55 商人は何でも知ってる
久々の更新です……
優太達はダンジョンを後にすると、商人ギルドへと足を運んでいた。
「ルートは居るか?」
「ユウタさん直球過ぎます」
突然やってきた優太とそんな優太にツッコミを入れるレイナ。
そんな二人に気を悪くする様子もなく、受付の女性はにこやかに対応する。
「当ギルドに所属のルート・ルーウェン様は明日の朝に帰ってくる予定です……急ぎのご用でしたら伝言をお預かり致しますが?」
「いや、分かった明日の朝だな……また来る」
受付の女性の提案を断り、優太達は一旦商人ギルドから出ていくのだった。
商人ギルドから出てきた優太はそのまま宿へと向かって歩き出す。
レイナは優太に付いて歩きながら話し掛ける。
「心当たりってルートさんの事だったんですね」
「ああ、色々コネが有りそうだったからな……とにかく今日は疲れたからさっさと休んでしまおう」
優太はそう言うと、少し伸びをしながら宿へと歩いていくのだった。
──────────────────────────
翌朝、優太達は再び商人ギルドへと足を運んでいた。
昨日と同じ受付の女性が優太達に気付くと、にこやかに対応する。
「ルート・ルーウェン様でしたら先程帰ってきた所です。既に商談用の個室にてお待ちしておりますので案内致します」
女性はそう言うと、カウンターから出てきて優太達を案内する。
しばらく歩くと少し装飾のされた扉の前で女性が止まる。
コンコン
「ルーウェン様、ユウタ様がお越しになりました」
「ああ、入ってくれ」
ルートの返事が聞こえると、女性は扉を開けて「失礼致します」と部屋へと入る。
部屋に入ると、ルートが複数の書類に目を通しながら少し険しい顔で唸っていた。
「っと、ありがとうミレイさん……もう業務に戻ってもらって良いですよ」
「はい、お帰りの際はカウンターにお越し下さい……リストの作成に必要なのでお手数をお掛け致します」
ミレイと呼ばれた女性は、そう言うと一礼して部屋から出ていく。
それを見送ると、ルートは書類をテーブルに置いて優太に話し掛ける。
「それで……今回は何の用だ? 出来る事なら協力を惜しま無いが……」
「他の種族達の大陸に渡る方法が知りたい……」
優太の言葉に少しルートの動きが止まる。
そして、再び動き出したルートの表情は少し険しかった。
──────────────────────────
場所は少し変わり、リルティア城では二組の少年少女達の旅立ちの無事を願う式典が開かれていた、
リルティア王国の国王であるジゼル・リルティアは二組各々のリーダーに言葉を掛ける。
「ヒカル殿、決して無理は禁物ですぞ……ご自身と仲間を第一に考えて下され」
「はい!」
「楓殿も無理をせぬように……精神的に……」
「はい……」
晃へは、体を気遣うようにと言葉を掛け。
楓には少し気の毒そうに精神を気遣う言葉を掛ける。
ジゼルの言葉に二人はそれぞれ頷くと、別々のグループに戻っていく。
「それではこれにて式典を終える……明日からの旅立ちに備えて今日はもう休むと良い」
ジゼルの言葉と共に式典に参加していた貴族達と晃達は部屋から退出し、そこにはジゼルとジークだけが残っていた。
「陛下……」
「不安は有る……敵もはっきりと分かっておらぬ……今は救世主様方を信じるしかない」
ジゼルの言葉をジークは静かに聞いている。
「ジークよ……子供達が困っている時は力になってやって欲しい」
「当然! この我にお任せ下され!」
ジゼルの言葉にジークは自身の胸を叩いて頷く。
「もう一つ気掛かりなのはユウタ殿の事だ……」
ジゼルは心配そうに言う。
しかし、ジークはそんなジゼルとは対称的に笑っていた。
「はっはっはっ! ユウタ殿はああ見えて思慮深く、強かですから心配無いですぞ! もしかしたら今頃何かを見つけてるかもしれませんぞ!」
「……だと良いのだがな」
ジークの言葉にジゼルは溜め息をつきながら椅子へと座り込むのだった。
──────────────────────────
場所は戻り。
少し考え込んでルートは、優太へと視線を向ける。
「何か問題が有るのか?」
「まあ、色々とな……」
優太の言葉にルートは溜め息をつく。
そんなルートの態度に優太は気にする事もなく話を続ける。
「全ての種族の大陸に行く必要がある……事情は返事次第では話す」
