第95話《原初の粒vs新型の神編 最終章 神話を描け⑭幸せの半径》
酉の市の熱気の中、少しずつ輪を広げていく41たちの絆。
そして、Mちゃんや家族も巻き込んだ、ラゴンダに変身した「メロン号リムジン」でのサプライズドライブは、新宿の闇に眠る不気味なゴーストタウンへと向かう。
誰もいないはずの平屋のトタン屋根。
その扉の向こうで、奇妙なノイズとバスドラムが重なり合い、世界を鮮やかに反転させる。
眩しい夜の舞台「よろずや」の扉が、今、開く――!
第95話《原初の粒vs新型の神編 最終章 神話を描け⑭幸せの半径》
ここは新宿、花園神社。
伝統的な祭の熱気があふれる酉の市。
おでん屋の前で41の仲間たちが飲んでいる。
サーファーのケイ。
元暴走族のサル。
41の彼女のジュン。
サルの偽カノを演じていたエミ。
彼らの肩書きは、それ以上でもそれ以下でもない。
41にとっては、どうでもいいことであった。
信じると決めた相手は信じる。
例え裏切られても。
それが41のルールだった。
さっきまでは…。
ーー
41はMちゃんに連絡するため、公衆電話に行っていた。
おでんやのテーブルの前には、山のように積まれたジャンクフード。
チョコバナナや、りんご飴は溶け出している。
季節は冬にさしかかっているが、彼らは軽装を好む。
体からヤクの熱を逃がすため。
そして痩せ我慢。
ケイはTシャツに革のジャケット。素足にエスパドリーユ。
ジュンはTシャツの上にGジャンを羽織り、生足でミニスカ。トニーラマのブーツ。
サルはTシャツの上にスタッズの入ったライダージャケット。細身のデニムにラバーソール。
41はゆったりとしたTシャツに、お気に入りの《JUN》のジャケット。バックスキンの薄い一枚皮を、細い皮紐で結んだ靴は、上野で見つけたモノだ。
どれも細身の彼らによく似合う。
エミも最近、41たちと似た服装を選ぶようになってきた。
おでかけはドライブしてカフェ。そしてDISCO。
41にとってDISCOはカラダにグルーヴを覚えさせる場所。
41の持論。
「ベースは人の腰を動かせなきゃダメ。グルーヴは腰から。」
41は真面目にそれを言うが、周囲の評判はイマイチ。
いつもスケベな方にとられるので、最近その発言を控えている。
彼らにとってDISCOは、手頃な料金で食べて飲んでジムのように汗をかき、朝までいれる場所。
服はダサくなきゃ何でもいい。
健康で正義の心を持ったジャンキーたち。
服装も彼らの生き方そのものだ。
暑かったら脱ぐ。寒かったら着る。
重いモノを持ってると、いざとなったら逃げられない。
ドライでクール。そしてHOT。
41の生き方はプレイに反映し、ベースという楽器の特性も41にフィードバックされる。
41を知り彼のプレイを聞くとわかる。
「どこかふざけてる」
そう感じたときには、すでに41のグルーヴに閉じ込められている。
人の形をした薬物と仲間から揶揄され、本人はほめられてると勘違いする。
それが《41》という中毒性をさらに高めていく。
ーーーー
ジュン「ねえ。ケイちゃんたちさー。ジュピタンと何の話して泣いてたのよ?」
ケイ「うっせーなー。何でもねーし、泣いてねえ。」
サル「んなこと、どーでもいいだろw」
ジュン「( ・`ω・´)どーでもよくないっ!ジュピタンが映画見ながら泣いちゃうのは何度も見てるけど、ケイちゃんたちが泣くなんて初めて見たもん。」
ケイ「だったら41から直接聞けよ。」
ジュン「だって、ジュピタンはさー。自分の事話さないし、聞けないもん。」
サル「ジュン。お前は41の女かもしれねえけどさ。何でもズケズケ入っていいもんじゃねえ。オレたちゃお前よりアイツとのつきあい長げーんだ。もう大丈夫だと思うぜ。これからは。」
