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始まりの冬  作者: Karyu
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69−現国教師の叱責とチョーク



びゅん!


 空気を裂く音とともに一本の電子用チョークが一直線に投げられた。


 それを先方の流騎くんが右に避けて、続いて秀明くんと静香ちゃんもさらりとかわし、私と綾夏も屈んで回避したチョークはそのまま紅葉ちゃんのおでこに直撃した。


「ぁたっ! う、ううぅぅぅ……」


 紅葉ちゃんはその場でしゃがみこんでおでこを抑えながら呻き声をあげている。


「なぁ先生、転校生初日にチョークはきついんじゃねぇか?」


 秀明くんは体制を元に戻して、今授業を行っている男性教師を睨んだ。ちょっと、怖いけど。


「お前達が全員揃って遅刻してくるだからだろうがっ! まったく、俺の授業をなんだとおもってやがる!!」


 謝る気さらさらなしの現国教師の坂本は、眉間を寄せながら激昂していた。仕舞いには教材を持っていないほうの腕を振り回しながら。


「ですが先生、校則によりますと生徒への無差別の暴力は厳禁とされていますが?」


 静香ちゃんがすかさず秀明くんのフォローに入る。この二人って、今日改めて見て知ったけど、息あってるな〜。


 私とシコン様も阿吽の呼吸みたいなのやってみたい、と自分の世界に入りかけていると坂本がまたも声を荒げながら怒鳴っていた。


「無差別ではない。お前達全員が遅刻してきたんだ。誰に当たっても無差別じゃないだろ!」


 一呼吸置いて、今度はクラス委員長の綾夏が続いた。


「ですけど先生、校則にはこうも書かれています。転校初日の生徒、及び教師には専属の世話係が最低3日は就く。その際、他生徒・教師による障害、及び危害が加えられることはならない。それにこれは他生徒・教師にも同様であり、校区内でも暴力・職権乱用は認められない。と」


「ぐっ……」


 あっちゃー、さすがに二人のクラス委員長と副委員長に指摘されたら何も言い返せないだろうなー。


 坂本だってここの一教師だけど、理事長の甥ってだけで入れてもらっただけだから、昔から問題沙汰も多かったし。


 来週辺りには坂本はお仕舞いかな。こんなに有名人の卵を集めてる学校だもん、教師管理はPTAや親によって監視されてるようなもんだしね〜。


 お疲れ様でした。さようなら。


「ええい、さっさと席に座れ」


「わかりました。青海さん、大丈夫ですか?」


 静香ちゃんがすかさず紅葉ちゃんの所へと戻って介抱していた。


 他の面子は各々自分の席へと戻り、私も紅葉ちゃんのことは静香ちゃんに託して席に着いた。


「まったく、俺の……」


 黒板に振り返りながら新しい電子用チョークを取り出して、坂本はぶつぶつと小声で喋っていた。


 あ、ちなみにここの高校は最新設備満載で、黒板もしくはホワイトボード(どっちを使うかは教師側のポリシー)で、すべてが電子式なので昔流行ったDSのタッチペン式なのだ。


 それで黒板、あるいはホワイトボード(以下黒板)に書かれた文字はそのまま私たちの机に取り付けられたPCへと写される。


 これにより、ノートを取ることなく先生の授業を保存することができる。そして、同時に音声も記録できるため、授業の内容も聞き返すことができるのだ。


 技術はすごい、そしてそれを扱える私もすごい。そう言い聞かせながら、私は自分のPCに浮かび上がってくる現国のテスト内容を眺めながら頭へと答えをインプットしていく。


 余談だけど、私は、現国は得意中の得意なんだよね。なぜかはわからないけど、今までの傾向上そうみたいなのだ。でも他の教科は平均並みだけど……。


 まあ、そんなこんなで淡々と簡単な問題を解き続いていってあっという間に放課後になった。


 皆がぞろぞろ退室して帰路につくなか、私たちチルドレンメンバーの六人は各々の机に座っていた。


 私はもう誰も人の気配を察知しなくなってから口を開いた。


「で、どうする〜? カラオケ行っちゃう?」


 青海ちゃんがはっと顔を上げて、何か物言いたそうな表情を浮かべていたけど、咄嗟に顔を伏せた。


「紅葉ちゃん、何か言いたそうだね〜」


「い、いえ! 私にそんな大それたことなんて!」


 紅葉ちゃんは両手を腕いっぱい振り上げ下げながら、必死に私の言葉に抵抗した。


「なにか言いたいんでしょ?」


 私はもう一回同じ質問を尋ねる。


「いいえ! あ、ありません、西園寺さん!」


 今度は両手の腕を前に掲げながら横に振った。私はちょっとトーンを低くして、目を細めた。


「言いたいことがあるんだよね?」


 紅葉ちゃんの瞳が一瞬硬直して、行動を停止させた。


「は、はい……。あります」


 小刻みに震えながら紅葉ちゃんは私にこくっ、と頷いてくれた。


「言ってごらん」


「は、はい。えっと、そのですね、皆様にお時間がありましたら、私はもっと皆さんのことが知りたくてその、カラオケでなく、他の場所へと……」


「お、いいなそれ。俺は紅葉さんに一票入れたぜ」


 満足そうな笑みを浮かべながら秀明くんは頷いて、紅葉ちゃんを見た。秀明くんは歌いたくないのかな?


 自分の意見に賛同してくれた者が現れたことによって、安堵感と期待感を膨らませた紅葉ちゃんは、俯いていた顔を上げて笑みをつくった。


「では、今から参りますか? 時間もあることですし」


 いつも通り、てきぱきと静香ちゃんが告げて、私も


「いいねー、じゃ、そうしよっかー。紅葉ちゃん、ナイス!」


 私はVサインを紅葉ちゃんに向けて、紅葉ちゃんは驚いたように、でも弱弱しくもVサインを返してくれた。


「じゃ、皆ちょっと待ってて。もうすぐ終わるから」


 綾夏はクラス委員長としての雑務を終えながら仕事をしていて、それを流騎も手伝っていた。


「でも、じゃあ、どこ行くんだ?」


 流騎くんが私たちに背を向けながら教材器具をしまいこみ、聞いてきた。


 うーん、と私たちが目を伏せて腕を組みながら考えていると紅葉ちゃんがある提案をしてきた。


「私の家でどうでしょうか?」


「紅葉ちゃんの家?」


 私は聞き返した。


「はい、そ、そんなに大きいとは言えませんが、皆さんがくつろげる位の間取りはあるとおもいますから……。どうですか?」


 ほかの誰かがその返答をするより先に、静香ちゃんは冷静に紅葉ちゃんに問うた。


「よろしいのですか?」


「は、はい! 是非!」 


 紅葉ちゃんは両目をきらきら輝かせながら、静香ちゃんのことを見上げていた。というよりも崇めてる? そんな雰囲気なんだけど……。


「皆さんはどうですか?」


「紅葉の家か、興味はあるな」


「俺も紅葉さんの家行ってみたいしな」


「うん、青海ちゃんのお家見てみたい」


 私も綾夏に続いて、


「うん、紅葉ちゃん家にお邪魔になろっかなー」


「はい、是非いらしてください!」


 紅葉ちゃんは力強く嬉しそうに頷いた。ホント、かわいいんだから、紅葉ちゃんは〜。



五日ぶりですね……ちょっとペースを上げたいと思いつつもやっぱりちょっと時間がなかったりします。

でも皆様が待っててくれるとうれしいです。

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