表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラレルワールド ~齢17歳の暗殺者は世界に叛旗を翻す~  作者: ふぁなお
第漆章「幾千万ノ死」
53/69

第漆章 3 バットエンドなど壊してしまえ。

 3 バットエンドなど壊してしまえ


 彼は走った。

 この一週間、まともに動かさなかった固まった筋肉を酷使して、いつも以上の速度で一直線に駆けていく。マンションの間を抜け、平屋を駆け上り、川を渡り、一気にその向こう側のビルへと近づいていく。

 人を捨て、人格を捨て、周りの人に目を向けず。

 彼は獣のように前へと進んでいく。

 正面突破、そんなバカげた四文字すら彼にとっては普通のことで――いや、ゆりを殺した彼にはとっくに監視がついているだろう。上の連中が彼に任務をよこさなかったのも、反乱されないためでもある。もはや考えたところで意味のないことだった。ただ、追いつかない絶対的な速度で向こう側に越えてしまえばいい。


 武装警備員など五秒で片づけ、階段へ直進する。

 扉を数枚とぶち破り、彼はその秘密兵器に向かって進む。


 するとそこには、クハとゴロが立っていた。


「なあ、どうしたよ……ナナ」

「リーダー命令よ、ナナ」


 当たり前だ。一週間いなかったんだ、むしろ飛び出した時点で報告が入っているだろう。彼らの任務は『ナナを殺すこと』。

 彼は言った、たった一言を言った。


「ど、け」


「やめろよ、知っているよ、ナナががしたことは知っている。そして、何よりも尊敬している。ナナの強さは知っているから、戦いたくはない」

「ナナ君は、規則違反をしているのよ。わたしも、君と戦うのは気が引けるけど、ここは通さない」


「分かったよ……でも、ここは――」


 瞬く剣捌きと、輝く銃弾が二人の脳天を切り抜いた。


 さすが、一桁。二人の持つ武器を奪い去ってそれを軽々と使って見せる。

「っあ⁉」

「っう⁉」

 弾ける血が音符のように生命と言う楽曲を奏でていく。

「僕は、止まれないんだ」

 この二人でさえ、たったの一分。もはや、ここまで来るのに三十分も経っていない。制圧が完了していた。


 彼は、その小さな研究室の前へ。

 その辺に落ちてあったコルトパイソンを手に持つと、大きな振動を発生させる。甲高い乾燥音が響き渡り、ドアが拉げた。

 中に入り、そのケースを開けると、中から文字が浮かび上がる。

『password』

 彼は今さっきの記憶から、この文字列を打ち込むと。

『sytm6m6n68』

 彼はその中へと吸い込まれていった。


 中は暗く、うねりと曲線の連続の世界が広がっている。

 どこか血生臭い匂いが身体に纏わり付き、彼の周囲でくねくねと回っていく。白い靄が徐々に絡み、彼の全身を覆っていく。

 目の前には、時間の波。

 その一つ、ちょうど殺す瞬間の景色を触れる。


 そうだ、お前は今から禁忌を犯す。

絶対に成し遂げられない未知の領域に足を運ばせるのだ。

もはや、あとには戻れない。

 彼女を殺して、幸をも殺して、すべての命を奪い去っ少年は今。

 一人の命を守ろうとしている。

 良いことではない、罪滅ぼしでもない。

 彼女がこの行為を望んでいるのかと聞かれれば、おそらく違うのかもしれない。

 でも、生きろと言った彼女を見捨てることはできない。

 だから、救う。

 君の命を、自ら捨てたその命を僕は手にする。


 少年よ、命とは儚く脆い小さきものである。

 とても繊細で、触れると痛い。生きているとはそれを感じて進む行為であり、死とは否定されて散っていく行為。

 死んで終わりなんて、嫌なんだろう? 散っておしまいなんて、最悪だろう?

 ならば、ゆけ。

 失敗など塗り替えろ。

 前を向いて進んでみろ。


 そうだ、バットエンドなど壊してしまえ。



 悲しい未来など存在させていけないんだよ?


 では、次回お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