欲望との葛藤
真実が元気よく宣言した。
脱衣所は狭かった。
一人分のスペースしかない。
真実はバスマットを敷き、桶に洗濯物を入れる準備をしている。
「ここに脱いだものを入れてください」
ヨシオは脱衣所の狭い空間に立ち尽くしていた。
服を一枚一枚脱ぎながら、鏡に映る自分の姿が目に飛び込む。
垢の付いた肌。
伸びすぎた髭。
痩せ細った体躯。
「こんなみすぼらしい格好で……」
彼は自嘲気味に呟いた。
ふと視線を感じた。
洗濯物を入れる籠の端に何かが見える。
(あれは……?)
ピンク色の布切れ。
真実のものだろう。よく見ると女性用の下着だった。
「おいおい……」
思わず声が漏れる。
彼女が片付けるのを忘れたのだろうか。
ヨシオは困惑した。
他人の下着を目の当たりにするのは何年ぶりだろう。
それも若い女性のもの。
リビングから水音が聞こえる。
真実は台所で何か作業をしているようだ。
「気まずすぎる……」
彼は視線を外そうとしたが、逆に強く印象に残る。
(落ち着け。単なる衣服だ)
理性がそう囁く一方で……
「久々に感じるな……」
無意識に呟いた言葉に自分でも驚く。
ホームレスになって以来、そんな余裕は無くなっていた。
生きること自体が精一杯だった。
(これは生理現象か?)
彼は思考を巡らせる。
(それとも真実の人柄に惹かれて?)
真実は優しくて親切だ。でもそれは職業意識から来るものかもしれない。
「下着ひとつで舞い上がるなんて……」




