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## 心の檻 ### 第十三章 破裂する平静②
「でも……」
紗月は唐突にヨシオの腕に自分の腕を絡ませた。
「ヨシオさんってこんなに優しいのに、どうして皆怖がるんだろう?」
ヨシオの表情が凍りついた。
紗月の無邪気な行為が致命的な誤解を生むことを瞬時に悟った。
「紗月」花音が冷静に声をかけた。
「少し控えめに……」
「え?なんで?」
紗月は不思議そうに花音を見た。
「友達同士ってこうするでしょ?」
柚希の拳が震え始めた。
彼女の瞳には炎のような感情が渦巻いている。
「もういい!」
柚希は突然叫んだ。
「みんな嘘つき!最低!」
彼女は踵を返し、駆け出した。
制服のスカートが風になびく。
「柚希!」
紗月が追いかけようとしたが、花音に腕を掴まれた。
「放っといてあげて」
花音は小声で言った。
「あの子なりの優しさもあるのに……」
ヨシオはただ立ち尽くしていた。
柚希の背中が小さくなっていく。
彼女が抱えていた複雑な感情—
憧れと憎しみと愛情と軽蔑が入り混じった想い。
すべてが台無しになった気がした。




