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現代イージス艦〈みらい〉、星海戦争へ ― AIと艦長が未来を変える物語  作者: ねこあし
第2章 帝国接触編―異世界国家と鋼鉄の軍艦

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第19話 “白き因果”の声 ― 星海の最奥で響くもの

 揺らぎ核の防壁内へ侵入した〈みらい〉は、静寂に包まれていた。


 外の星海では影の軍勢が暴れ狂っていたにも関わらず、この領域だけは“神殿の中”のように静かだった。


 光が満ち、ゆっくりと脈動している。


 その光が呼吸しているようにも見える。


「……揺らぎ核の“中心層”か」


 遼は低く呟いた。


「はい、艦長。この領域は時間の“流れ方”が他と違います。……いえ、そもそも“時間”が明確に定義されていません」


 ユイの声が、わずかに震えていた。


 それは恐怖ではない。


 未知の構造物を前にした、純粋な畏れだ。


「つまり……ここは未来と過去の“境目”ってわけ?」


 レイリアが窓越しに光の海を見ながら言う。


「境目……というより、“混ざっている場所”だと思います」


 ユイは分析パネルに指を走らせた。


「未来潮流を修復するための源。星海そのものが、この中心で“未来を選び続けている”……そんな感じです」


「つまり、ここが――星海の心臓」


 遼がまとめる。


「はい、艦長。まさにその表現が正しいです」


 視界いっぱいに広がる光が、ゆっくりと螺旋を描き始めた。


 その中心――“何か”が生まれようとしていた。


「艦長……前方にエネルギー反応。これは……影とは違う、“白い位相”です!」


 ユイの声の直後。


 光が集まり、ひとつの“輪郭”を形作った。


 それは人に似ていた。


 しかし人ではなかった。


 透明な白髪、星の粒子を宿す瞳。


 身体の輪郭は光の膜で構成され、存在しているのか、していないのか判別できない。


 “白い意識体”。


「……な、何これ……人?」


 レイリアが息を呑む。


 その存在がゆっくりと口を開いた。


『――橘艦長』


 遼の名を呼ぶ声は、まるで空間そのものが語りかけてくるようだった。


「……俺を知ってるのか」


『あなたの“未来選択”は星海に届いています。揺らぎ核は、あなたを“認識”しています』


「認識……?」


『あなたは多くの未来の中から、“犠牲を拒んだ世界”を選び続けた。その一貫した意志が、潮流の形を変え、揺らぎ核に届いたのです』


 声は穏やかで、優しかった。


 しかし奥には、底知れぬ深さがあった。


「あなたは……誰なんだ?」


 遼は一歩前に出る。


 白い存在は、微かに微笑んだ。


『わたしは“白因果(ホワイト・コーズ)”。星海の未来潮流を安定させるための“意思体”。揺らぎ核が長い時の中で育んだ、“未来そのものの声”です』


「未来……?」


 レイリアが息を呑む。


「揺らぎ核が……意思を持っている?」


 ユイが驚愕を隠せない声で言う。


『はい、ユイ。未来はただの“結果”ではありません。宇宙が選び、世界が紡ぎ、人々が繋ぐ“可能性の集合体”です』


 その瞳が遼へ向いた。


『橘艦長――あなたの意志は、その集合体を大きく揺らしました』


「…………」


『“誰も犠牲にしない未来”。それは理想であり、時に世界の理から外れる選択です。しかしあなたは揺らがなかった。

星海はその選択を、未来の新しい“潮流構造”として認識したのです』


 遼は胸の奥が熱くなるのを感じた。


 自分の選んだ未来が――この光の海に届いていた。


「……光栄だな」


 遼が静かに言うと、


『はい。あなたの選択は、星海に“希望の位相”を生みました。だからあなたをここに迎えたのです』


 白因果はゆっくりと手を伸ばし、揺らぎ核の中心を指した。


『しかし――希望があるところには、必ず“影”が生まれる』


 白因果の表情がわずかに曇る。


『時間喰らいは、あなたの選択を“排除すべき可能性”と判断し、急速に勢力を広げています。あなたが拒んだ未来――“犠牲を前提とする世界”こそが、影にとって最適な潮流だからです』


 ユイが息を飲んだ。


「艦長……やっぱり、あなたの選択が影を刺激したんです」


「わかっていたさ」


 遼は迷いなく言う。


「だが、だからこそ止める。未来を喰わせるわけにはいかない」


 白因果はゆっくりと頷く。


『――あなたにお願いがあります、艦長』


 光の粒子が揺れ、白因果の“声”が艦橋に満ちた。


『揺らぎ核の“主制御コア”を、影の侵蝕から守ってください。星海の未来を守れるのは――あなたたち〈みらい〉だけです』


 遼は目を閉じ、ゆっくりと息を吸い込んだ。


 迷いはない。


「……任せろ」


 瞳に確かな光を宿して言う。


「〈みらい〉が未来を守る。犠牲は出さない。それが俺の航路だ」


 白因果は静かに微笑んだ。


『その言葉……この星海に刻みましょう。橘艦長――あなたの意志を、わたしたちが支えます』


 その瞬間――空間全体が震えた。


 揺らぎ核の外側から、巨大な“影波”が直撃したのだ。


「艦長! 影が侵入しようとしています!」


 ユイの声が鋭くなる。


 白因果が光を放ち、外へ向けて展開する。


『急ぎましょう。影は揺らぎ核の内側にも侵入し始めています』


 遼は振り返り、二人を見た。


「ユイ、レイリア……行くぞ」


「はい、艦長!」


「もちろんよ!」


〈みらい〉は揺らぎ核の中心へ――未来の“心臓部”を守るため、さらに深く進んでいく。

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