Episode-10 ティップオフっ!!!
『Episode-10 ティップオフっ!!』お待たせ致しました!
高校が始まってから、暇が無さすぎて困ってます………春休みだった頃恋しいです………
では、本編をどうぞ!
追記、執筆再開を決定致しました!!
妖怪等の人外が沢山存在する、この幻想郷にも、当然人間は存在している。
数年前まで妖怪達から『主食』と認識されていた彼らは、自分が何時食べられてもおかしくない、というとてつもない恐怖の中、毎日怯えながら過ごしていた。
しかし、妖怪の賢者、八雲紫の策により五年前に流行りだした『バスケットボール』の存在。その存在の大きさは、彼女だけではなく人間達にも大きく影響していった。
妖怪が関係する死傷事件も大幅に減り、人里は年々確実に発展していき、今までに無い賑わいを見せていた。
そんな人里の一角。
中心部の一番目立つ位置に建てられた、観客スタンド付きの大規模なストリートコートに、異様な数の人々が集まっていた。
スタンドは満員になり、立ち見の者も押し合いへし合いする程、続々と出てきている。
『………何故こうなってしまったんだろう………』
頭の中でこの言葉を何度も繰り返す少年、桜雷秀が、 自軍のベンチにてバスケットシューズ、通称『バッシュ』の紐を結んでいた。
彼が着ているのは、白を主体とした生地の横に青のラインが入ったユニフォーム。これは、秀達が入学していた高校、星陵高校バスケ部のユニフォームである。
着慣れたユニフォームの心地よさを感じながら、コートに溢れ返る人達について考えていた。
ここまでの多さは『外来人』という名前が関係したのか、それとも相手方が『人里最強』と呼ばれているからなのか。あらゆる原因を考えてみるが、ここまでの人だかりに繋がる策は考え付かない。
どちらにせよ、完全にアウェイの中で戦わなければならないのだ。
そう話を転換させた秀は、早々に頭の中を切り替えると、この状況がパフォーマンスにどの程度影響するのか、等を脳内で割り出し始めた。
その途端、彼の横から興奮した様な、落ち着きのない声が響いた。
「やっべ、マジテンション上がるわぁ!とうとう幻想郷での初試合が始まるな!」
座っている秀の前で、そわそわと歩き回る鈴木和成。興奮し過ぎてじっとしていられないのか、歩きながらも器用にボールを弄んでいる。
「うるさいな、少しは静かに出来ないのか?」
しかめっ面の秀の背中を、和成は笑いながらバシバシと叩く。
「なんだよ秀~、これから待ちに待った試合なんだぞ!もっとテンション上げろ!」
ハハハッと謎の高笑いをあげた和成は、秀を叩いていた手を止め、自身のハンドリングスキルの確認をし始める。
その姿を呆れ顔で見詰め、秀は重い溜め息を吐いた。
「………ったく、思いっ切り叩きやがって………」
継続して襲う背中の痛みを感じながら、恨めしげに睨み付ける秀。その隣に、一人の少年が座り込んだ。
「まあまあ、いつものことじゃないか。それに、秀だってああいうの嫌いって訳じゃないでしょ?」
おっとりとした口調で秀に話し掛ける一之瀬光は、いつもと変わらない笑顔を彼に向けた。
「………まぁ、本当に嫌いだったらチームなんて組まないからな………」
照れ隠しなのか、秀はそっぽを向きながら答える。その姿を見て、光はさらに顔を綻ばせた。
「ほんっと、素直じゃないなぁ。………まぁ、それは置いとくとして………秀、相手の主将と副主将が来たよ」
秀が横を見ると光の言葉通り、チーム星陵のベンチに相手チーム『人里精鋭』の選手二人が来ていた。
人里精鋭は、チームメンバー四人の内の三人が、200㎝を越えていて、里の者達から『幻想郷一の大型チーム』と称されているらしい。
特に、秀達の方に来た黒髪の一人目。主将の『新垣大輔』は、211㎝の超巨体を持つ、超パワー型のC。人里では名前を知らない者がいない程、有名な選手である。
因みに、もう片方は、人里精鋭の副主将ながら最低身長、PGの『須賀崎龍』だ。192㎝の高身長を持つ彼でさえも、人里精鋭内では最低と付いてしまうのだ。
そんな二人が秀達の前に立ちはだかった。両者放つ、重苦しい威圧感が周囲を包む。
