49 気になるあの子のステータスは?
梅雨でもないのに雨が多い。
馬車に乗り込み村へと別れを告げて少しした後、優太達は早速トラブルに合っていた。
「んー? 何やら馬車が立ち往生してるな」
「……本当だな」
ルートが馬車に近付いていくと知り合いだったのか、そのまま声を掛ける。
「おーい誰が居るかと思ったらモンスローじゃないか」
「ん? おお! これはこれは、ルート様お久しぶりでございます」
モンスローと呼ばれた男、シルクハットに燕尾服の恰幅の良い男はルートを見ると少し驚きながらも笑いながら返事を返した。
そして、優太達を見つけると「ほうほう」と眺めて頷く。
「こちらの方々は?」
「ああ、ちょっと前から世話になっている冒険者でな」
「ユウタ・ヤノだ」
「レイナ・ヘンティルです。宜しくお願いします」
「ルナ!」
三人の自己紹介を聞き終えたモンスローは「なんと!」と手を叩いて驚いた仕草を取る。
「それでは、お三方がムート村の危機を救った冒険者達なのですね! いやはや……あっ、私は魔物商しているモンスロー・ローリーと申します……以後お見知り置きを」
モンスローは恭しく自己紹介をすると、優太達に笑ながら言うのだった。
「ついでに、ムート村での事を知っている件は詮索無しで情報は鮮度、調達方法は企業秘密です」
「……ああ、そうか」
モンスローはそれだけ言うと再び停まっている馬車を見ては困った顔をする。
よくよく馬車を見ればどうやら車輪が外れてしまっているようだった。
「車輪が脱輪したのか?」
「ええ、困りました……この馬車には魔物達へのご飯が積んであるのです……」
ルートはチラッと優太を見る。
すると、それに気付いた優太が馬車から降りて車輪を確認する。
「何か催促したようで悪いな……兄ちゃん」
「まあ、大丈夫だ」
申し訳なさそうなルートに優太は何とでも無いように答えると、そのまま壊れた車輪に手をかざす。
しばらくすると、優太は立ち上がり頷く。
「何とかなりそうだ……少し待っててくれ」
「なんと!? それは有難い!」
優太の言葉にモンスローは喜びの声を上げる。
優太は再び車輪に向かって手をかざす。
「それはそうと、モンスロー少し良いか?」
「ええ、何でしょう?」
優太が作業を始めたと同時に、ルートとモンスローが話を始める。
その話と言うのはムート村での出来事と関係のある話だった。
「月明樹を買い付ける話をしている商談に心当たりは無いか?」
「ほほう? 月明樹など切ってしまえばただの老木……買い付ける意味も無いでしょうに」
モンスローの反応から心当たりが無いことを察したルートにモンスローは顎に手を当てながら質問する。
「しかし、何故そのような事を? 貴方にも優秀な諜報員が居るでしょうに……」
「その諜報員を持ってしても尻尾すら掴めなかった……」
ルートの言葉にモンスローは頷くと付き人の一人を呼ぶ
暫く付き人に何かを言うと付き人は元の場所へと戻っていく。
「此方でも探りを入れましょう」
「ああ、頼んだ」
「で、話は終わったか?」
ルート達が話終えたのを見計らい優太が声を掛ける。
ルートは「おお!?」と声をあげたがモンスローは「ええ」と静かに答えた。
「車輪、直ったぞ」
「そ、そうか……早かったな」
「おお! 有難いですなぁ……何かお礼を……おお、そうだ」
モンスローは何かを思い出したのか馬車へと入るといくつかの首輪の様な物を持ってきた。
それを優太に渡すと首輪の説明を始めた。
「これは我々魔物商が魔物を従える為に使う魔道具です。方法は二つ……弱らせて力を知らしめるか、心を開き認めて貰うかです」
「ほう……」
優太はモンスローから首輪を受け取ると興味深そうに眺める。
優太の様子にモンスローはにっこりと微笑むと頷くのだった。
「お気に召したようで何よりです」
「いいのか? 商売道具だろ?」
優太の言葉にモンスローはニヤリと笑う。
「勿論、受けた施しには対価を支払うのが商人ですから……」
「まあ、気にせず貰っとけば良いんだよ兄ちゃん」
二人の言葉に優太は少し考えてから道具袋に首輪を入れる。
それを見たルートは手をパンッと叩くと全員に聞こえる様に声を上げる。
「よし! モンスローの馬車も直ったし、早速出発しよう!」
「では、私の馬車を退かさないといけませんね……おーい! お前達、出発するぞ」
モンスローが声を掛けると茂みの中から馬程の大きさの蜥蜴の様な魔物が飛び出してきた。
その首には優太が貰った首輪と同じ物を着けている。
「それでは私はお先に街へと向かいましょう。それでは! またいつかお会いしましょう!」
猛スピードで走り去っていくモンスローを見送り、優太達もルートの馬車に乗り込み出発するのだった。
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暫く馬車が走るとクリエスティアが見えてきた。
「ふあぁ……」
「そう言えば大きな街は見るのも初めてですね……ルナは」
「そうだな」
馬車の窓から外を目を輝かせて見て居るルナを見ながら優太とレイナは二人で街に着いた後の事を話し合うのだった。
馬車が街に入り暫く経つとゆっくりと馬車は停車する。
馬車が停まるとルナが子供らしくウキウキと馬車から降り、その後ろを優太達がゆっくりと降りる。
