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宵闇に奏でる―NOCTIS STORY  作者: 夜月黎


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只今、打ち合わせ中

あるファミレスの隅の席。

四人が揃って座っていた。


今日は、ライブの簡単な打ち合わせ。


資料を広げた朔が三人に説明している。


そわそわしながら、落ち着きなく聞いている陽。

コーヒーを口にしながら、怠そうに見ている奏。

背筋を伸ばして、真剣に聞いている凪。


一通り説明が終わると、待ち切れないように陽が手をあげた。


「はいはーい!」


朔は鋭い目で陽を見る。


「なんだ?」


質問かと思い聞き返す朔に陽は悪びれもせずに言った。


「そろそろご飯っ!!メシ頼もうぜ!」


朔はがくーっと肩を落とす。

盛大な溜め息と共に。


「お前は……学生の頃から成長しないな」


「ゔっ」


朔の一言が陽には致命傷だったらしい。

そのまま黙ってしまった。


くすくす笑う凪は、メニューを差し出しながら助け舟を出す。


「そろそろお昼だし、注文もしないとダメじゃない?」


ふぅーっと息を吐いて、仕方ないな、と朔もメニューを手に取る。



しばらくして。


頼んだ物が届く。


朔の前には、焼き魚を主品とした和食膳。

陽の前には、大盛りのご飯付きのハンバーグと唐揚げ。

奏の前には、ファミレスにしてはちょっと高めの国産牛ステーキ丼。

そして、凪の前には、鶏肉ののったサラダと、いちごのパフェ。


「…………」


全員の目が凪に向く。


「なぁ、凪」


最初に声をかけたのは陽だった。


「ん?」


「それで、足りんの?」


にこっと笑って凪は頷く。


しかも、凪はパフェから食べ始める。


「なぁ、朔?」


今度は陽は朔を見る。

朔は無言で手を合わせ、


「いただきます」


と言っていた。

陽の言葉を聞く気はなさそうだ。


最後に奏を見る陽。


奏も早々にステーキ丼を食べていた。

陽の視線に気づいた奏は、ふっと鼻で笑って言った。


「まぁ、凪だし?そんなもんだろ」


「……んー?まぁ、そっか……」


陽は納得いかないように首を傾げたが、無理矢理自分を納得させたようだった。

目の前の食事に目を向けた陽の意識は、あっという間にそちらに移っている。



しばらくは、食器の音だけがテーブルに響いていた。


ハンバーグも唐揚げもペロッと食べ終えた陽は、デザートを頼もうか悩みながら、再び凪を見た。


「凪、ホントにそれで、足りてるの?」


パフェを食べ終え、サラダをちまちま食べている凪は、陽を見て同じく微笑み返した。


「足りてる」


食後のコーヒーを飲んでいた朔の目が光った。

凪の細い体を見ている。


「凪」


朔の声に凪は振り向いた。


「お前は少し痩せすぎだ」


朔の指摘に凪は少しだけ首を傾げて、自分の体を見た。


「そう?」


溜め息をつきながら、朔は凪を見た。


「お前は自覚が薄いからな」


凪は曖昧に笑った。


その時、ずっと黙っていた奏が口を開いた。


「まぁ、それが凪なんじゃね?」


それが、すべてだった。


朔はまだ口元でぶつくさ言ってはいた。


「それにさ」


奏が続ける。


「ブクブク太った凪、想像してみろよ?俺はライブ中、爆笑するぞ?」


陽は朔と目を合わせ、一瞬ぽかんとする。

それから、奏の言うように少しだけ、想像してみる。


朔は無言で黙り込み、陽はぶんぶんと首を横に振った。


「それは、俺も爆笑しちゃうかもっ」


それを見ていた凪は、笑顔を陽に向けた。


「陽は、食べすぎなんじゃない?」


にこにこ。


「陽こそ、太るよ?」


陽の表情が凍りついた。

うなだれた陽は、手をいじりながら、ぶつくさ言っている。


「……でも、俺、まだ若いし……」


「うん、でも俺の方が若いから」


それにすら、追撃する凪。


陽の顔は真っ白だ。


それを見ていた奏は、呆れたように微笑った。


「……今日も凪が最強だな」






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