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Newライフ

六畳間の部屋に置かれたベッドに寝転がってしばらく経つ。


まだ実家から届いていない荷物は多く、最低限持ってきたものは衣服や生活用品、そして暇潰し用のノートパソコンや携帯ゲーム機、入るだけ詰め込んできたライトノベルや漫画。


それだけの荷物を片付け俺は絶賛精神的にも身体的にも疲れた体を休めていた。

だが、それがもう2時間ともなると逆に暇を持て余す。


体を起こしベッドに座り改めて部屋の中を見回す。

俺の部屋に宛てがわれたのは今年の春に遠方の大学に行ったという初花さんの息子の部屋だ。

家具もそのままにしていて丁度いいからと、この部屋になったのだ。

また居候させてもらう身でこんな立派な部屋を与えられるなんて思っても見なかったから凄く驚きはしたが。


「...あー...」

暇だ。もうどうしようも無く。

初花さんは『今日は晩御飯は豪勢にしないとね!』と言って買い物に行ってしまった。

この際、居候させてもらう身でそこまでさせる訳にはいかないと思い、『...いっ...!...いえ!...い、いいです!』と精一杯言葉を詰まらせながらも遠慮したのだがどうやらあまり聞き取れなかったらしく初花さんはそのままニコニコしながら出て行った。

やはり俺のコミュ障脱却日はまだまだ遠い。


ちらりと窓から外を見るともう太陽がだいぶ陰ってきている。

せっかくだし、どうせ知り合いもいないし外に出てみようか。

ふとそう思い、立ち上がって扉に近づきドアノブを掴む。


するとその瞬間心臓がドクンと跳ねた。

「...っ!」

扉に手を付きながらもう片方の手で暴れる心臓を抑え深呼吸を繰り返す。

知り合いはいないということは分かっているがそれでも部屋の外に出るということに抵抗を感じる。


だが、なんとか落ち着きを取り戻して部屋の外に出た。

今家にいるのは俺一人だからかとても静かで聞こえてくるのは外で鳴き続けるセミの声くらい。

階段を降りて玄関に向かい、今朝実家を出る際に卸したばかりの新品のスニーカーにぎこちなく足を通す。慣れない靴紐結びに時間を取られながらもなんとか結び終え、玄関の扉をゆっくりと開けた。


なんだかんだで今日から始まる新生活。

ここでは俺のことを誰も知らない。


経緯はともかくこれまでとは違う暮らしに少なからずワクワクしているのは確かで。

「よし!」

新たな生活に期待に胸を膨らませながら俺は新しい一歩を踏み出しーーー


「うわぁーーー!!どいてどいてぇーーー!!」


「...ぐはっ!」

扉を開けた瞬間突如現れた柔らかい生物にタックルされそのまま玄関に押し倒される。

「ごめんなさい!大丈夫!?...って...」

視界がぼやける俺の目に倒れたままの俺に馬乗りになっている少女の姿が目に入る。


ヘアピンで止められた艶やかな長い黒髪、きめ細かい肌、パッチリ開いた大きな目に長いまつ毛。

ーーーそう、まるでオレが普段から見ているアニメや漫画から飛び出して来たような文句なしの美少女。


「...誰...?」


そうこれはーーー


「夢...だよなぁ...」

そこで俺の意識は途切れた。

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