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始まりの冬  作者: Karyu
42/82

41−動き出す世界(1)



混沌の渦の中へと彷徨う人間よ、


来るときは終焉。


そこに待つものは死なる支配。


そして我が身による蘇生。


さあ、足掻けよ人間。


我に見せよその苦悶に満ちた貌を。


我らの名はオリジナル。


お前達の最期を監視するモノなり。




 ここは鳥取ルネサンス本部の地下、それも誰もが立ち入ることの無い深部に二人の男がいた。


 一人はトウキ、そしてもう一人がカゲフミである。


「カゲフミの親父よ、どうするんだこれから?」


「ああ、そろそろ機は熟したな。我々も動くとするか」


「お、いよいよこの地球を乗っ取るってか?」


「ああ、その通りだ」


「こりゃまた大掛かりなことになりそうだな」


「ふっ、お前も言うようになってきたか」


「もう驚きはしないさ。俺も段々とわかってきたからな」


「そうか。なら早速始めるとしよう」


「それで最初のターゲットは?」


「もちろん、アメリカだ」


 カゲフミの声が闇のなかで響き、消えた。




 一人の少年は走っていた。


 時間は夜中、裏の世界が活発に行動を始める時間帯に一人の少年は走っていた。


 その額には尋常なる汗。


 瞳孔は定まらず、思考が錯乱しているかのように走りにも一貫性がない。


 おぼつかない足取りで必死に走るその様はなにかから逃れるかのようである。


 その少年の名は木城(きじょう)(みこと)、高校に通う普通の少年である。普通の少年である、はずだった。


 尊はチルドレンでもなくオリジナルでもない一般人ではあるが今後、この少年が日本を、世界を動かす起因を作り出す人物であるということに本人も世界もまだ知る由はない。


 尊は路地で小さな窪みに躓き、こけた。


 尊の右手には携帯が握られ必死に110番に通報しようとしたが指が振るえ、視界が恐怖により溢れ出る涙のせいで普段できる些細な行動もできずにいた。


 尊はしかしそれでも自分の背後から迫り来るその恐怖から逃れようと、地べたを這ってでも前進した。


 しかし尊の願い虚しくその恐怖はやってきた。


「ひっ……!!」


 尊が背後を振り返るとそこには蟻のような生き物が存在していた。


 ただの蟻ならば恐怖することも無いのだが尊が直視している蟻は全長六メートル高さが二メートルもある巨大蟻であったのだ。


 しかしその蟻らしき生物は触手が二つではなく六つ存在し、足も十本、胴体はカブトムシかクワガタムシのような甲殻を有していた。


 尊は必死にまた携帯を目の前に掲げダイヤルを押そうとしたが叶わず、巨大なその生物、否、怪物は尊にゆっくりと迫っていった。


「く、くそっ……!!」


 蟻の怪物はその巨大な顎から昆虫の体液らしからぬ唾液を滴らせ尊に狙いを定めていた。


 尊が死を覚悟し、目を思いっきり閉じたとき、


グサッ!!


 自分の体がその怪物の顎により噛まれたと思ったが体には何も異変はなく、恐る恐る目を開けてみた。


 するとそこには紫色の体液を撒き散らしながら倒れ、悶える巨大蟻の姿とその怪物と尊の間に立つ長身の男の姿があった。


「大丈夫か、坊主?」


「あ、は、はい……」


「もうちっと辛抱してな」


「え?」


 長身の男は言うだけ言いながら片手に持った日本刀のようなものを掲げながら、


「紫蝋殺風檻斬!!」


 と叫び、目にも止まらぬ速さで斬刀が(はし)り、あっという間にその巨大蟻は刻まれ、絶命していた。


 男は尊に振り返りながら片手に提げた日本刀を鞘に納めた。


「侍?」


 尊の口からはそんな言葉が漏れていた。


「侍か。それもいいかもな」


 長身の男は笑いながら尊を見据えていた。


「あ、ありがとうございます。たすけてもらって」


「いいってことさ。それじゃあな坊主」


「あ、な、名前はっ!」


「俺は三鬼嘉」


「お、俺は尊。木城尊っ!」


「尊か、縁があったらまた会おう」


 三鬼嘉はそう言い残し現れたときのように闇に消えた。





お、俺の名前は木城尊だ。よろしく頼む。

なんか俺は特別な存在っぽいな、それはそれで満足だ。でも、一体なんだったんだあのでかい蟻の化け物は……?

あれも、今ニュースが騒いでる異常気象の一例なのか……それとも…………。

一体、なんなんだ?

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