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## 零細生活者の生態 ### 第二十八章 新扉の解放
ヨシオの心臓が高鳴った。
それは同情とも憐憫とも違う感情だった。
単純に興味を持たれているという事実が新鮮だった。
「宮本さん」
彼は名刺を返しながら言った。
「ありがとう。こんな風に声をかけてもらったのは久々だ」
「いえ」
彼女は手を振った。
「警備員として当然のことです」
そして—
意を決したように—宮本が問いかけた。
「ヨシオさん……というのは名字ですよね?お名前は何と言うんですか?」
一瞬の躊躇の後、ヨシオは口を開いた。
「春野です」
彼の声には苦い響きがあった。
「春野……ヨシオ」
宮本が眉をひそめる。
「春野さん」
確認するように呼びかけた。
「ええ」
ヨシオは頷いた。
「今はご覧の通りの身分です。訳あってホームレス生活をしてます」
「訳……ですか?」
宮本の表情に微妙な変化が生まれた。
好奇心ではなく、純粋な心配。
「話したくなければ結構ですよ」
ヨシオは迷った。
ここで全てを曝け出すべきなのか。
まだ出会ったばかりの若い女性に。
だが—不思議と安心感があった。
宮本の真摯な態度がそうさせるのだろうか。
「簡単に言えば……」
彼は言葉を選びながら話し始めた。