「ふー、まずは最近の情勢を話しておこうか……まず、現時点で他種族の大陸へと行く船はハガン帝国の港町からしか出ていない」
ルートは少し悩んだ後、優太に最近の国々の事情を説明する。
「なぜハガン帝国からしか船が出ていない?」
「理由は単純だ、各々の大陸への航海のルートをハガン帝国がほぼ抑えてるからだ……」
ルートはそう言うと、更なる問題点を話し掛ける。
「その上、魔族以外の種族は人族を好ましく思ってない……特に獣人族は族長が変わってからかなり露骨になってる」
「じゃあなぜハガン帝国は交易を交わせている?」
優太の言葉に、ルートはため息を付きながら説明する。
「さっき言ったと思うが、獣人族は常に縄張り争いを続けている……族長が交代したのも縄張り争いの影響だ」
「なるほど……武器か」
ルートは頷くと、ハガン帝国についての説明を始める、
「ハガン帝国はかなりの戦争国家だ、今でこそ落ち着いているものの……その名残は色濃く残っている」
「つまり、獣人族はその名残りを帝国から買っている訳か……」
ルートは少し困った様に笑う。
「そう言う事だ……最近は帝国の動きが不穏でな、行くとなるとかなり骨が折れるぞ」
「悪いが行かない選択肢は無い」
優太の言葉にルートは「やれやれ」と頭を掻くと立ち上がりながら優太に一枚の紙を手渡す。
「話は分かった……ほら、紹介状だ。それと、ちょっと俺自身やることが有ってな送ってはやれるが交渉には立ち会えない……」
「ああ、助かる……やること?」
優太の質問にルートは溜め息と共に肩をすくめる。
「この前のムート村の件でな、色々と気になる事があって調べているんだ」
「月明樹を買おうとしていた商人が見つかったのですか?」
レイナの言葉にルートは首を横に振る。
「ギルド総出で探したが見つからなかった……それどころか、あの時に雷魔法を使った奴らの消息も掴めない状態だ」
「そうなんですね……」
レイナはルナの頭を撫でる。
当のルナは首を傾げて、心配そうにレイナを見上げている。
「まあ、それはそれとしてだ……どうする、行くか?」
ルートの言葉に優太は頷く。
「頼む」
「よっしゃ、そうと決まれば早速準備しないとな! お前たちはどうする? 出発は少し先になるだろうから準備するなら済ませとけよ」
優太の言葉にルートが立ち上がる、それに続いて優太達も立ち上がり部屋から出ていく。
「おかえりですか?」
「ああ」
商人ギルドの受け付けまで行くと、案内をしてくれた受付の女性がこちらに気付いた。
優太の言葉に女性は頷くと笑顔で「またのお越しをお待ちしております」と頭を下げ、商人ギルドから出ていく優太達を見送るのだった。
優太達が出ていった後、ルートの居る部屋へと受け付けの女性が入ってくる。
「ノックもしないなんて、珍しいなシェリィ」
「貴方とわたしの関係にノックなんて要らないでしょ?」
ルートにシェリィと呼ばれた女性、シェリィ・エルメスはルートの専属秘書であり、限られた者しか彼女の案内は得られない。
「あの子達が最近、話しに出てくる子達? とても貴方の興味を引くとも思えないけど……」
「なに、少し困った時に助けてくれたから恩返しだよ……」
シェリィの言葉に、ルートは軽く返すがシェリィは溜め息をつき、呆れた様に首を振る。
「昔からの幼馴染みで婚約者のわたしに、隠し事かしら? 貴方がそんな事で動く訳ないじゃない」
「はっはっはっ、隠し事なんて無いさ……ただ、面白い予感がするだけだ商人の感かな?」
ルートが飄々とそう言うと、シェリィは呆れながらも納得したのかそのままルートの隣に座った。
「また、帝国に行くことになった」
「最近、帝国に関して良くない噂を聞くわ……気を付けてね」
シェリィはルートの言葉に心配そうに言葉を返す。
そんな、シェリィを安心させるようにルートはシェリィの手に自分の手を重ねる。
「分かってる……安全第一でやっていくさ……」
「ルート……」
二人は向かい合い、そっと約束の口づけを交わすのだった。
おまけ
『分かってる……安全第一でやっていくさ……』
『ルート』
部下「報告に来たのに入りずらい……」
数分後
部下「……」
さらに数分後
部下「……………ぐすん」
たっぷり数分後
部下「…………………帰ろ……彼女欲しいな」
彼がルートに報告出来たのは翌朝だったそうな
もうそろそろ章が変わる……




