20 前日に思いは昂る
前日のブレインと、優太の意気込み。
他のキャラクター達の出番は優太が城から出てから徐々に増えていく筈です。
優太達が秘密の訓練をしている頃、別の場所でブレインもまた訓練を続けていた。
ブレインの訓練を晃とエリナが見学していた。
「ふっ! はっ!」
ブレインは、縄で吊るされた不規則に動く丸太を高速で避けながら、中心の木の人形へと攻撃を入れる訓練をしていた。
「凄い……なんて、速さだ……!」
「ふふっ、お兄様はジンを押さえて、リルティア王国一速い剣士なのですよ!」
訓練の様子を見て、晃は驚きの声を上げる。
それに対して、エリナは胸を張って兄自慢をしていた。ほどほどにある胸を張りながら自分を自慢する妹に、照れながらもブレインは説教をする。
「エリナ! 不用意な発言をするな……俺でもジンにはまだ勝てないんだぞ……」
「それでも、凄いよブレイン……俺もそこまで辿り着いて見せる!」
「ええ! ヒカル様ならきっとジークも越えられます!」
ブレインの説教を、晃の言葉に乗るように遮り、エリナはキラキラした瞳で晃を見つめていた。
ブレインはそんなエリナに、呆れ気味にため息を付いている。
「ああ、ありがとうエリナ。頑張るよ」
「はい! 魔法の事ならご協力出来ますから……私はもうそろそろ時間ですね」
「もうそんな時間か……俺も少し休憩しよう。エリナ、早く行かないシリアが恐いぞ」
ブレインの言葉に、「はわわ!」と焦りながら急いで準備をし始めるエリナ。
そんな、エリナを優しく見守るブレインと晃。
「それでは、私はこれで!」
「ああ、また明日……」
タッタッタッと小走りで去っていくエリナを見送ると、ブレインが入れ替わりで晃の向かい側に腰を下ろした。
「ふぅ、あいつももう少し落ち着きを持って貰いたいものだ……」
「良いじゃないか、年相応で見ていて癒されるよ」
晃の言葉に、ブレインは首を横に振りながら反論する。
「いや、国を治める者の一族と言う事を自覚して貰わなければならないんだ。厳しくするのもあいつの為なんだ」
「はは、王族も大変何だな……」
晃は困ったように笑いながら、ふと、気になる事を質問してみる。
「所で、明日の試合……そもそも、どうして優太に試合を申し込んだんだ?」
晃の言葉に、ブレインの表情が険しくなる。
そして、どこかイラつきを感じさせる声音で、話し始めた。
「俺は、王族として、血が滲むほどの努力をしてきた……毎日欠かさずだ……王族として、誰にも負けない程強くなるために、この国を守るために……!」
ブレインは歯を強く噛み締めながら、話を続ける。
「そして、あいつが来た。女神から力を貰ってもその力を高めようともしないあいつが! 俺に無いものを持っているのに……だから、思い知らせてやるんだ……身の程を知れと」
それは、独白であった。自分の醜い感情の……そして、王子としての努力を否定されたと言う一方的な敵意。
「そうか……ブレイン、明日は頑張れよ」
「ああ、ヒカル! 全力でやるさ」
(なんであんな奴に、サチコは……!)
ブレインの言葉に、ヒカルは応援の言葉を送る。
ブレインはそれを受け取りながらも、心の中には、嫉妬、憤りを燻らせていた。
「それじゃあ、俺もそろそろ戻るよ……ブレイン、ほどほどに……」
「ああ、また明日」
晃を見送ると、ブレインは再び訓練を再開する。
さっきよりも、人形へと入る攻撃の威力がましている。
(明日、必ず勝つ! そして、知らしめる……お前は弱いと……!)
ブレインは決意する。
認めないと、嫉妬、怒りを心に宿し、自分を否定するように存在する少年に敵意を剥き出しにして。
(覚悟しろ、ユウタ・ヤノ)
こうして、ブレインの試合前日は過ぎていく。
心に宿る、黒いものを燻らせ、思いは昂る。
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「クシュン!」
「ゆう君、風邪でも引いたの?」
幸子の言葉に、首を横に振りながら否定する。
「いや、分からんが……噂でもかれたか?」
「ふーん、無茶したら駄目だからね?」
そんなやり取りの中、幸子は思い出したように優太に質問する。
「そう言えば、一つ疑問に思ったんだけど……ゆう君よくあの試合の申し込みを受けたよね」
「受けたんじゃない、ほぼ強制だったろ?」
しかし、幸子は首を横に振る。
そして、真っ直ぐに優太と視線を合わせると、微笑みながら話し始める。
「違うよ? ゆう君は本当に嫌だったら、無視するか、キッパリと断るかのどっちかだもん」
幸子は、嬉しそうに笑うと話し続ける。
「だから、断るんなら、こうやって明日に向けた訓練なんか続けないよね。もっと、違うことに頑張ってたと思うんだ」
「買い被り過ぎだな……ただ、気に入らなかっただけだ」
幸子の言葉に、優太は呟くように言うのだった。
ブレインの目には見に覚えがあった。それは、自分より上を知らず何もかもを下に見る者の目だ……それは、強さではない、別の何かに対してだ。
「あいつは、きっと努力を重ねてきたのだろうな……自分が辛い程努力してきたから、自分より努力している人間なんか居ないと思っているのだろう」
それは、なんと傲慢な思考だろうか……自分ほど努力した者は居ない。
その思考が、優太は気に食わなかった。大切な物を二度と取り逃さまいと足掻いてきた優太にとって到底看過出来るものではなかった。
「だから、勝てないまでも一矢報いてやるのさ、努力は平等に人に力を与える事を教えてやる……それに上下なんか無い」
「ゆう君は、何だかんだ熱いよね!」
「ユウタ、明日は本当に剣だけ戦うのか?」
しばらく、黙って二人の話を聞いていたリティが、大の字で倒れている優太に質問する。
ついさっきまでジークにしごかれていた優太は、起き上がりながら答える。
「当然……あいつの鼻をあかしてやる……」
試合前日に、思いは昂る。
そして、明日はいよいよ試合当日だ。
次回、いよいよブレインと優太が試合をする! 本格的に戦闘シーンですが頑張ります!




