次の夜へ
凪の指先が軽く弦を弾く。
短い音が鳴って、すぐに消えた。
チューニングを終え、凪はギターを渡す。
そこへ朔が近づいてくる。
「凪、今日は煽るなよ?」
椅子に座ったまま朔を見上げた凪はにこっと笑った。
返事をしない凪を見下ろして、朔は眉間にシワを寄せた。
「凪?」
「まぁ、楽しけりゃいいじゃん?」
ソファに座った陽が口を挟んでくる。
朔は陽を見て、更に表情を険しくする。
「お前……」
「……予定調和通りのライブなんて、つまんねぇって」
脚を組んで水を飲みながら、奏が鼻で笑う。
朔は大きく溜め息をついた。
「……お前らの暴走はそれを超えてるんだ……」
三人の視線が朔に集中する。
「朔は気にしすぎじゃない?」
凪が軽く言う。
「お前らが気にしなさすぎなんだ」
一瞬だけ、静かになる。
立ち上がった陽が朔の背中をばんばん叩く。
「朔も楽しもうぜっ!!なっ!!」
陽のテンションはもう高い。
凪はくすっと笑う。
「楽しい方がいいよ?」
「だろ?」
奏もふっと笑う。
朔は少しだけ表情を緩める。
「……ほどほどにな」
「そろそろスタンバイお願いしまーす!!」
そこへスタッフの声が飛んでくる。
四人は扉の方へ視線を向ける。
奏が立ち上がる。
「じゃ、今日も暴れてくっか」
「おっしゃー!いくぜぇっ!!」
陽が両手をあげる。
凪も静かに立ち上がった。
「……だから、暴れるなと言ってるだろ」
溜め息をつきながら呟いた朔の顔は、先ほどとは違い柔らかかった。
会場のほうから、歓声が聞こえてくる。
――今日も夜が始まる




