34話 スクープです!!
日恵野に先導され、俺達は宿を出る。
勿論、母様と赤城も一緒だ。サヤカさんは車椅子に乗っており、それを委員会の人間とおぼしき大柄な男が押す…
アリサさんのご機嫌は斜めである、ポチはいつも通りか…口笛吹きながらマイペースな感じだ。
それにしても、何故か、裏口から路地裏を通り移動しているのだが…
なんで、わざわざ、こんな所を通るのだろうか?
表から出ればいいと思うのだが…
街中を歩くのはコレが最初だったんだよな…
最初の外出が裏路地とか、俺らしいのかもしれんが…
そのことについて悩んでいると、アリサが答えてくれた。
「おそらく、記者を避けたのだと思います」
「記者?」
「はい、正確には新聞記者です。
あの宿の表に何人か潜んでいました」
大柄な男がそれに答える。
「月村美夜子さんは、なにかと目立つからな。
せっかく撒いたのに、直にみつけられちまった。
おかげで、俺達の仕事が増えたわな」
皮肉混じりに言う男は、車椅子に座るサヤカに睨まれた。
後で聞いた話だが、サヤカの治療をしたのはこの男なのだとか…
医者…なのだろうか?
そんな雰囲気では無いのだが…
アレか?
実は名医なのか?
サヤカは俺を見たとたん、ニッコリ笑う。
俺も笑顔で返す。
アリサが意地悪そうな目で俺を見た。
「良かったですねマスター、粗相を見られなくて」
笑顔のままずっ転けた。
アリサさんは、たまに意地悪です。
■
歩くこと10分弱。
大きい建物の前を通る大きな道に、俺達の乗る馬車が用意されていた。
表通りは結構人通りが多い。
着物姿の人、洋服の人、頭に獣耳が生えてる人…様々な人が行き来している。
それにしても…
亜人だぁ…
亜人ですよ亜人!!
大興奮ですよ。
昔、背中に翼を生やした人や、下半身馬のケンタウロスみたいな人も見たけど…居ないかな?
…っち、亜人さんしか居ない。
でも、実際にこんな近くで(つって、10メートル以上離れた所に居る)亜人さんに会えるなんて感激ですよ…
あの耳、何耳かな?
猫…かな?
あっちは犬かな?
…柴犬と見た。
そして、あそこで建物の影に隠れている人は…
「う…ウサ耳だぁあああああ!!!」
つい、大声を発してしまった。
辺りの視線が一斉に俺へと集まる。
ちょっと恥ずかしい。
隠れていたウサ耳娘は、耳をピンっと伸ばし辺りをキョロキョロしている。
定番の白兎では無いが、茶毛もいいな…
瞳が赤くて可愛い。
なに、あれ…耳モフモフさせて欲しい…
サヤカが心配そうな目で俺を見る。
「レイジ、なんで中を揉んでるの?」
はっ! 無意識に中を揉んでいただと?!
気がつくと、俺の両の手は確かに中を揉んでいた。
母様は、俺とウサ耳娘をみてニコニコしてる。
日恵野とアリサは、ウサ耳娘を睨んでいる。
「…あなたは何者ですか?
なんで、そんな所に隠れて僕たちを見ているんですか?」
あ…確かに、物陰に隠れて俺達の様子を覗いている感じに見える。
ウサ耳娘は、肩を竦めて両手を上げ首を振りながら現れた。
「ヤレヤレですね。
まさか、『因幡新聞』が誇る未来のエース、餅月ララがこうも簡単に発見されるとは…
流石、日恵野 静ですね!!」
ドヤ…とか、効果音が付きそうな顔をして。
日恵野を指差す。
いや、あの程度じゃ誰でも発見出来るだろ…
「ちっ、新聞記者か…
どうしてこの場所が解ったんだ?」
大柄な男が忌々しそうに餅月を見ながらつぶらく。
餅月は、含み笑いを始めると…直に大笑いへとバージョンアップさせ、辺りの人間をどん引きさせた。
「…教えてあげましょう、木暮大樹!!!
ウサギとは、思いもしなかった所から飛び出るものなのですよ!!!
わたしは、凄くラッキーです!!」
ん?…
つまり、偶然?
「くくく、これで編集長に一目おかれる様になりますね…
スクープです!!