ケイ「だとよ。そういうこった。」
ジュン「だぁってさー。二人も泣いてるなんてさー。何あったか気になるもん。…キモいとか言ったのはゴメン。」
エミ「41さんて泣くことあるんですか?もっとドライなイメージ持ってました。」
ケイ「エミちゃんにはまだ早いなw」
サル「アイツああ見えて、情の深いやつなんだぜ。オレもお前も助けてもらったろ?つーか、はっきり言って、エミがここにいるのが証拠だよ。」
エミ「そうなんですけどー…。」
ジュン「じゃあ、言っちゃおうかな。ジュピタンてさ。寝ながら泣いてる時あるんだよね。どんな悲しい夢見てるんだろうって気になるけど聞けないの。」
ケイ「( ・`ω・´)ジュン。あー。コイツ言っちゃったよ。それはオレたちも何度も見てる。でも言わないでた。そして、さっきの話で何となくわかった。」
サル「知らずに無理してたんだよ。」
ジュン「ますます気になるわー。」
ケイ「(*≧ω≦)だっからー。すぐわかるってば。女はせっかちだなー。」
サル「ジュン。一個教えてやるよ。アイツ古風な女が好きだって言ってたぜ。ちゃんと立ててやれよw」
ジュン「( ・`ω・´)何よー。アタシ、ジュピタンのこと立ててるし尊敬してるもん!」
ケイ「(*≧∀≦)尊敬はどうかなーw」
サル「型にはめてアイツを見ると見失うぜ。振り回されてるくらいで丁度いいんだよ。アイツかわいいだろ?」
ジュン「めっちゃかわいい!」
エミ《41さん、寝ながら泣くんだ…。見たいーっ!》
サル「エミ。何ニヤニヤしてんだよ。41が泣くの嬉しいのか?」
エミ「え?ニヤニヤしてました?そんなことないですよ。ちょっと人間臭いとこあって微笑ましいというか。でも絶対バカになんかしてません!尊敬してます!」
エミ《ヤッバ。顔に出ちゃった。それに尊敬だって。余計な事口にも出しちゃうし。…気をつけよー》
ケイ「尊敬って愛に変わるんだよなw」
ジュン「尊敬はどうかな?って言ってたの誰よーw」
サル「お前さー。オレの前で言うか?一応元カノだぞ。」
エミ《ケイさん!あー、もうダメだ…。》
エミは恐る恐るジュンに視線を移す。
ジュン「なーんだ。ケイちゃんもサルも知ってたんだ。これも言わなきゃよかったかな。それよりさ、エミちゃん。ジュピタンの泣き顔見たいの?可愛いんだよー。グスン(ノ_・、)って泣くの。」
ケイ「ジュン。お前もそのへんにしとけ。そろそろ帰ってくるぞ。別に陰口でも悪口でもねえけど、あれは41のものだ。だから誰も本人に教えないし聞かない。怖い夢や変な夢の時はアイツから話すだろ。覚えてないのかもよ。」
サル「だから言うなって事よ。」
ジュン「はーい。でもさ。ちょっと。エミー。」
エミ「はい!何でしょう?」
エミ《呼び捨てっ!怖っ!》
ジュン「ジュピタンはさ、そこそこモテるし、おっぱい大きい子に弱いからさ。油断できないのよ。エミちゃんも胸大きいからなー。危ない危ないw」
サル「そういえば去年連れてた女も、胸でかかったようなw」
ケイ「顔は会ったらわかるけど思い出せない。胸大きかったのは確かだ。いっつもだよな?」
サル「本人は『お尻派』って言ってるけどウソだよなw」
ジュン「( ・`ω・´)何かムカついてきた。」
エミ「( ・`ω・´)アタシもです。」
ケイ「(*≧∀≦)アハハハハ!」
サル「悪口言ってるわけじゃねーのに。41かわいそうw」
ーーーー
その2~3分ほど前から、人混みに遮られながら、41はこの会話を聞いていた。
41の聴覚はガンマとデルタに壊されてから、ぴょこにゃんの《マッドサイエンティスト》の技術で人工聴覚を組み込まれている。
