それより貴方たちは早く避難なさい!

ギルド本部と周辺の住民の避難もたのんだわよっ!」


「はっ、はいっ! エリーゼ様もお気をつけてっ!」


 エルシアが職員を引き連れて避難を始めたのを確認し、

エリーゼは屋上へと駆け上がっていった。

 屋上にある魔力放出装置とは、このギルド本部が魔王城だったころの

殲滅兵器として使われていた。

 現在ハーゼルが居る計測室は、もともと魔力の強い魔族が人柱となり、

膨大な魔力を吸い上げて、殲滅兵器のバッテリーにための部屋だった。


「ハァッ、ハァッ… まさかこれを使う日が来るなんて思わなかったわよ、

ちゃんと動いてよ、ねっ!」


 エリーゼが起動用レバーを操作すると、台座が動き出し、

巨大な砲身が鎌首をもたげて再起動を始めた。

 それを見たエリーゼが、起動手順に従って発射準備を行う。


「マテリアルバレット展開! お願い、開いてっ!」


 15mはあろうかという長大な砲身に巨大な円環が浮かび上がり、

複雑な魔法式が刻まれていく。

 この円環一つに付き、エリーゼ20人分の魔力に相当するのだが、

送られてくる魔力が膨大なため、現在3つ目の円環が形成されている途中だった。

「円環が3つもあるわね、最低3発は打ち出さないと、魔力がなくならないわ、

……ターゲットスコープオープン……

照準は……そうね……"ドラゴンバレー"でいいかしら?」


 エリーゼが照準するのはドラゴンバレーと呼ばれるドラゴンの住処のひとつで、時折魔王国を襲うドラゴンはここからやってくる。

 魔力銃の名手であるエリーゼは、舌なめずりをしながら、

ターゲットスコープに目標を捉えた。


「マテリアルチャンバーにチャージ開始、発射5秒前……3、2、1、発射!」


 キラッ!


 ヒュィィィイイイイイイン!


 ドゴォオオオオオオオオオオオオオーーーーッ!


「きゃぁぁああっ!」 


 ドンッ! ゴロゴロゴロッ!


 エリーゼが引き金を引いた瞬間、強力な閃光と共に膨大な魔力が放出された。

僅か5秒間の放射にも関わらず、射線上にあった森の木々は吹き飛び、

ドラゴンバレーの手前にある2000m級の氷山は、

着弾と共に強烈な光を放ちながら溶け出し、跡形もなく消滅してしまった。


「うっ、うぅっ…… いったい何が起こったのよっ!?」


 エリーゼが体を起こすと、3つあった円環が、残り一つになっていた。


「っ! これはっ"オーバーチャージ"ねっ!?」

(きっとハーゼル様の魔力の質が高かったんだわっ)


 通常の魔力であるならば、チャンバー内には円環1つ分しか魔力が入らないが、ハーゼルの魔力の質が極めて高かったため、円環2つ分の魔力がチャージされた。 過去にもオーバーチャージの事例は報告されていたものの、

ここまで破壊力が高くなったのは、ハーゼルの魔力が超高濃度だったからだ。


「大変っ! 砲身に亀裂が発生しているわっ! もう一発撃てるかしらっ?」


 操作マニュアルに従うのなら、この場で砲身を交換する必要があるのだが、

エリーゼはハーゼルを救うために、迷わず発射を決意した。


「マテリアルチャンバー、チャージ!」


 最初の射撃で吹き飛ばされたエリーゼは、すでに満身創痍であり、

もし砲身が爆発しようものなら、自分の身を守ることは難しい。

 彼女を突き動かしているのはハーゼルへの強い思いであり、

愛ゆえに彼女は引き金を引き絞った……

 その刹那、砲身の亀裂からまばゆい光が漏れ出し、大爆発を起こした。


 ズドォォォオオオン! ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……


 エリーゼは台座から吹き飛ばされ、宙に投げ出された。

重力に引かれてその体はゆっくりと加速していく……


(あぁっ、もう駄目ねっ、もう一度だけあの人に会いたい……)


 爆発の衝撃でボロボロになりながらも、彼女は最後の力を振り絞って叫ぶ!


「ハーゼル様ぁぁああああああっ!」















「エリィゼーーーーッ! うぉらぁぁあああああああっ!」


 ガシッ!




 ズゥゥン! パラパラパラッ…… ガァンッ!


 そこに現れたのは、新魔王ハーゼルだった。

 エリーゼが魔力を放出したおかげで部屋から抜け出すことができたハーゼルは、エリーゼの叫び声を聞き、壁をぶち破って飛びだした。

 彼はすぐに飛び上がり、エリーゼを空中で抱き留めると、見事に着地を決める。 破裂した砲身の残骸が落ちてきたのを片手で受け止めると、

周囲から拍手が起こる。


「エリーゼッ! 大丈夫かっ!? ボロボロじゃないか……いったい何がっ!?

