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第四十一話 「雨宿り」

明日仕事休みなので2話連続投稿

六月。


朝から空模様は怪しかった。


「雨降りそうですね」


紫雲が窓の外を見る。


灰色の雲が広がっている。


「天気予報では午後からですわ」


真昼は教科書を開きながら答えた。


「傘持ってきた?」


乃亜が聞く。


「持ってきました」


紫雲が頷く。


「私も」


茜も小さく手を上げる。


全員が真昼を見る。


「?」


「真昼は?」


「持っていませんわ」


乃亜が頭を抱えた。


「何で!?」


「必要ありませんので」


「必要あるんだよ!」


いつものやり取りだった。


⸻


放課後。


予報通り。


雨が降った。


しかもかなり強い。


窓を叩く雨音が校舎中に響いている。


「うわぁ……」


乃亜が外を見る。


「結構降ってるなぁ」


「帰る頃には止むでしょうか」


紫雲も少し困った顔をしていた。


⸻


帰宅時間。


しかし雨は止まない。


むしろ強くなっていた。


校門付近には足止めされた生徒達が集まっている。


真昼は空を見る。


「帰りますわ」


「いや待て待て待て」


乃亜が腕を掴んだ。


「濡れるよ?」


「問題ありません」


「あるんだよ!」


⸻


その時だった。


ゴロゴロ……


遠くで雷が鳴る。


紫雲の肩が小さく震えた。


真昼は気付く。


「雷が苦手ですの?」


「え、えっと……少しだけ」


全然少しではなさそうだった。


⸻


再び雷が鳴る。


ビクッ。


紫雲が身体を震わせる。


真昼は少し考える。


そして。


自分の席へ戻った。


「真昼さん?」


紫雲が首を傾げる。


真昼は鞄から何かを取り出した。


湯呑みだった。


正確にはマイボトル。


中には温かいお茶。


「飲みますか」


紫雲が目を丸くする。


「え?」


「温かいものを飲むと落ち着くと聞きました」


真昼は本気だった。


慰めるつもりも優しくするつもりもない。


ただ知識として知っていたから実行しただけ。


しかし。


紫雲は少し嬉しかった。


「ありがとうございます」


受け取る。


温かい。


胸の奥まで温かくなる気がした。


⸻


それを見ていた乃亜。


「ほーん」


ニヤニヤ。


茜も静かに見ている。


真昼は気付かない。


紫雲は気付いている。


だから少し恥ずかしい。


⸻


やがて。


時計は午後六時を回った。


それでも雨は止まない。


「どうしましょう」


紫雲が呟く。


真昼は窓の外を見る。


そして。


「送りますわ」


自然に言った。


紫雲が固まる。


乃亜も固まる。


茜も固まる。


真昼だけが普通だった。


「え?」


「家までです」


「いやいやいや」


乃亜が割り込む。


「遠いよ?」


「問題ありません」


「あるんだよ!」


本日二回目だった。


⸻


紫雲は少し困ったように笑う。


だが。


嬉しそうでもあった。


「お気持ちだけで大丈夫ですよ」


「そうですか」


真昼はあっさり引いた。


乃亜は安心した。


⸻


しかし次の瞬間。


ドォン!


近くで雷が落ちた。


「ひゃっ!?」


紫雲が思わず真昼の袖を掴む。


静止。


全員静止。


紫雲も気付いた。


顔が真っ赤になる。


「あっ……」


慌てて手を離す。


「す、すみません」


真昼は数秒考えた。


そして。


「やはり送りますわ」


「え?」


「怖いのでしょう?」


真昼は真面目だった。


紫雲の顔はさらに赤くなる。


乃亜は顔を覆った。


茜は少しだけ笑った。


⸻


窓の外では雨が降り続いている。


誰もまだ知らない。


この何気ない雨の日が。


後の真昼と紫雲にとって。


大切な思い出になることを。

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