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## 夜明けの誓い ### 第十六章 静寂の脱出②
自分の卑劣さに吐き気がした。
柚希に告げることなく去るのは裏切りだろうか。
それとも最善の選択か。
公園まで辿り着くとベンチに腰掛けた。
鞄から取り出したのは小さなノート。
家族写真と美雪の日記を挟んだ宝物だ。
ページをめくる指先が震える。
『兄さんへ』
最後のページに書かれた文字。
遺書のような短い言葉たち。
『あなたの苦しみを知りながら何もできなくてごめんなさい』
『もし私がいなくなっても……どうか誰かを愛してほしい』
『特に柚希ちゃんを守ってあげて』
ノートを閉じるとヨシオは静かに涙した。
美雪の願いと現実のギャップ。
自分はあまりにも不誠実だ。
しかし—
これが今の自分にできる精一杯だった。
柚希の人生を妨げるわけにはいかない。
東の空が白み始めた。
朝焼けがヨシオの孤独を照らし出す。
立ち上がると彼は駅方面へと歩き出した。
再びホームレス生活が始まる。
しかし今回は違う—
明確な目的があった。
あの夜彼女が言った言葉。
「私を使うか……完全に手放すか」
答えはすでに出ていた。
使うことも手放すこともできない。
ただ寄り添うことしかできないのだと。