「………星陵の主将、桜雷秀とは誰だ?」
まさに『漢』といった様な深い重低音で、人里精鋭主将、新垣大輔が尋ねる。秀はその風格や声に嫉妬しつつも、ゆっくりと立ち上がった。
「桜雷秀、それは俺のことです。今日は宜しく」
秀が挨拶をするために差し伸ばした手を、大輔は素直に握り返した。
「ああ、宜しく頼む。………先に言っておくが、俺達は一切手加減しない。どんな試合内容になろうとも、最後までやり通させてもらうぞ」
感情が読めない無表情で淡々と言い放った大輔は、自軍のベンチにゆっくりと戻っていった。
そんな秀と大輔のやり取りを見ていた和成が、不機嫌そうに眉をしかめた。
「なんだ今の、『どんな結果になっても知らないぞ』って言いたいのかよ?」
眉間に皺を寄せながら、大輔の背中を睨み付ける和成。そんな彼の様子を見た龍は、申し訳なさそうに目を伏せた。
「………すまねぇな。あいつ、あの手のことに凄く鈍感でな。相手の感じ方を考えないで、バンバン言っちまう馬鹿なんだ………気に障ったなら、謝るよ」
年上の龍の謝罪に、光は恐縮と言ったように返答する。
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。大輔さんの様なタイプは初めて、っていう訳じゃないですし」
龍は光の言葉に、少なからず感嘆の念を抱いた。
今まで大輔の性格を見た者は、何処か納得していない様な態度を見せていた。が、この三人は違う、しっかりと相手の『中身』を知ろうと、接してくれている。
こいつらは、そこら辺の奴等とは明らかに違う。龍は人知れず、秀達の他とは異なる『異変』を感じ取っていた。
「………ありがとな、そう言って貰えると助かるわ」
口の端をふっと持ち上げ、光に負けないくらいの眩しい笑顔を見せる。
しかし、すぐに真面目な表情に切り替わった龍は、「俺からも、一つ言うことがある」と言い、秀達を順々に見詰めていった。
「あんな奴でも、バスケに対する想いは本物なんだ。アイツがいった通り、相手が誰だろうが、どんな状況だろうが、俺達は全力で戦うだけ。お前達も手を抜くなんてことはしないでくれよ?」
「………はい、当然です。試合終了のブザーがなるまで、全力でやらさせてもらいます」
秀の言葉に、光と和成も大きく頷いて肯定する。
その肯定に安心したのか、「宜しくな」とだけ言い残し、自軍のベンチに戻っていった。
「なんか、あの人が主将って感じだよな。上手く言えないけど、雰囲気が何となく秀に似てるっつーか………」
しげしげと龍を観察する和成の頭を、秀は軽く叩いた。
「今はそんなことよりもアップだろうが、さっさと行くぞ」
ボールをつきながら、自軍のウォーミングアップスペースに移動する秀。そこにはいつもの試合前と同じ、司令塔の頼れる姿があった。
「………了解、やろうか主将」
「今日もいつものパス、頼んだぜ?主将さんよぉ」
独特過ぎる性格と才能を持つ天才二人の言葉に、確然たる頼鷹は不適な笑みで言い放った。
「当然だ、俺がお前達を導いてやる」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アップも終了し、センターサークルに両チームが整列する。
すると、スピーカーを通じて明るい元気な声がコート中に響き渡った。
「さぁ、両チームが整列致しました!試合を開始する前に、自己紹介をさせて下さい!」
選手一同が実況スペースを見ると、黒髪ボブの頭に、赤い山伏風の帽子を乗せた少女が、落ち着かない様子でマイクを持っていた。
「………コホン、えー、この試合の実況は、バスケしても良し、実況しても良し、新聞を書く腕前も良し。妖怪の山のオールラウンドな秀才天狗、私、射命丸文が務めさせて頂きます!」
いつの間に実況者が………と戸惑う七人とは裏腹に、観客達は大きな盛り上がりを見せる。コートの雰囲気は既に最高潮を告げていた、
その雰囲気に、射命丸の声にも否応なしに熱がこもる。
「双方とも人間だけで構築された、言わば純粋な人類チーム。この試合は人類の希望になる者同士の対決と言っても、過言ではありません!」
