心配いらねーよ
「なぁ、お前、大丈夫なの?」
同じ高校の友達にそう言われ、陽は首を傾げた。
「何が?」
友達は少し遠慮がちに笑う。
「いや……バンド入ったって言ってただろ?」
「……あぁ」
理解したように陽は曖昧に頷く。
……またか。
内心、そう思ってしまう。
陽はどのバンドにも所属していなかった。
頼まれればどこにでも助っ人には行く。
でも、あくまで臨時。
メンバーになるということはなかった。
それが、ついに先日加入することを決めた。
「まだ名前もないんだろ?」
「まぁ、そうだけど」
少しもやもやする言い方。
たぶん、言いたいのは……。
「奏のことか?」
陽はサクッと聞き返す。
友達は一瞬、ギクッとした顔をする。
「……いや、そういう訳じゃ……」
慌てたように一応否定はする。
でもすぐに。
「……あんまいい噂聞かないだろ?」
陽は顔をしかめた。
「噂だろ」
「でもさ、この前まで喧嘩ばっかしてたやつだろ?」
「……今はやめたみたいだぞ」
「でも、無愛想で怖くね?」
陽は友達の目を見た。
緊張が走る。
友達の息が止まる。
ふっと顔を緩ませて、陽は笑った。
「あいつ、ただ不器用なだけの悪ガキだぞ」
「……え?」
間の抜けた顔が陽を見た。
「だからさ、あいつ、素直じゃねぇだけなんだって」
「……へ、へぇ〜……」
陽はおかしそうに笑った。
「この前もさ、寝坊して遅刻したらしくて、朔にめっちゃ怒られてたし」
「お、怒られるんだ……」
「朔はがっつり怒るなー」
思い出しながら、陽が笑う。
「その先輩も怖くないか?なんか近寄りがたいっていうか」
「え?」
きょとんとする陽。
「朔?」
少し考える。
確かに、朔には陽もたまに怒られる。
でも、それはちゃんと正当性のある理由だ。
奏が怒られるのも、同じ理由だ。
「朔は理不尽なことでは、怒んないからなぁ」
「そうなんだ……」
「まぁ、たまに別の意味で怖いけど」
ポロっとこぼす陽に友達は顔を引き攣らせた。
「え、それって……」
陽は笑って返す。
「いや、変な意味じゃなくてさ、なんでも見透かされてる感じ」
「へぇ……」
友達は笑顔で陽を見た。
「……お前、なんか楽しそうだな」
「えっ」
陽は驚いたように友達を見返した。
それから、笑顔で答える。
「あぁ、今めっちゃ楽しいな!」
その楽しさがこの先も続くことを陽は信じていた。




