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呪詛

 (ああ死んだ。


 死んだ。


 殺された。


 我が僕。


 我が愛しき漆黒の巨人・・・・・・)



 ソレは慟哭した。


 無様に泣き叫び、拳を握り締めて地面を思い切り殴りつける。


 戦闘種では無いそれの拳は柔らかく、硬い地面に叩きつけられたその拳は傷を負い、多くの血が流れた。


 激しい痛みが拳を襲う。


 しかし痛みがなんだというのか?


 ソレの僕、愛しき漆黒の巨人が受けた痛みに比べたらこんな痛みなど無いようなモノだ。そして再び拳は振り下ろされる。


 傷を負いながら


 血を流しながら


 何度でも


 何度でも


 地を殴りつける

 






 憎い・・・・・・

 憎い







 憎い憎いにくいニクイニクイニクイニクイ憎憎憎ニクイ憎い憎い憎い!!



 激しい憎悪に身体が支配され、もはや憎しみという感情が何なのかという事すらわからなくなるほど目の前が真っ白になった。


 怒りのままに地面を叩き続けた右拳はぐしゃぐしゃに潰れており、もう使い物にならないだろう。


 ソレは人間には理解できぬ言葉で呪詛を吐き出す。


 悲痛な叫びにも似たその言葉は宙を舞い、やがて物理的な重さを帯びてソレの身体に纏わり付く。




『敵を殺したいのですか?』




 声が聞こえる。


 ソレは視線をあげて声の持ち主を視認した。


 目の前にはいつの間にか薄く発光している髪の長い人間の女が立っていた。


 不思議なことに目の前の人物に向けて敵対心は微塵も沸いてこない。その女は閉じていた瞼をゆっくりと開く。


 開かれた瞳から発せられるのは七色の光。それは一瞬として同じ色を見せず、次々と色を変えていく。


 彼女の首元には歪な形をしたアミュレットが大事そうにぶら下げられていたのだ。





『己を犠牲にしてでも敵を殺したいのなら・・・私が力になれるかもしれません』




 その女は優しげに微笑んだ。


 その問いに関する答えなど決まっている。


 ソレは深々と女の前に平服して力を請うた。


 殺すのだ。


 憎い敵を。


 あの

 白狼を



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