それに顔中血まみれだっ! だれかっ、誰か来てくれっ!」


「ハァッ、ハァッ……ハーゼル様っ、エリーゼはもう……ダメでございます……

最後に……お姿を見ることができてっ……うれしゅうございましたっ……」


「おいっ! エリーゼッ! しっかりするんだ!」


「……ハーゼル、様っ……最後に、お願いがございます……」


「あぁっ、エリーゼ! いやだっ、死ぬなっ! いかないでくれっ!」


「……私にっ… きっ、キスを……して、くだ…… さ…い‥」 ガクリ…


「エリィゼェェエエエエエッ!!! うぉぉおおおおおん エリーゼ~ッ」


 ハーゼルは動かなくなったエリーゼを優しく抱きしめると、

そっと口づけをした……

 救護班が来るまで、何度も、何度も……


「エリーゼ……君が俺に好意を寄せてくれていることには気づいてたよ……

侍女達から君がすごく頑張ってダイエットをしている事だって聞いてたよ……

今までよりおしゃれをしてたことだって、気が付いていたのに、

俺は褒めてあげられなかった……

ごめんよ、エリーゼ…… 頼むっ、目を覚ましてくれっ!」


「魔王様……もうそれくらいにしてあげてください、

エリーゼ様はきっと喜んでいらっしゃいますよ……」


「マリアさん……ぅっ、おっ、おれっ、エリーゼのぎもぢにぎづいでだのにっ…

なにもじであげられながっだんだ……ぐずっ」


「……魔王様、そろそろエリーゼさんを放してあげてください、

そんなボロボロの状態だとエリーゼ様もおかわいそうですから……」


 マリアに諭されてハーゼルが落ち着きを取り戻すと、

黒い服を着た4人の男が現れ、エリーゼに白い布をかぶせた。

 大きめの白い袋を広げると、4人でエリーゼを持ち上げようとする。


「エリーゼに触れるなっ!」


 突如ハーゼルが飛び出しエリーゼに覆いかぶさるようにして守る。


「……あなた達、袋を持ってあげてください。

最後の仕事は魔王様にお願いしましょう…… よろしいですね、魔王様?」


 ハーゼルは力なくうなずくと、そっとエリーゼを抱き上げ、

十字架が描かれた白い袋でエリーゼを包んだ。

 4人の黒服の男が袋を担架に乗せると、足早に立ち去って行った。








 呆然自失となったハーゼルに、エルシアが事のあらましを説明し、

エリーゼがハーゼルの為に魔力開放を行った話をした。

 そのあたりからハーゼルが泣き出してしまい、

どんな話をしたのかも彼は覚えていないほど憔悴しきってしまっていた。

 思い出されるのはエリーゼの事ばかり……

 マリアと医師の勧めで、ハーゼルは魔王城の特別室に連れていかれ、

しばらくここにとどまる事を勧められた。

 カーテンで仕切られたそこは、治療室のような場所であり、

自分を落ち着かせるために用意されたのだとハーゼルは理解した。


 夕食は胃に優しそうな病院食に、エポック料理長が作ったと思われる

カロ〇ーメイトが用意されていて、そのやさしさにハーゼルは再び涙する。

 ほとんど喉を通らなかったが、カロ〇ーメイトだけは食べることができた。


「失礼します、国王様とフットル将軍がお見えになりました、

お通ししてもよろしいでしょうか?」


「……どうぞ」


 ハーゼルが力なくそうつぶやくと、ハーゼルの目の前のカーテンが静かに開き、神妙な面持ちの二人が姿を現した。


「ハーゼル殿、お加減はいかがかな?」


 国王となったデプルが椅子に腰かけ、ハーゼルの肩を優しくさする。

 ごつごつした手で、今までたくさんの魔物を屠ってきた働き者の手だ……

 隣の椅子にフットル将軍も腰をおろし、ハーゼルに問いかける。


「魔王様、いや、ハーゼル君、私は何か勘違いをしていたようだ……」


 それを聞いたハーゼルの体がビクン!と跳ね上がる。


「娘は君に恋をしていた……それはわかるね?」


「……はい、俺も…気づいてました……」


「私はね、君がエリーゼの事をあまり好きではないと思っていたのだよ、

エリーゼは私の妻ににて少々体格が大きいからね…… ましてエルフとなんて、

エルフが嫌がるかとおもっていたんだ」


「そっ、そんなことはありません! 俺はっ、俺はエリーゼを……」


 そこまでいうとハーゼルは黙り込んでしまう。

 もっと優しくしていれば…もっと大切にしていたら…

そんな後悔ばかりが彼を襲い、感情が渦を巻く。


「フットルよ、そこまでだ、それ以上ハーゼル殿を追い詰めるな……

ハーゼル殿、そなたはエリーゼを抱きしめ、キスをしていたな?

