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宵闇に奏でる―NOCTIS STORY  作者: 夜月黎


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NOCTIS人気投票① ― 一緒に飯行きたい部門/ギャップがすごい部門 ―

「こんにちはNOCTISです」


そんなセリフで始まったのは、『NOCTIS – Night Archive』――NOCTISの公式動画チャンネルだ。


こういう時の進行役はだいたい朔だ。

……他の三人では、進まなくなってしまうからだ。


「今日は、ノクティアの皆さんに投票してもらった『NOCTIS人気投票』の発表を行います」


朔がそう言うと、他三人はぱらぱらと拍手をする。


「各部門にたくさんの投票いただいて、ありがとうございました」


凪がお辞儀をしながら言うと、陽は一歩前に出て手をあげた。


「早速発表、行ってみようっ!!」


早くも賑やかな陽に、朔の鋭い視線が刺さる。

しかし、そんなことに気づきはしなかった。

スタッフから資料を受け取る。


「まずはっ!」


テンション高く読み上げる。


「一緒に飯行きたい部門!」


凪が陽の持っている資料を覗き込む。


「一緒にご飯なんて、行きたいの?」


「凪」


即、朔に窘められる。

凪は笑って誤魔化す。


「……ファンからしたら、行ってみたいんじゃないの?」


黙っていた奏がようやく口を開く。


「俺の本領発揮だぜっ!!」


「陽、うるさい」


大声で叫ぶ陽に、速攻で一喝する奏。

溜め息をつきながら、朔は陽から資料を奪い取る。


「それでは、まずはコメントから発表します」


紙を一枚めくり、読み始める。


「まず、奏」


視線が奏に集中する。

居心地悪そうに奏は顔を横に向ける。


『奏がいい。一緒にご飯行けるだけで幸せ』


『奏に一票!あの顔見てるだけでご飯がうまい』


『奏はお高いステーキとか、奢ってくれる気がする』


「……何だよ、最後の」


奏は不機嫌そうに資料を覗き込む。


陽は大笑いして、凪はくすくす笑っている。


「確かに、奏はいいものばっかり食べてるね」


朔は真面目な顔で次を読み上げる。


「次、凪」


名前を呼ばれて、凪は姿勢をただす。


『絶対に凪!私が食べさせてあげたい』


『凪が食べてるところなら、一生見ていられる』


『凪ってご飯、食べるの?』


「凪、ご飯食べるのって……それ、投票なのっ!?」


陽がまたも大笑いしている。


「俺だって、人間だよ?」


首を傾げて、凪が答える。


「お前は、少食だからな」


朔が溜め息混じりにそう言って凪を見る。


「でも食べるよ」


心外そうに凪は反論している。


「わかった、わかった」


そう言ってなだめるのは、奏だ。


「じゃあ、次は陽」


陽は待ってましたとばかりに、笑顔で朔を見る。


『陽と行ったら、めちゃくちゃ楽しそう!!』


『陽なら美味しいお店いっぱい知ってそう』


『陽。たくさん食べるの見るのが好き』


陽は嬉しそうに聞いている。


「陽とメシ行ったら、うるせぇだけだけどな」


奏が鼻で笑いながら陽を見る。


「うるさくないっ」


陽は即反論。


「うるさいよ?」


凪は奏に賛成。


「うるさい」


続いて朔も同意する。


陽は笑顔のまま固まって、そのままうなだれてしまった。


「最後、俺、朔」


『朔とご飯行けたら、めちゃくちゃ健康になりそう』


『朔。ダイエットになりそう』


『朔の胃薬飲むとこが見たい』



………………。


沈黙。


奏が眉をひそめる。


「なんだそりゃ?」


「朔はご飯行かなくても、胃薬飲んでるよね」


凪は不思議そうに答える。


奏と陽は思わず凪を見つめ、朔は額を抑え目を閉じた。


「……ということで」


進行を再開した朔が声をあげる。


「一緒にご飯行きたいメンバー一位は……陽でした」


瞬間、陽は両手をあげて大喜び。


「やったー!!」


「二位は朔、三位凪、四位は奏という結果でした」


朔が続けて発表する。


「奏最下位〜っ?」


陽が茶化すように言うと、奏は陽を鋭い目つきで睨んだ。

ビクッとした陽は少しだけ、大人しくなった。


……朔は、すでに胃薬を飲みたい気持ちになっていた。