もちろん、本人は「よく聞こえる」くらいにしか思ってないが地獄耳である。
両手には鮎の塩焼きと海老の塩焼き。
美味しそうな匂いに我慢できず、鮎の塩焼きを一口かじったとこである。
ーー
オレ「( ;∀;)かみかみー。いきなりピンチだ。どーしよー。入っていけない。オレ寝ながら泣いてるんだって。恥ずかしいー。ところで、焼魚お前も食べる?」
41のアタマの上にはメロンパンをかぶった子猫、かみかみが張り付いている。
かみかみ「TPO的に無理だお。早く座ればいいのにだお。ボクたち、かなり目立ってるお。アタマに、ねこ乗せててさ。鮎と海老持って、ねこに話しかけてる人怖いお。」
オレ「ねこにTPOって言われた…。」
かみかみ「ところで『お尻派』ってにゃに?」
オレ「( ;∀;)もう聞くなよ。座るから…。」
オレはフツーに席に戻る。
話は聞いてない事にしよう。たぶん誘爆する。
ーーーー
オレ「おっ待ったっせ!鮎と海老ー!」
ケイ「おお。旨そうだ。気が利くじゃん。」
サル「いいタイミングだったな。ちょうどお前の話してたんだよ。」
ケイ「それで?Mちゃん?Mさんて呼んだ方がいいか。Mさんは来てくれるの?」
オレ「来てくれるってさ。子供が起きてきてさ。かみかみと約束したんだって泣いてゴネて、結局連れて来ることになった。オレまで電話で泣かれたw」
ジュン「かみかみを知ってるの?」
かみかみ「みーにゃ」《ミーサちゃんだお》
ケイ「0時まで1時間ちょいか。横浜だろ?車?電車なら余裕だけど?横浜のどこよ?」
オレ「本牧。いつも行くカフェの近くだよ。途中でさっきのメロンパン屋に寄ったんだよ。そしたら店たたんで、すぐ迎えに行ってくるって。」
サル「はあ?ここから横浜往復?けっこう無理じゃね?知らねえヤツに迎えに来られて平気な人なの?」
オレ「だから、それもMちゃんに電話し直しといた。アムリアって女の子が《ラゴンダ》で行くからって。Mちゃんは大丈夫だってさ。」
ケイ「往復80キロくらいか。おまえのカトラスなら行けるかもな。オレのリンカーンなら余裕だけど?w」
オレ「( ・`ω・´)何だとー!やっぱりオレが迎えに行ってくる!お前ら区役所集合なっ!」
ジュン「ケイちゃん。ジュピタン煽っちゃダメだよ。マジでやるからw」
ケイ「冗談だよ。お前がいないと祭りも、つまらねえ。迎えは任せてここにいてくれ。」
オレ「( ̄^ ̄)まあ、ケイがそう頼むならいてやってもいいけど。」
ケイ「( ・`ω・´)やっぱり行ってこい。」
サル「(*≧ω≦)やーめーろ!41はここにいろ。さっきの話の続きしよう。」
オレ「(´-ω-`)えー。話の続きぃ?…やっぱり横浜行ってくるー。」
ジュン「聞いてたの?w」
エミ「お尻好きなんですか?w」
オレ「( ̄^ ̄)あー。そうですよ。オレはお尻にも胸にも弱いゲス野郎す。そこらへんの蛾と変わらねえ。ヒラヒラ、フラフラ男ですー。」
ケイ「(*≧ω≦)開き直った。つーか、いつもと同じだけどな。」
ジュン「は? アタシいないとき、こうなわけ?」
オレ「( ;∀;)ケイ。ビール奢るから黙っててくんない?」
サル「オレは日本酒なw」
エミ「アタシ、ハイボール飲みます。」
ジュン「ワイン探してきて。」
オレ「( ・`ω・´)にゃろう!調子乗んなよ。」
ケイ「(*≧ω≦)あ。キレたw」
サル「いっしょに行ってやるよw」
オレ「なあ。塩焼きとおでん食べ終わったら次の店行こうよ。焼き鳥食べたい。」
ケイ「まだ食うのかよ。」
オレ「アルコール飲んでない分入るんだよ。」
エミ「41さん。よく太りませんね。アタシだったらすぐ太っちゃう。」
