##雨中の決意 ### 第十五章 偽りの夜③
「何?」
「私の方が叔父さんの役に立つ」
「どういう意味だ?」
ヨシオは半身を起こした。
「お金持ちだし頭もいいし」
柚希の声は平坦だった。
「求めれば何でもしてあげる」
その提案にヨシオは全身の血が引く思いだった。
「やめろ」
「どうして?」
「尊厳がないからだ」
「叔父さんが言う資格はないでしょ」
ヨシオは黙り込んだ。
彼女の言葉は全て正当だ。
失業者としてプライドなど保てるはずもない。
「じゃあ選んで」
柚希が体を向けてきた。
「私を使うか……完全に手放すか」
「使われるつもりはない」
「でも必要なんでしょ?」
柚希の指がシーツを握りしめた。
「私たちの関係に名前をつけたくないだけで」
ヨシオは彼女の手を取り、
「名前は後で考えよう」と言った。
「今は休息が必要だ」
「叔父さんが?」
「二人ともだ」
沈黙が流れた後、柚希が小さく笑った。
「変なの。ずっと敵だと思ってたのに」
「敵ではないさ」
ヨシオも笑みを漏らした。
「ただ……」
言葉を続ける前に柚希が彼の指を絡め取った。
「分かってる」
その夜彼らは互いの境界線上で眠りについた。
触れそうで触れない距離感。
危険でありながら安全な位置。
ヨシオは眠りにつく直前、
「いつか本当のことを話す」
と心の中で誓った。
柚希が求める本当の答えを。