なんでこんな所に居るのか、ぜんぜん解りませんが、スクープの臭いしかしません!!」
…こいつ、テンション高いな…
母様が前に進み出る。顔が笑ってるよ…
赤城は成り行きを見守ってる感じ、アリサは餅月に呆れ顔、サヤカは呆然…
母様はとんでもないことを言い出した。
「いいわ!!
私の息子のことを記事にしてあげる!!
サヤカちゃんが、誰かさんのせいで大怪我しているから、表から出れなかったのよね。
でも、一人程度ならどうにかなるわよね…」
言葉の途中で赤城を睨む(赤城も流石に素知らぬ顔は出来ず、固まった)。
餅月さんは、言っている意味が分からなかったらしく…
「へっ?…なんで、わたしがそんな目付きの悪いガキを記事にしなくちゃいけないのよ!!」
先程まで赤城に向けられていた視線が、餅月にシフト。
餅月は、蛇に睨まれたカエル…いや、何となく、狐に睨まれたウサギ、って感じだ。
そこで、何かに気付いた様で、餅月さんは顔を引き攣らせた。
そして大きな声で独り言を始めた。
「…あれ? もしかして、月村美夜子?
えええ!? なんで、こんな大物がこんな所にいるの!?
…えっ? と、言うことは、あの目付きの悪いガキは月村美夜子の…」
途端に納得顔になり、自信に満ちあふれた顔を俺達に向けた。
「いいわ!!
是非、記事にさせて下さい!!」
お願いしてるのに偉そうだ、この人!?
■
大きめの馬車に乗り込んだのは、
俺、アリサ、ポチ、サヤカさん、母様、赤城…そして…
「くくく、スクープの予感だわ…
兎に角、これでわたしの出世は確定ね♪」
餅月さんだ。
悪い笑みを浮かべていらっしゃる。
なんでも、母様曰く、街を出るまでの間、馬車の中で話を聞くのだとか…
日恵野と大柄な男(木暮大樹と言う名前らしい)とは、ここでお別れだ。
日恵野は別れ際、俺の頭の手を乗せ。
「可愛らしいガールフレンドを守れる、勇ましい騎士でしたよ♪」
と、鼻息荒くして言い残した。
こいつ…見た目カッコいいのに、駄目な臭いしかしない…
二人と別れての移動。
因みに、運転は馬車で待っていた、母様のドール・叢雲が担当している。
この人の存在、忘れかけてたわ…
「ごほん…」
ワザとらしい咳をして、餅月さんが切り出す。
「まず、そちらのお子様のお名前をお聞かせ下さい」
おい…、つい、さっきまで『ガキ』とか言ってなかったか?
耳触らせろや、コラ…
母様は俺を抱き寄せ、頭を撫でる。
当たり前だが、いくら母様が合法ロリでちっこくても、3歳児の俺よりは大きい。
俺と同じくらいか、俺より下に見える容姿なら、流石の父様も捕まってるだろ…
そう言えば、父様は何処に行ったのだろう?
「自慢の息子の名前は、レイジ!!
月村 レイジよ♪」
餅月さんは、メモ帳を取り出し何事かを書き込む。
そして次の質問を打つけて来た。
「え〜と、レイジ様は何時頃、お産まれになったのですか?」
「三年と半年くらい前ね!!
あ〜〜〜〜、この可愛らしいレイジもいいけど。
最初に会った頃の、まだまだ、小さいレイジも可愛かったわ…」
母様は、高揚した様に俺に顔を近づけ、抱きつく。
苦しいです、止めて下さい。
餅月さんは、そんな俺達を苦笑いで眺め、次の質問を始める。
「え・・・と、なんで今まで公表されなかったのですか?
暗殺の危険性を案じて隠していたのなら、なんで今になって…」
母様の動きがピタリと止まる。
そして、和やかに言い放った。
「それは、レイジが『天の落とし子』…だからですわ♪」
餅月さんは手帳を落とし。
その場に居た全員が、凍り付いた。
「えっ…ほんとに? 冗談ですよね? ハハハ…」
乾いた笑みを浮かべる餅月さん。
しかし、母様は一向に笑みを崩さず、何も語らない。
それは暗に…
「本当…なんですか?
え…マジですか!?」
沈黙が答えだった。
学校が忙しくなりそうなので、当分、不定期連載です。
頑張りますので、よろしく御願いします!!