オレ「(*≧ω≦)健康なジャンキー目指してたからだよ。食いたくなくても食うの。食べるの好きだし。ご飯はフツーに美味しく食べてるよ。」
サル「フツーねぇ…。フツーは食欲なくなるのにな。お前といると食える。不思議だよな。」
ケイ「コイツがヤクそのものなんだよ。食欲落ちない《41》ってヤク。」
オレ「(*≧ω≦)乳酸菌だもん。」
ケイ「(*≧ω≦)それはヤクルトな。」
ーーーー
ふざけあう41たちを見守る三人がいる。
ゴスロリの少女は夢の悪魔ラミリス。
モノトーンのスーツ姿は色の悪魔クロノア。
70年代風のファンキーな服装の超美人は、音の悪魔ソノリス。
ーー
ラミーノ「早く話しかけようよ。マスターたち、Mちゃん様、迎えに行っちゃったしさ。」
クロノア「((( ;゜Д゜)))無、無理ですよ。ヤクから乳酸菌なんて発想について行けません。あー。私、真っ先にマスターに消されますね。」
ソノリス「あなた色の悪魔のくせに、色がないのよ。そしてそのスーツ。どうせ男の色気はスーツ姿って選んだんでしょ?」
クロノア「確かに図星です。だって私、構築されてから悪魔しかやったことないんですよ。」
ラミーノ「クロノア、置いていこうっと。アタシ混ざってくる!」
ソノリス「私も!」
クロノア「…透明になりたい。」
ーーーー
そして悪魔たちは41に話しかける。
ラミーノ「41さん!お店終わったんで遊びに来ました。いっしょしていいですか?」
オレ《マジかよ。いよいよ夢と現実めちゃくちゃになってきたな。ねこにゃんたちめー。》
かみかみ「にゃお」《ご苦労様。くつろげばいいお。》
オレ「お前、何で偉そうなの?」
かみかみ「にゃーん?」《どこがだお?》
オレ「まあいっか。どうぞ、どうぞー。ここの食ったら焼鳥に移動だけど。みんなもいいよな?」
ケイ「もちろん!ソノリスお姉さま!」
ソノリス「はい。ケイさん。お隣いいですか?」
ソノリスはケイの隣に腰掛ける。
ケイ「やべー。近くで見るとマジきれいっすねー。」
オレ「お!ケイの敬語!」
ケイ「( ・`ω・´)うっせえなー!ダジャレが、オッサンなんだよ、おめーは。」
サル「ラミちゃん!何飲む?何か食べる?オレ買って来ようか?」
ジュン「たくさん注文するなら、このテーブルの板で、いっぺんに運ぼうよ。男子がんばっ!」
ジュンがテーブルの上を片付けだした。
オレ「(。・_・。)ノ。…ハイ!」
サル「何だ?」
オレ「(*≧ω≦)方舟運ぶねw」
サル「は?」
ケイ「(ー_ー;)お前は口を閉じてろ。」
ジュン「何ごっこなのそれ?」
エミ「方舟って《ノアの方舟》のこと?ダジャレだったんだ。『方舟運ぶね』?『運ぶね、方舟』?どっちー?アハハハハ。」
サル「それ、どのタイミングで使うんだよ。」
ジュン「何回も使ったら殺すわよ。」
オレ「ねえ、そこの人。君も座れば?」
オレはスーツ姿の男、クロノアに声をかけたが返事がない。
オレ「聞こえてる?おーい。」
クロノア「は、はいっ!つい、感動してました。」
オレ「何に?」
クロノア「あ、後からくる。クククク。『方舟運ぶね』って…。」
オレ「(´・ω・`; )恥ずかしくなるから言い直すのやめてくれる?」
クロノア「ご一緒します!」
オレ「ラミーノ。何なのコイツ?」
ラミーノ「さあ?」
クロノア「ま、まだツボってます。クククク。」
オレ「ふーん。じゃあ…。」
ケイ「またろくでもないこと考えてやがるな。」
サル「自分だけ面白くて自縛するパターンだろw」
オレ《みんながオレに注目している。仲間たちのいつものヌルイ目が心地よい。思考加速せよ。最適解のフレーズを叩き出せ!》
オレ《ならば…。》
オレ「( ・`ω・´)『イガイタイヨウハイガイタイヨウ!』どうよっ?」
