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More than meets the eye -強い馬がわかる俺の馬主生活-  作者: oldenhaldt
瞳の輝き

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5/37

クダンロード②

 陽菜ちゃんとのランチから1週間余り。


 天皇賞(秋)当日を迎えた。


 快晴の東京競馬場で、俺はパドックを周回する馬たちを眺めていた。


 クダンロードは、馬体の良し悪しがろくにわからない俺が見てもピカピカだった。


 もちろん、瞳の輝きも変わらない。


 文句なしに強い。


 問題は――。


「いるんだよなあ」


「何がです?」


 隣の彩夏さんが訊ねてくる。


「ロードと同じくらい目が輝いてる馬。3頭いる」


 さすがGⅠに出てくる馬たちだ。どの馬の瞳にも強い輝きがあるが、その3頭はクダンロードと同じように一段抜けて見えた。


「そんなに?」


「さすがGⅠってことかな」


 騎乗命令がかかった。


 クダンロードに騎乗する中野竜也騎手の帽子はピンク。このコースでは不利とされる大外枠だ。


「せめて枠くらい味方してくれればなあ」


 俺の愚痴を知るはずもなく、クダンロードは本馬場へ向かっていった。


◇◇◇


 馬主席へ戻ると、ほどなく大歓声の中で天皇賞(秋)のスタートが切られた。


「よし!」


 クダンロードのスタートは五分。悪くない。


 だが、中野騎手は大外から前へ押していかなかった。


 本来なら先行したい馬なのに、無理に位置を取りにいかず、内へ寄せながら馬群の後ろへ入れていく。


「動かないのか?それとも動けないのか?」


 それでも位置を上げる気配はない。


 向こう正面でも折り合いに専念し、3コーナーを過ぎても後方のまま。


 4コーナーを回っても、まだ内でじっとしている。


「まだか?」


 直線に入った。


 中野騎手がようやくクダンロードを追い出す。


「行け!」


 クダンロードが伸びた。


 今まで見たことのない脚だった。


 1頭。

 2頭。

 前との差を一気に詰めていく。


「ロード!行け!」


 さらに伸びる。


 だが、先頭には届かなかった。


 ゴール。


 クダンロード、混戦の7着。


「やはり大外枠は痛かったよなあ」


「スタートは悪くなかったのに、気づけば道中は後方でしたよね」


「でも最後、あんな脚が使えるなんて思いもしなかった」


「中野騎手、よくあそこまで我慢しましたね」


 もっと前につけていたら、結果は変わっていたんだろうか。


「お疲れさん。7着は十分立派だろう」


 後ろから声をかけてきたのは智也兄さんだった。


 今日はGⅠということで、大司兄さんと智也兄さんも応援に来てくれていた。


「兄さんたち、せっかく応援に来てくれたのに、勝てなくてごめん」


「皆、努力をして1着を目指しているんだ。甘くなくて当然だ。いちいち謝っていたらやっていけないぞ」


 大司兄さんにポンと肩を叩かれた。


「……そうだね」


 大司兄さんと智也兄さんは、木場先生に挨拶を済ませると先に帰っていった。


 やっぱり兄さんたちには、こういうところで敵わない。


 俺と彩夏さんも木場先生のところへ向かう。


「お疲れ様でした。結果は残念でしたけど、ロードをピカピカに仕上げてくれてありがとうございました」


「こちらこそ、期待に添えず申し訳ありませんでした。大外枠からの競馬でしたが、馬はよく頑張ってくれましたし、中野君も上手く乗ってくれましたよ」


 木場先生がレースを振り返る。


「あの枠から無理に位置を取りに行けば、直線であれだけの脚は使えなかったでしょう」


 俺と彩夏さんは頷いた。


「この後ですが、脚元や疲れに問題がなければ、年内もう1戦使おうと思います」


「ジャパンカップですか?有馬記念ですか?」


「有馬記念を考えています。距離は延びますが、この馬は中山競馬場が合うと思います」


「承知しました。よろしくお願いします」


 負けはした。


 それでも、次こそと思わせてくれる走りだった。


◇◇◇


 そして年末、有馬記念。


 今度のクダンロードはスムーズに先行した。


 好位のまま最後の直線へ入ると、前を行く馬との差を詰めていく。


「行け!ロード!」


 クダンロードが先頭へ並びかける。


 前に出た。


 勝てる。


 そう思ったところへ、外から1頭が襲いかかってきた。


 さらにもう1頭その外から伸びてくる。


 3頭が並んだ。


「ロード!」


 誰も譲らない。


 そのまま3頭がほとんど横一線でゴールへ飛び込んだ。


 勝ったかと思ったが、結果は3着。


 あと少しだった。


 来年こそ、クダンロードにもツキが巡ってくることを祈ろう。


 天皇賞(秋)を勝ったのは、パドックでクダンロードと同じくらい瞳が輝いていた3頭のうちの1頭だった。


 有馬記念の1、2着馬も、クダンロードと同じくらい強く輝いていた。


 同じくらい強い馬同士なら、枠や展開、騎手の判断、運で着順は変わる。


 それは仕方ない。


 やっぱり俺の目は、間違っていない。


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