「ルナ、街を見て回る前に寄る所があるそれが終わったら少し街を見て回ろう」
「うん!」
優太の言葉にルナは嬉しそうに頷く。
「さてと、俺は商会の方に様があるからここでお別れだな……報酬はギルドで受け取ってくれ話は通してある」
「ああ、分かった」
「ルートさんお元気で」
「おじさんばいばい」
ルートは優太達に「それじゃまたな」と言うと馬車に乗って去っていった。
それを見送ると優太達もギルドへと向かって歩きだすのだった。
「ギルドに行く前に大平原に寄ろう」
「そうですね、荷物やルナの事も有りますからね」
二人がそんな話をしている内に宿屋〈大平原〉が見えてくる。
三人が大平原に入ると店主が直ぐ様カウンターへと現れる。
「いらっしゃいませ! 大平原へ!」
「ご主人お久しぶりです」
レイナが声を掛けると店主何時もの長い説明を辞める。
「これはこれはユウタ様、レイナ様……おや? もう一人いらっしゃいますね?」
「る、ルナ」
優太の影から短く自己紹介するルナに店主は「よろしくお願いします」と言いながら優しく微笑み掛ける。
「実は……」
「かしこまりました! 前回からお使いになっておられます部屋を三人部屋に致しますね」
店主の言葉に優太は首を傾げる。
「前回は二部屋借りた筈だか?」
「見たところお子さんは貴方を随分拠り所にしているようで……真新しい街です、宿でもお子さんは一緒に居たがるでしょうから」
「何故前回と同じ部屋を?」
「ふふん、隠し事は誰にでもあるでしょう?」
どうやら店主には色々とバレているらしい。
優太はそう納得すると、「はぁ」と頷くと一言。
「それで頼む」
「かしこまりました!」
こうして宿屋での用事を済ましたのだった。
優太達は宿屋での用事を終わらせてギルドへと来ていた。
ギルドのカウンターに行くと資料を確認している女性と忙しく動き回る少女が居た。
二人は優太達に気が付くと何時もの様に声を掛ける。
「あらーお疲れ様ねユウタさん」
「しばらく見ないと思ったら護衛からそのままルートのオッサンと一緒だったんだな」
「ああ、報酬はギルドで受け取れと言われたんだが」
優太の言葉にサーシャが頷くとイリスに目配せをする。
すると、イリスが後ろから袋を持ってくる。
「はいーこれが今回のルートさんからの報酬ですー」
「それはそうとさぁ、その子は何?」
イリスが物珍しげにルナを指差す。
サーシャから報酬を受け取りつつ優太はルナに自己紹介をうながす。
「ルナ」
「ルナはルナ……」
「ふふっ、ルナちゃんですねー私はサーシャです」
「私はイリス! イリスお姉ちゃんって呼んでも良いぞ!」
警戒しつつ何処かおかしい自己紹介をするルナにサーシャとイリスは微笑み「よろしくね」と声を掛ける。
ルナも「うん」と尻尾を揺らしながら頷く。
「それと、ルナのステータスカード……冒険者登録を頼む」
「んー、分かりました……まだ、小さい見たいですし保護者ロック着けますね」
「わりかし居るんだ親子で冒険者って」
優太はそんな会話をしながらステータスカードを受け取る。
「なんか、ケータイみたいだな……」
「……? どうかしましたか?」
「……?」
渋い顔をする優太にレイナとルナが首を傾げる。
そんな二人に「何でもない」と首を振ると優太はそのまま角のテーブルへと歩いていく。
テーブルに付くと優太は早速ルナのステータスを確認する為にルナにステータスの出し方を教える。
「ルナ、このカードに魔力を込めるんだ……月明樹の時と同じようにな」
「……う、うん」
「ルナ頑張って」
初めての行動に戸惑いながらもルナはステータスを出す事に成功した。
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ルナ・ヤノ 9歳 Lv.2
性別 女 種族 明月狼人族
職業 蹴り闘士
体力 :500
攻撃力:300
防御力:150
持久力:500
敏捷力:300
魔力 :500
魔防 :500
固有能力 〈月明かりの加護〉
スキル 蹴り威力上昇 重力操作 敏捷上昇中 成長補正超級 キックマスター ???
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〈月明かりの加護〉……月明かりから月の魔力を吸収して自身の力にする。極限まで溜まった状態になる淡い光を体に纏い光障壁を作る。
〈重力操作〉……自身の周囲の重力を操作する。また、重力の玉を生成することより精密な操作が可能。
一通りの能力を見て、優太は少し驚きを見せるが最近似た感じのステータスを見ていたのでそこまで反応はしなかった。
「んー、これがあの時の木に起こっていた現象の正体だったんですね」
「ああ、これに加えて基礎ステータスも高い、これで蹴られたビックボアが気の毒だ」
レイナの言葉に優太は頷くと「まあ、取り敢えず」と言いながら立ち上がる。
「やることは決まった」
「……?」
「どうするのですか?」
レイナの質問に優太は首を傾げるルナの頭を撫でながら言うのだった。
「まずは、ルナの……靴探しだ」
優太はそう言うとギルドの外へと向かって歩き出したのだった。
遅くなりました! 取り合えずこれで一段落して次に入ります。そろそろ、クラスメイトが来るかも……