クロノア「はっ?」
オレ「(*≧ω≦)『意外、太陽は、胃が、痛いよう。』…なんてねw」
ケイ「(ー_ー;)なんてね、じゃねーだろバーカ。話途切れるから、思いつきで喋るな。ねー、ソノリスお姉さまー。」
オレ「瞬間テキトー言葉並べの術!」
サル「もはや突っ込む気にもならねえw」
ジュン「もう慣れたからね。この人だけ笑ってるわよ?」
クロノア「クククク…。クククク。胃が痛いようとは。クククク。」
オレ「お前なかなか見どころあるな」
ケイ「それ、終わってるって意味だろ。」
オレ「オレもそう思うw」
サル「ラミちゃんたちのツレだよね。」
ラミーノ「( ̄^ ̄)違います。」
ソノリス「( ̄^ ̄)知り合いくらいですね。」
ジュン「この人なら、さっきの鳥居のとこでも笑うんじゃない?」
オレ「(´・ω・`; )…それはオレが傷つくからやめようw」
ーーーー
そしてオレたちは焼き鳥屋のスペースで、さらに飲み食いしふざけあう。
祭りのテンションって何なんだろうね。
ーー
祭りといったら酒。
これは今の話。
酒は良くて薬物はダメ。何で?っていつも考えてた。
たぶん為政者の都合なんだろうってオレは考えてる。
酒の方が治めやすい。
今はお酒の方が管理しやすい時代なんだろって。
太古の儀式には様々な薬物が関係してる。
儀式だけじゃない。日常の生活にもだ。
過酷な農作業の昼休みにはコカ茶で一服。
頭痛の時にはケシ坊主を削って練ったアヘンをおでこに貼って和らげるとか。
先住民族のシャーマンが占うのは村の吉凶。
あるいは豊作不作。
《ヤッヘ》という名の水仙の仲間だったかな。
水辺に生えるそれを取ってきて、土に埋め、七日七晩祈るんだ。
そして再度、土から取り出しそれを擂り出して、すり潰し飲む。
それが神様と対話する方法。
幻覚なんだか幻聴なんだか。
神様に届くくらいだから、すげートリップなんだろな。
誰が考えたの?
誰が見つけたの?
薬物の世界はロマンと不思議だらけだ。
それにあやかって、オレもジャンキー目指したとこもあるんだよな…。
神様いるよね?いるんだよね?
会ったら何話せばいいかなぁ…。
あれ?
何考えてんだっけ?
仲間たち。かみかみ。そして夢の中の住人たちか…。
今、目の前の景色がオレの全てだ。
《この半径2メートルの幸せ。手放せないよ…。》
ーーーー
ジュン「ジュピタン!ねえ、ジュピタンてば。」
オレ「んあ?何?」
ジュンが呆れたような顔でオレを呼んでる。
どしたの?
ケイ「また、どっか行ってたな。そろそろ時間なるぞ。行くんだろ?」
オレ「大丈夫でありますっ!正気で戻ってまいりました。」
ケイ「当たり前だろ。この『ボーット星人』。狂って帰ってこられたら怖いわw ソノリスさんたちは慣れてないんだからな。」
サル「星人?尊い方の『聖人』やれよ。お前ならなれるぞ『ボーット教祖様』。オレが隣でスポークスマンやってやるよ。」
ケイ「(*≧ω≦)それならオレもできるな。『ほら、教祖様は20光年彼方から帰ってきましたー』って言えばいいんだろ。楽勝!」
オレ「やっぱり!ほめてる?」
ケイ「ほめてねえ。その、『やっぱり!』は何のやっぱりだったかは興味ある。」
サル「脊髄反射だよw」
ジュン「何それ?」
サル「熱いもの触って『あちぃ!』ってやるやつだよ。脳みそ通さないで反応するってこと。」
オレ「この、焼鳥うめえ!これも?」
ラミーノ「何、考えてたんですか?」
オレ「ん?みんながゴチャゴチャ言うから忘れちゃったよ。何だっけ?焼鳥食べる?」
ーーーー
ここは新宿区役所前。
午前0時も近い。
酉の市の終わりの雑踏で道はあふれている。
