↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
More than meets the eye -強い馬がわかる俺の馬主生活-  作者: oldenhaldt
受け継ぐもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/37

クダンウイング③

 オークス当日。クダンウイングは、陽菜ちゃんの宣言どおりピカピカに仕上がっていた。


 馬体重は460kg。


「一度使って、馬体がシャープになりました。この2kg減は絞れた分です」


 木場先生が請け合ってくれた。



 やがて発走の時を迎え、ゲートが開いた。


 クダンウイングは好スタートを切った。


 中野騎手は無理に前へ出さず、内へ入れて好位につける。そのまま内をロスなく回り、直線へ向いた。


 前が開く。


 中野騎手が追い出すと、クダンウイングが伸びた。そこへ外から2頭が並びかける。


『3頭の叩き合い!抜け出すのはどの馬だ!』

『外からアルモニアが出るか!』

『いや、内からクダンウイング!クダンウイング抜けた!』

『クダンウイング、ゴールイン!アルモニアは2着、二冠ならず!勝ったのはクダンウイング!』

『鞍上の中野竜也騎手はこれが嬉しいGⅠ初勝利です!』


「……勝った?」


 着順掲示板の1着には、クダンウイングの馬番が表示されていた。


 本当に、オークスを勝ってしまった。


「陸、おめでとう」


 大司兄さんに肩を叩かれた。


「やったな」


 智也兄さんも笑っている。


「ありがとう」


 彩夏さんを見る。


 溢れる涙をハンカチで拭っていた。


「彩夏さん……」


「だって……アイちゃんの仔が……」


 ターフへ目を戻す。


 オークス馬。


 その言葉が、まだ視線の先の馬とうまく結びつかなかった。


◇◇◇


 馬主席から関係者エリアへ降りると、陽菜ちゃんと顔を合わせた。


「陸!」


「陽菜ちゃん!」


 どちらからともなくだった。


 気がつけば抱き合っていた。


「オーナー、いや陸くん、みんな見ているよ」


 木場先生の声が飛んできた。


「あ」


「え」


 俺と陽菜ちゃんは慌てて離れた。


「木場先生、クダンウイングをここまで仕上げてくださって、ありがとうございました」


「オーナーもおめでとうございます。こちらこそ、ウイングを任せていただいてありがとうございます」


 そこへ中野騎手がやってきた。


「九段さん!」


「中野騎手!」


 差し出された手を、がっちり握る。


「おめでとうございます。GⅠ初勝利!」


「ありがとうございます!」


「最高の騎乗でした」


「いや、今日はウイングに勝たせてもらいました。本当にいい馬ですよ」


 互いに笑いながら、もう一度強く握手した。


◇◇◇


 口取り式を終え、引き上げようとしたところで呼び止められた。


「九段くん」


 振り返って、足が止まった。


 神楽和彦。


 2着だったアルモニアのオーナーだ。


 ブレイヴハートに三冠牝馬クレールドール。ダービー馬だけでも何頭所有してきたのか、すぐには思い出せない。


 もう70歳を超えているはずだが、背筋は伸びている。向かい合うと、気圧されるような風格があった。


「はじめまして。神楽と言います」


「存じています。九段陸と申します」


「オークス、おめでとう。アルモニアが二冠を達成してくれると思ったが、どうやら今日は彼女の日ではなかったようだ」


「ありがとうございます」


「教えてもらえないだろうか?クダンウイングのどこに惹かれて購入したのか」


「神楽さんと同じです」


「ほう?」


「昔、雑誌で神楽さんがブレイヴハートを買われた時の話を読みました。『深く透き通った目をしていた』と。私も馬を見る時は、その瞳の輝きを最初に見ています」


「なるほど……。目か。

 ふはは。やはり目か」


 何がおかしいのだろう。


 俺は黙って神楽さんを見返した。


「九段くん、今後のあなたの目利きを楽しみにしています。また競馬場で会おう」


「はい」


「では失礼する」


 神楽さんはそのまま去っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。