最終話
「それに」
ヨシオが懐から小さな箱を取り出す。
「アイツの居場所も掴んだ」
中に入っていたのは一枚の写真。
背景は曖昧だが女性らしい姿が映っている。
「花音が生きてる?」
紗月の顔色が変わる。
「行方不明という噂は嘘だったのか……」
「おそらく伯爵家の庇護を離れ海外で暮らしてるんだろう」
ヨシオの口調には確信があった。
「お前の助けが必要かも知れんぜ?」
「どういう意味?」
「今のお前なら彼女を救えるんじゃないか?」
沈黙。
そして紗月が深く息を吐く。
「試してみる価値はあるわね」
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**翌朝 都内某所**
新聞一面には巨大見出しが踊る。
《元伯爵家 激動の六ヶ月》
《ルナ財閥 解体へ—新たなスタート》
ニュースキャスターの声が虚しく響く。
「現在警察当局は全容解明に向けて捜査を進めているとのことですが……」
そんな喧噪を避けるように埠頭の倉庫街に停まった車。
助手席から降りてきたのは紗月だ。
「準備完了したわ」
運転席の男が振り返る。
ヨシオと同じ作業服姿だが別人のようだ。
「本当にいいのか?俺たちは犯罪者だぞ」
「構わないわ」
彼女の目に迷いはない。
「あの子を見つけ出して……終わらせなきゃ」
車が走り去った後倉庫の陰から人影が現れる。
「上出来ね」
真実だ。公安部特殊任務班の一員として潜伏していたのだ。
「後は任せましょう」
スマートフォンで部下に指示を送る。
「対象を追尾しろ。ただし今回は妨害なし」
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**深夜 国際空港ターミナル**
偽パスポートを手にチェックインゲートに向かう二人。
「緊張するかい?」
「当たり前じゃない」
紗月の手が微かに震えている。
「でも不思議と怖くないわ」
「何故?」
「ヨシオさんが一緒にいるからよ」
ヨシオが微笑む。
「まったくお前らしい答えだな」
搭乗案内が始まる中遠くのベンチに見覚えのある姿が。
「花音!?」
傍には見慣れぬ中年夫婦が寄り添っている。保護者だろうか……。
「行いましょう」
紗月が航空券を握り締める。
「必ず助けてみせる」
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**機内後部座席**
離陸の振動を感じながら窓の外を見る二人。
「終わったな」ヨシオが呟く。
「いや……始まったばかりよ」
紗月の瞳に強い意志が宿っている。
「人生っていう旅路がね」
エンジン音に掻き消されるはずの言葉だったが確かに届いていた。
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**十時間後 パリ郊外**
空港到着ロビーに迎えにきたのは意外な人物だった。
「待っていたよ」
雅也だ。駐フランス大使館筆頭書記官として赴任していると言う。
「君たちの滞在許可証を確保しておいた」
紗月が感極まって抱きつく。
「ありがとうございます!」
「さて」
雅也が咳払いする。
「まずは落ち着きましょう。ホテルはもう準備してありますよ」
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**翌日 モンマルトル地区**
古風なアパートメントの呼び鈴が鳴る。出てきた女性を見て紗月が息を呑んだ。
「花音!」
華やかなフランス語混じりの挨拶もなく押し倒さんばかりの勢いである。
「元気そうで良かったわ!」
ベッドに腰掛けた花音が小さく笑う。
「まあね……色々あったけど」
彼女の周りには沢山の写真が飾られていた。
かつての栄光が垣間見えるもののそこには確かに安寧の空気が流れている。
「話があるの」
紗月が深呼吸して切り出した。
「日本で起きたこと全部整理しようと思うの。お母様のこと……伯爵家のこと……あなたが知るべき全てを」
花音が黙って頷く。
その様子を窓辺から眺めるヨシオと雅也。
二人とも安堵と不安が入り混じった表情を浮かべている。
「うまく行くでしょうか?」
「彼女ならきっと乗り越えるさ」
男同士の短い会話が終わると同時に新たな旅立ちの鐘が鳴り響いた───
ーーー完ーーー
【スピンオフ予告】
もし「花音の回想録」や「紗月の裁判劇場版」などの番外編をご希望であればぜひコメント欄でお聞かせください♪
それではまたどこかでお会いしましょう!
*作者コメント*
ここまでご愛読頂き誠にありがとうございました!
シリーズ開始当初は思いもしなかった壮大な物語となりましたが皆様のおかげで完結することができました。
この作品を通じて感じて頂けた『小さな幸せの大切さ』が少しでも多くの方の心に残ってくれたら幸いです。
今後の展開については続編企画【ド底辺ホームレス2】を水面下で進めているところですが詳細は追って発表させて頂きます!
皆様にとって素晴らしい明日となりますように☆彡