そんな中、突然現れたのが薄いメタリックグリーンのリムジン。
違法駐車が並ぶ道路に滑らかに止まる。
《アストンマーチン・ラゴンダ》
先進的なフォルム。デジタルメーター採用。
先ほどまでメロンパンのキッチンカーとして屋台に並んでいた車。
元々は、ねこぴょこたちがエスネコ探索のために作った万能構造機体《メロン号》
ねこにゃんの《魔のつくもの全て》とぴょこにゃんの《マッドサイエンティスト》の力で構築されたハイナノテクノロジーの産物である。
今回はリムジンに姿を変えている。
中にはすでにMちゃんとミーサ。
奥さんのマリちゃんが乗っていた。
ーー
アムリア「ハイ。到着でーす。」
Mちゃん「はあ?ここ新宿?もうついたの?そんな飛ばしてなかったような…。」
ミーサ「パバ。よーいちといっしょに、かみかみのおうちに行くんでしょ?ミーサ約束してたんだー。」
マリちゃん「首都高もガラガラだったし、一度も信号で止まってない。それに今日は、お祭りでしょ。渋滞も交通規制もなかった。どうなってるの?」
運転席のアムリアが振り向いた。
アムリア「(*≧ω≦)ついてたわよネ。」
Mちゃん「アムリアちゃんって41の知り合いなんだろ?アイツの交遊関係、謎だなーw」
アムリア「アタシも今日で会うの二回目ヨー。」
ミーサ「アムリアお姉ちゃんて、かみかみと同じ感じするー。ねこちゃんなの?」
マリちゃん「(*≧∀≦)ねこちゃんみたいに、可愛い子ちゃんだもんね。モデルさん?」
アムリア「違うよー。アタシは《お店屋さんごっこ》の店長さんで、そこでアイドルやってるのよー。《モデルさんごっこ》もいいかもネw」
Mちゃん「ごっこ?」
アムリア「そう。みんなで遊んでるの。」
ミーサ「じゃあ、ミーサもごっこしたいーw」
マリちゃん「Mちゃん。41って何者だっけ?昔から知ってるよね?」
Mちゃん「ああ。《昔から》だな。でも、変わり者じゃない。」
マリちゃん「それは違うよ。ヘンテコで面白い子じゃんw」
Mちゃん「いったいどこに連れてかれるんだろうなw」
ミーサ「パパもママも、かみかみのおうちだってば。ミーサは何ごっこして遊ぼうかなー。」
Mちゃん「(*≧ω≦)まあいっか。子供連れて一家で真夜中に遊ぶなんて滅多にないもんな。」
マリちゃん「Mちゃんがミーサに負けて、アタシまで来ることになっちゃった。」
Mちゃん「それにしてもさー。こんだけ目立つ車なのに、外の誰も覗き込んでこないよな?」
アムリア「それはアタシの運転テクニックで目立たないように止めてるから。フフフw」
Mちゃん「(*≧∀≦)は?はぁ。。」
メロン号は酉の市と同じ《空間拡張》が施されている。
移動時間の短縮もそうだ。
ないはずの車線を広げ、青信号の距離を伸ばし通過後に短縮する。
メロン号《めんどくさいですねー。空ならすぐなのに。でもこのムダがいいんですよね。学習しました。》
ーーーー
そして酉の市を出た41たちは区役所の前まで来た。
オレ「いないじゃん。」
ケイ「いるじゃん。」
ジュン「でっか!何このリムジン。何人乗りよ?」
オレ「( ;∀;)いないじゃーん」
かみかみ「にゃお」」《41。行き過ぎだお。一歩後退だお。》
オレ「あ。いるじゃん。」
ケイ「バカなの?」
オレ「バカじゃねえ。見えなかっただけだよ。」
サル「あ。オレも見えた。これってさっきの屋台に似てねえか?」
エミ「あれ、キッチンカーでしたよ?」
オレ《納得だわー。つーか平気なのかよ。ねこにゃんたちいるのは夢の中。つまりオレのアタマの中だろ。同じ幻覚見るのは体験したけどさ。夢から出てきて夢の中に入るって…。》
《カチャ》
リムジンのドアが鳴った。
《スーン…》
ドアが上に開いていく。