マリアから話を聞いたぞ…… そなたの愛は本物じゃ……」


「ハーゼル君、今まで娘に言い寄る男は沢山いたが、

王家に名を連ねるものとして、見合う相手には巡り合えなかった……

君に出会えてからの娘はずいぶんと幸せそうに見えた、

彼女は君との結婚を真剣に考えていたよ、それが娘の一番の望みだよ……」


 気が付くと部屋にはエリーゼ隊の隊員や、親衛隊の姿もあり、

システィーナ姫も来ていた。

 みんな真剣な顔でハーゼルを見ている。

 今にも襲い掛かりそうな表情を見て、自分がどういう状況なのか、

あらためて理解したハーゼルは、意を決して叫ぶ……


「おっ、俺は……エリーゼを愛していますっ! 今もっ! これからもっ!

エリーゼがどんな姿でもいい! 俺と結婚させてください! お父さんっ!」
























「だ、そうだ……よかったな、エリーゼ……」







 フットル将軍が隣のベッドのカーテンを引くと、

そこには包帯を巻かれ、点滴を受けるエリーゼの姿があった。

 口元を手で押さえながら、顔を真っ赤にして涙していた。


「ハーゼル様……エリーゼはうれしゅうございますっ! 

まさか、そんなに私の事を思ってくださっていたなんて、夢見たいですわ!

……結婚、お受けいたしますわっ!」


「「「おめでとうございますっ!」」」


「エリーゼおめでとう!」


「エリーゼ様! 親衛隊一同心よりお喜び申し上げます!」


「おめでとう! エリーゼ様っ!」


 エリーゼが無事だった事に驚くハーゼルだったが、彼女の無事な姿をみたとたんベッドを飛び出し、優しくエリーゼに抱き着いた。


「エリーゼーーーッ!! 生きていたのかっ!? よがっだぁぁぁあああーーー」

 人目をはばからず、魔王ハーゼルが泣き出し、エリーゼにキスをする。


「うわぁ……」


「ちょっと、ハーゼル様っ、ここは病院ですよっ! もぅっ♪」


「ハーゼル殿、エリーゼはまだ治療中ですので、ほどほどにしてください」


「さぁ、みんな、帰った帰った! 解散よ!」


「今『うわぁ』っていった奴は誰じゃ? 打ち首にするぞっ?」




 マリアが解散を指示し、国王デプルが打ち首を宣言すると、

みんなは蜘蛛の子を散らすように退散していった。

 残ったマリアの説明によると、黒い服の男は"救急隊員"であり、

白い布は衣服がボロボロになったエリーゼの体を隠すためのものらしい。

 白い袋は治療用の術式が施された救命道具であり、

すべてハーゼルの勘違いだった。

 事故があったことはすぐに王城へ伝わり、エリーゼの容態と、

ハーゼルの勘違いを知った宰相が、それを利用したのだ。


「それにしてもエリーゼはあの時血まみれだったのに、大丈夫なのか?」


「あっ、あれはっ…… 実は、私の鼻血なんですっ……」


「ぇっ? はなぢ? まじで? でもあの時『もうダメ』っていってなかった?」

「そっ、それはそのっ……私のピンチに駆けつけてくれた素敵なエルフに、

お姫様抱っこされたんですもの! あっ、思い出したら"ブパッ"鼻血がっ……」


「魔王様! エリーゼ様はまだ治療の途中なんです! 

そろそろ集中治療室に戻らなければいけません!」


「あっ、そうでした、ごめんね、エリーゼはわざわざ俺の為にここに?」


「そうよっ、マリアが教えてくれたから治療室から運んでもらったのよ?」


「そっか、ありがとう、エリーゼ……」


「ふふっ、よろしくてよっ、だ・ん・な・さ・まっ、うふふっ」


「あ~はいはい、行きますよエリーゼ様、それでは魔王様、失礼します」




 翌日王都タルンドルの王城に、王家が婚姻した時の旗が掲げられた。

 ピンク色の旗の中央には、エリーゼ個人を示す薔薇の紋章が入っており、

町中はエリーゼの相手の噂話でもちきりだった。

 吟遊詩人が歌う『涙にくれる魔王エルフが抱きしめてキスをした』

というフレーズは、町中の婦女子の間で人気を博し、

世の中の男性の間では『泣きながらプロポーズしてキスをする』という

謎の習慣がはやったという。

エリーゼ様をヒロインに持ってくるとは思ってなかったんだ(´・ω・`)

でも、書いているうちに幸せになってほしくて……

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