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新生活の仲間

 目を開けると、崩れた壁から差し込む光と、蔦の緑が見えた。

 あら、寝ちゃってたのね……。そう、昨日は確か、変な死霊の子に襲われて……。


「――シリウスッ!?」


 慌てて飛び起きると、シリウスは部屋の片づけをしていた。

「ああ、起きましたかコルテッサ。良い天気ですよ。そこのポットに紅茶があるので、飲んでくださいね」


 いつも通りのにこやか爽やかな笑顔で、微笑んでくれる彼。

 んんー、いい旦那さんよねほんと。でもまって、私は見逃さなかった。


「な、なんであなたがまだいるのよっ!?」


 シリウスの側で一緒に地図を覗き込んでいるのは、昨日の死霊の子供だった。確かダンテって名乗ってたはず。ダンテは、はっ、と馬鹿にしたようなポーズをして、すいっと私の目の前まで飛んできた。


「おいおい、奥様。もう死霊けしかけんのやめろよ? あんたに憑いてるの多すぎておっかねぇんだよ。あと、あんたも好戦的すぎねぇか? 仮にもお姫様なんだろうが」


 ケケケと笑ってまたシリウスの隣に戻ってしまう。


「し、しししシリウス危ないわ! そこをどいて」


 死霊を解き放とうとする私に、慌てたようにシリウスが声を上げた。


「待ってくださいコルテッサ。彼は昨日また会いましてね、和解したんですよ。私たちはこの館のことをあまり知らないですからね。昔の領主の縁者(えんじゃ)ですから、いろいろ教えてもらってるんですよ」


「そうだぞ、ねーちゃん。昨日は悪かったな。でもまぁ、この通り領主さまとは和解したからよ。もう攻撃すんなよな!」


 う、うん……。

 驚いた。私が寝ちゃっている間に、何があったのかしら……。

 確かにシリウスとダンテは、親し気に話しているし、敵対の意思はなさそうね。

 私が、びっくりして、棒立ちしていると、ダンテがふよっと近寄ってきた。


「で、ねーちゃん、子供のころから死霊つきなんだってな。今まで苦労してんきたんじゃねーの?」

「あ、うん……、でも、そうでもないわよ? まぁみんな、死霊は苦手みたいだけど私は死霊と仲良かったしね」


 私の影からぽにょんと、小さな死霊が飛び出す。うん、やっぱりかわいいわね。

 そんな私の姿を、ダンテははーん、てみてから。


「でもよー、今はいいけどよ。これから、領主さまの嫁さんとしてやってくんだろ?

 それじゃあ困るんじゃねぇの?」


 う、確かに……。

 ダンテのいう通り、それは私の抱える問題だった。これから領主夫人として、館の事を取り仕切らないといけないんだけど、その時に()()()()()()()()では困るのよね。


「俺様がよ、死霊の制御の仕方を教えてやるよ。とりあえず、人の側にあっても、寒さを覚えさせない方法だな」


「え、ほんと!? そんなことできるの!?」

「おう。俺様は、死霊歴長いからな。この体の事はなんでも知ってるぜ」


 私は小躍りしそうになる。それならば、死霊たちの可愛さをみんなに知ってもらう事ができるかもしれない。


「霊感ない人に、死霊を見せるって事はできないの?」

「なんだそりゃ、死霊が見えない人間なんているのかよ。いるとしたらよっぽど特殊な人間だぞそれ」


 あらら、じゃあリリアにこの子達を見てもらうのは難しそうね。

 でも、そうか……、寒気はなんとかできるんだ。

 私の頭に前々から温めていた、ある()()がむくむくと湧き上がる。

 うん、やれるかも。いえ……、今しかないわね!


「ねぇ、ダンテ。じゃあ早速なんだけど、ちょっと手伝ってほしいことがあるわ!」



       ◆◆◆


 その日の午後、領主の館に王都からの馬車が到着した。


「姫様! ご無沙汰していました」

「リリア、会いたかったわ!」


 私とリリアは、抱き合って再開を喜ぶ。少しだけしか離れてなかったのに、リリアは私の家族だから、やっぱりいないと心細さがある。


 続いて、馬車から降りてきたのは、爽やかな青年だった。

 シリウスよりも少し背が高くて、短髪の赤毛で、司祭様というには、ちょっと筋肉質な人。フレデリック=ハイデルマイア司祭


 領主の館の近くに教会があるんだけど、そこの司祭様をしてくれるんだって。

 この人は、古くからの知り合いなんだってシリウスから聞いていた。


「ご無沙汰しています奥様。これからよろしくお願いいたします。これからは、領主さまと奥様のよき友人として……」


 ハイデルマイア司祭は、私の前にかしずくと、手を伸ばす。

 こ、これは、最近ではあんまりしないけど、手の甲にキスするあれなのでは!?