実況席から身を乗り出しながらの熱い実況に、隣に座る白い獣耳と尻尾を持つ少女が、あたふたと慌てながら射命丸を諫めていた。
どうやら彼女は、試合を管理する係員、テーブルオフィシャルズの一人らしく、手元には点数等の情報を記録するスコアシートが置かれている。
幾分か落ち着いた射命丸からマイクを受け取った少女は、ぺこりと一礼をしてから話し始めた。
「この試合のテーブルオフィシャルズの一人、スコア担当の犬走椛です。これからルールの確認をさせて頂きます」
白髪ショートの頭に、射命丸と同じ山伏風の帽子を頭に乗せているその少女は、獣耳少女が丁度良いスピードと声量で、流れるように説明する。
「今回の試合は新人大会や幻想祭と同じ、フルコート3on3制とします。1Q10分を4Q分行い、クォーター間のインターバルは3分。2Qと3Q間のハーフタイムは15分とさせて頂きます」
選手と観客は沸き上がるアドレナリンを抑え、その声に耳を傾けた。特に新チーム達、彼らはルールへの知識が浅いため、聞く態度も人一倍であった。
「尚、星陵は一人、人里精鋭は二人が5Fを犯し退場してしまった場合、例え試合の途中であったとしても、その時点で『敗北』の扱いになってしまいます。どうかお気をつけ下さい」
大まかな説明を終えた犬走は、「私からは以上です、両チームの健闘をお祈りします」とにっこりと微笑み、自身の席に座った。
説明中隣でそわそわとしていた射命丸は、待ってましたとばかりに犬走からマイクをひったくり、興奮気味に声をあげる。
「さぁ、大変長らくお待たせ致しました!
200m越えが三人、圧倒的な攻撃力と防御力を持つ人里精鋭を、あの八雲紫が認めた外来人の天才達はどう攻略するのか。どちらもチーム結成一年足らず、スーパールーキーのぶつかり合いが今、始まりますっ!!」
説明を聞くために静まり返っていた会場は、再び熱気と歓声の渦包まれた。
そのアツさに圧倒される七人の前に、茶髪のツインテールの頭に紫色の天狗帽子をかぶった少女が現れる。
「今回の主審、皆のアイドルの姫海棠はたてです。これからジャンプボールを始めるので、ジャンパーはセンターサークルにお願いしまーす」
明るい姫海棠の言葉に、星陵は光、人里精鋭は大輔がサークルに移動する。約20cm程の身長差がある二人が並ぶと、どうしても大輔の大きさが目立ってしまっていた。
「………なるほど、君は以外と良い体格を持っているな。日頃の努力が伺える」
何処か余裕さを滲ませた様なその言葉に、光は笑顔を崩さず答えた。
「ありがとうございます、あっちで毎日鍛えた甲斐がありましたよ。………そうだ、観客の皆さんも開始を待ち望んでいる筈なので………そろそろ始めましょうか」
「ああ、そうだな。最善を尽くそう、どちらが勝っても納得できる試合にするためにな」
お互いに挨拶を終え、腰を深く落としジャンプに備えるその間に、姫海棠がボールを持って入る。
その時、テンションが恐ろしいほどに高まってしまった射命丸は、『椅子の上に乗る』という暴挙に出ながら、声を張り上げ始めた。
「ボールが示す勝利の軌道、それに乗るのは一体どちらのチームなのかっ!?では、はたてさん、お願いしますっ!!」
姫海棠がボールを投げる瞬間、射命丸と観客が一心となり、試合の開始を宣言した。
「………ティップオフっ!!!」
いかがでしたでしょうか、ようやくバスケ小説っぽくなってきましたね。バスケ要素を待っていて下さっていた方々、お待たせして申し訳ありませんでした。
とうとう、当作品『東方バスケ物語』の『Episode」が、10を突破致しました!思えば、とても長い道のりでした。
5ヶ月前から投稿し続けて、やっと10話。このペースじゃ簡潔はまだまだ遠そうですね………まだまだこれから、頑張ります!
次回予告コーナー!!
チーム星陵とチーム人里精鋭の戦いの幕が切って落とされた!
200cmが三人所属している人里精鋭を、秀達星陵はどう立ち向かっていくのか、次回は第1Qからのスタートです!!
次回も宜しくお願い致します!
ーーーーーー
更新再開決定!
詳しくは活動報告をご覧下さい!