「では、次行きます」


朔のひと声で、三人が姿勢をただす。

わちゃわちゃしていた位置から、ちゃんとカメラに向かって向き直る。


「次は、ギャップがすごい部門」


また、申し訳程度の拍手。


「早速、奏から」


『普段、クールなのに笑うと可愛い』


『ぶっきらぼうなのに、ステージだと煽りスキルMAX』


『ヤンチャそうなのに、色っぽい』


奏は恥ずかしそうに無言で顔をそむけた。


「あぁー、煽りスキルは高いな……」


何を思い出したのか、陽がぼそりと言う。


「そう?」


凪が不思議そうに聞き返す。


……お前が一番被害にあってんだろっ、と言おうとして、陽は口をつぐんだ。

しかし……。


「それが奏でしょ?」


凪のその一言ですべて吹き飛んだ。


奏は両手で頭を抱えて絶句してしまった。


朔は今すぐカメラの電源を落としてやりたい衝動に駆られたが、理性で我慢した。

そして、ひとつ咳ばらいをして切り替える。


「次、凪」


『天使みたいなのに、口を開けば天然』


『見た目が麗しいくらいなのに、ギターを弾いてる時はカッコイイ』


『お酒弱そうなのに、一番強い』


凪は一瞬間を置いてから、首を傾げる。


「……天然?」


って、何?とでも言うように。


他三人は、ぽかんとして凪を見つめてしまった。


「俺のどこが天然?」


何を言ってるのかわからないというような顔で凪は問いかける。


思わず吹き出しそうになった奏は、口元を抑えて答える。


「そう言うところだよ」


奏に言われてもまだ、不思議そうに眉をしかめる。


「なぁっ、酒、酒強いよな、凪」


話題を変えようと陽が前に出る。


「うん、お酒は好き」


笑顔で答える凪。


「食べ物より、好きかも」


そう言うところも、天然なんだよ、とその場にいる全員が思ったが、誰も口にはしなかった。


「……では、次、陽」


『普段あんなにチャラいのに、ドラム叩かせたら天才』


『一番楽器下手そうなのに、一番楽器上手い』


『普段と演奏中は別の人説』



「……ねぇ、これ、俺、褒められてんの?」


陽の動きがピタッと止まる。


返るのは無言。


「え?」


陽はオロオロしている。


「……オロオロするな、みっともない」


朔がつい口を出す。


「ドラムが上手いって言われてるんだから、満足しろ」


ピシャリと朔に言われて、陽はしゅんとしてしまった。


「……嫌な予感しかしないが……次、朔」


自分で前置きをしてから、朔は読み上げる。


『一番理性的で冷静なのに、一番苦労人』


『クールなのに常備薬が胃薬』


『冷たそうなのに世話焼き』


ぶふっと吹き出したのは、陽だ。


ギロッと朔の目が光る。

慌てて陽は、口を抑える。


「朔ってクールに見えるんだね」


凪が笑顔で突っ込む。

にこにこした凪に悪気はない。


「朔はNOCTISのお母さんだよね」


その言葉に奏も肩を震わせて笑っている。

朔の視線が、奏にも向けられる。

顔を背けた奏は必死に笑いを堪えている。


「で、結果は……一位、凪」


「え?」


凪は目を見開いて声を出した。

理解出来ていない顔だ。


奏と陽は無言で頷いて、笑っている。


「なんで俺一位?」


凪のぽかんとした顔が、三人を振り返る。


「凪の一言はいつも致命傷」


一言、陽。


「無自覚で人刺してくるからな」


奏も同意。


「自覚しろ」


朔までも。


凪は納得いかないように何度も首を傾げていた。


「二位は陽、三位朔、四位奏」


淡々と結果を読み上げる。


陽が奏を振り返る。


「奏、また最下位ー?」


からかうような言い方に、奏は少しだけカチンとした表情をした。


「俺はギャップなんてねぇからな。普段から変わらない」


「いや、自覚ないだけで十分ギャップあるだろ」


陽が突っ込む。


「奏、ステージ上だと別人みたいに生き生きしてるよ?」


凪の追撃。


「お前も自覚しろ」


最後に朔。


「陽ほどじゃねぇよ」


「俺は普段からカッコいいだろっ?」


争いが起きそうなのを察知した朔は、二人の間に割って入った。


「……ということで、一旦休憩です」


カメラの電源が落ちる。





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