「う、うう……はい、よろしくお願いします……」


 ちょっと恥ずかしいけれど、私はおずおずと手を差し出す。

 手に軽くキスするしぐさをして、司祭は、にんまりと笑った。


「おお、シリウス。お前の麗しの奥様はとても可憐で可愛らしいじゃないか!? お前幸せものだなぁ!?」


 大げさに手を広げておどけてみせた。


「ハイデルマイア。あまり妻をからかわないでくれないか」

 シリウスはちょっと苦笑いしてたけど。


 続いて、私は、家令のハロルドさんと、新たに来た使用人の方々に挨拶する。

 厨房担当でコックのブレッドさんと、ルッカさんの夫婦。40代で、人のいい人たちだ。彼らの作るご飯はとっても美味しいの。こっそり厨房に忍び込んで、つまみ食いしちゃったときもあったわね。

 

 それから、メイドのエリザさんと、家令見習いのラウル君。


 エリザさんは、リリアより年上で、メイド長補佐をしていた人で、とってもやり手の人。眼鏡をいつも光らせていて、私が死霊を出しっぱなしにして歩いていたら、遠くからだけどいつも注意してくれた。厳しくてちょっと怖いときはあるけど、実は優しい人って事を私は知っている。


 家令(スチュワート)見習いとして来てくれたラウル君は、元々馬屋番(うまやばん)をしててくれた子で、以前シリウスと城下町でデートしたときも、馬車を回してくれたのは彼だ。


 ハロルドさんがご高齢という事で、次期家令としてシリウスが指名した。これは大抜擢で、本人が一番びっくりしたみたい。「僕でいいんですか!?」なんておどおどしてる姿はかわいかったけど、今までもしっかり仕事をしていた彼だもの。すぐに立派な家令としてやってくれる事を期待してる。


 ここに、シリウスとリリアとハロルドさんをくわえたのが、私の新しい家族だ。



「みなさん、プリンシパル領主邸によく、おこしくださいました。領主の妻のコルテッサです。王宮にいたみんなは良く知ってるわよね」


 私はみんなを広間の噴水前に集めて、挨拶をする。


 お父さまは、嫁入りに差し当たって、私に苦手意識が少ない人を選んでくれた。

 これから、領主夫人として、みんなを率いて、領主邸の一切を取り仕切る事になる。見回すと、緊張してるひと、表情を読めないひと、真剣に私のことをみてくれている人、それぞれだ。


 私は、ドキドキしていた。みんなを迎えるにあたって、ダンテと即興で作戦を練っていたから。ここでみんなの心をがっちりと掴みたい。


「今まで私のことを良く思ってくれない人もいると思うんだけど、まずはこれを見てほしいの、お願い!」


 私の号令と共に、今まで止まっていた、噴水がどばーっと、吹き上がった。水と共に、空中から、花びらが舞う。

 水滴が光に反射して、キラキラ。プリズムで目がくらむ中、バラの匂いが漂った。


「すごーい……キレイ……」

 リリアがびっくりしてみてくれているのを見て、私は作戦が成功したことを確信する。朝から半分荒れたバラ園に花弁を摘みに行ったかいがあったわね!


「ダンテ!」

「あいよー!」

 シュポッと出てくるダンテ。そのまま、色とりどりの煙を噴き出して飛び回る。ダンテの飛んだあとは、花びらとしぶきが乱れてプリズムが乱反射した。


「し、死霊!?」

「まってみんな落ち着いて。彼の姿をみて。確かに死霊だけど、嫌な気分にならないでしょう? そして彼って喋れるのよ!」


「おうおうおうお、俺様ーの名前はダンテだーい! これからよろしくな!」


 みんな呆気に取られてるわね。でも、第一印象ファーストインプレッションは大事でしょう?


「私は、コルテッサ=マルグリッド=プリンシパル。死霊の姫(レイスプリンセス)改め、死霊の伯爵夫人(レイスマダム)よ。みんなには、私と一緒に、死霊のイメージアップ作戦に協力してほしいの。そして、みんなで領主さまを支えてこの土地を盛り上げていくのよ!」


読んでくださりありがとうございます!

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楽しいお話を書いていくつもりですので、今後ともよろしくお願いいたします。

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