オレ「はあ?ガルウイングー?」
ケイ「マジか。カウンタックかよw」
ジュン「アムリアたちって何者なのよ。石油王とか?」
《パタパタパタ!》
中からミーサが飛び出してきた。
そのままオレに抱きつく。
ミーサ「(*≧ω≦)よーいちー!かみかみだー!」
オレ「(*≧∀≦)夜なのによく来たねー。眠くない?」
ミーサ「いっぱい寝んねしてきたもん。」
かみかみ「にーにゃ」《ミーサにゃお》
ミーサ「あー。かみかみ、メロンパンの帽子かぶってるー!可愛いっ!ねえ、よーいち。かみかみ抱っこしたい。かみかみおいでー。」
かみかみ「(*≧∀≦)みーにゃ」
かみかみはミーサに抱かれ、そのままリムジンに乗り込む。
オレ「Mちゃん。マリちゃんも。来てくれてありがとうございます。どこ行くかオレもわかんないんだけどさ。」
Mちゃん「(*≧ω≦)アハハハハ。家に迎えに来られた時からUFOに拐われた気分だよ。お前の顔見て安心した。アブダクション仲間だなw」
オレ「芸能人誘拐事件だ。オレは共犯者兼、被害者の役!」
マリちゃん「いいから早く41たちも乗りなよ。アタシも41の顔見てホッとした。だいたい、こんな美人の女の子と知り合いとか何なの?それも会うの二回目って。手が早いわよねーw」
アムリア「そうなんですぅ…。脅されたんですぅ…。」
オレ「( ;∀;)アムリア。そういう…。とにかくいろいろ止めてくれ。」
ジュン「アタシも乗ろうっと!こんばんわ!アタシはジュンです。ジュピタンの彼女です!」
マリちゃん「ジュピタン?誰それ?この子には偽名使ってるのー?w」
ケイ「ハイ。こいつ、オレにはシロッコって名乗ってました。誰なんすかねコイツ?」
サル「オレは、コイツからニュータイプになるための実験されてたって聞いたぜ?」
オレ「( ;∀;)前に進まねえからさー。そういうの後からやろうよー。」
エミ「(*≧∀≦)アハハハハ!お腹痛い!」
Mちゃん「早く乗れよ。そこのジュピタンw」
ミーサ「( ・`ω・´)よーいちは、ここに座るの。ミーサとかみかみの隣ー!」
オレ「(*≧ω≦)秒でカオスだ。盛り上がってきたぜー!てめーらも乗れ!」
全員「ウォー!」
そしてリムジンは全員を乗せ音もなく発進していった。
一人を除いて…。
クロノア「(´・ω・`; )あれ?いたの忘れられました?」
クロノア「これはまずいです。追いかけます!」
クロノアの指先から飛沫が飛ぶ。
《ペチャッ》
ラゴンダのガルウイングに《色の悪魔》クロノアのペイント弾が貼り付いた。
クロノア「入れないなら、しがみつきます!」
ーーーー
にゃんこシティは今夜、祭りだった。
世界同時多発ねこの日。
世界中に飛び出て神話をほじくり返し、オカルトやファンタジーをリフレッシュさせてた概念のねこ神たち。
《41たち、一行がにゃんこシティに来る。》
その情報は瞬時に拡散する。
《自分達の本体に会える。》
にゃんこシティに戻るために《ゲート》に殺到するねこたち。
雪男に化けていた《見間違いの概念》のねこ神は、その場に着ぐるみを脱ぎ捨て《ゲート》に向かう。
その着ぐるみは20年後、雪男の毛皮として発見される事となる。
『UFOワーム』に化け、空を浮遊していた《ストローの概念》のねこは、巨大なクネクネストローを残し《空のゲート》から戻っていく。
残されたストローは大気摩擦で燃え上がり、空に『火の竜』の目撃情報を残した。
各地の《ゲート》はオーバーフロー状態。
近くにいた人や乗り物、建物さえ飲み込まれる。
それは時間差なく、祭の後の《ゲート》清掃で元通りに戻される。
ただ、記憶は人にもモノにもフラッシュバックのように残された。
《穴と街とねこの鳴き声》
あるいは
《継ぎ目のない溶接跡》
あるいは
《階段上の虹》
どれも親から子へと古びた記憶として消されていく。
ーーーー
ここは、新宿富久町。
地上げによりゴーストタウンとなった住宅街。
シャッターが閉まった商店。
駐車場にもされていない虫食いだらけの空地が点在している。
住宅にも明かりはなく、人の住んでいる気配もない。
ーー
オレ「なあ、アムリア。ここ、富久町あたりだろ?さっきから新宿御苑の回りグルグルしてない?」
アムリア「そうよ。」
リムジンに乗った一行は車の中で違和感を覚えていた。
《リムジンの意味あるのか?》
オレ「近すぎだろ。歩いてこれたし。」
アムリア「来れないわよw」
ケイ「こんなとこにDISCOなんてあんのか?」
サル「暗くてよく見えないけどさー。これが地上げの実態か。街もめちゃくちゃだな。」
ジュン「みんな、追い出されたのよねー。」
エミ「テレビよりひどいですね。。」
オレ「ここらへんで店やってて人なんか来るのか?」
Mちゃん「新宿にゴーストタウンかー。さっきのお祭りのそばじゃん。東京は闇が深いなー。」
かみかみ「にゃおん!」《ついたお!》
リムジンが静かに止まった。
ーーそこは平屋のトタン屋根の家。
屋根には傾いた電飾の看板。
小さな窓口と勝手口の扉。
横にはシャッターが降りている。
平屋の後ろに廃墟のようなビルが、背中合わせにくっついていた。
オレ《ここが?昔のタバコ屋?》
アムリア「(*≧ω≦)『よろずや』へようこそ。ねこにゃんたちも待ってるわよ。」
ケイ「こりゃ、六本木の《FUNFUN》以上の隠れ家だわ。会員制秘密クラブとか?」
アムリア「似たようなものねー。『選ばれた人』しか入れないもん。そろそろ入る?」
Mちゃん「選ばれた?唐突だな。」
マリちゃん「そうみたいね。いいんじゃない?」
エミ「何か、肝試しみたい。」
すると、かみかみを抱いたミーサが一歩前に出た。
かみかみ「みーにゃ。にゃにゃいにゃおー。」《ミーサ。『……!』って言うんだお。》
ミーサ「(*≧ω≦)わかったー。」
オレ「オレはわかったけど、ミーサも?」
Mちゃん「待て待て待て。オレもわかったぞ。」
ケイ「オレも何となく…。」
ミーサ「じゃあ、いくよー。『ただいまー!』」
かみかみ「にゃにゃいにゃー!」
《ただいまだおー!》
ーー《ガラガラガラガラ》
建物右側の窓口のシャッターが上がる。
そこには二匹の子猫が座っていた。
チンチラシルバーとアメリカンショートヘア。
ねこにゃんとぴょこにゃんだ。
ーー
《カチッ》
スイッチが入る音。
《ブーン…ブブッ、ブーン》
蛍光灯のグロー菅が悲鳴をあげる。
《ポワッ》
トタン屋根のの看板に灯りがついた。
たより無さそうな電気のノイズが鳴り続いている。
《ブブッ!ブーン。ブブッ!ブーン…》
いつしかノイズは、ボイスパーカッションのような規則的なリズムに変わっていた。
青、赤、黄色、緑、紫の蛍光灯で型どった文字が浮かぶ。
そこには『よろずや』と書いてあった。
ーー《ブブッ!ブーン。ブブッ!ブーン…》
《ドン、ドン、ドン、ドン!》ーー
電気のノイズに重いバスドラムの音が重なりあった。
ーーーー
ねこにゃん「いらっしゃい。ねこたです。」
ぴょこにゃん「そのツレのぴょこたです。今、ドア開けるにゃ。」
いつの間にか子猫の姿は人間に変わっていた。
《スーーーーン》
シャッターが横にスライドする。
《パアッ!》
光の音がした。
店内から目映い光と、ノリノリでゴキゲンな音が溢れ出る。
ねこにゃん「(*≧ω≦)ようこそ、よろずやへ」
ぴょこにゃん「(*≧∀≦)みんなの今日の星占いは《満月!》w」
眩しい夜の開演だ。




