04-10.エピローグ
「なんでその姿なの?」
この子はあいも変わらずステラの格好だ。顔は僕なのに。
カラミティを倒しても僕の魂は返ってこなかった。どうやら魔石に完全に取り込まれてしまったようだ。
「あなたが好きだからに決まっているじゃない♪」
どっちだろうね。どっちもか。
「その胸ってどうしてるの?」
「私はスライムだもの。盛り付けるのは簡単よ♪」
ズルい……。
「聞きたいことはそんなことかしら?」
「……どうして僕ではなくステラを選んだの? どうせ使い魔として蘇るつもりだったなら、ステラじゃなくて僕でもよかったじゃん」
僕だって欲しかったのに。君のこと。
「いくつか理由はあるわ。アミと私が融合すれば境界があやふやになってしまうだとか、私はやっぱりアミには人のままでいてほしいからとか、私を下したのはステラだからとか。技術的にも精神的にも様々な理由があるわ」
色々考えていたんだね。けれど本命は他にありそうな口ぶりだ。
「一番の理由は単純ね♪ 私はステラになりたかったの♪」
……ああ。そっか。
「私はアミが世界で一番愛するステラになって、アミに愛されたかったのよ♪」
……この子は。本当に。
「どうかしら♪ ふふ♪ 言うまでもないわよね♪ アミは私のことも大好きだものね♪」
「だからその格好をしていたんだね」
ステラの悪評を覆すことだけが目的だったわけじゃなかったんだ。
「けれどまだ一つ足りないわね♪」
そういえば持ってなかったね。
「フィリーはどこに隠したの?」
「約束よ。返してちょうだい」
「譲っていただけないかしら♪ ステラもそろそろいい歳でしょ♪ 大人っぽい服を見繕ってあげるわ♪」
まあ、戦争も長かったからね。僕らももう二十……ゲフンゲフン。
「ダメ」
「え~♪ 良いじゃない♪」
「ダメったらダメよ。返しなさい」
確かにカラミティの言い分にも一理あるかもしれない。
ステラは最近増々大人らしく、美しくなったもの。それでも着こなしちゃうのがステラだけどさ。
「ほら♪ アミが見てるわ♪ あの目は期待している目ね♪ ステラの大人の魅力でメロメロにしてあげましょう♪」
「……」
ちょっと悩んでる?
「ほら♪ それ脱いで♪ 私が服を出してあげるわ♪」
「え? ちょっ!?」
ステラを無理矢理脱がせたカラミティは、スライム体の一部をステラの身体に纏わりつかせて様々な服に変化させていった。……カラミティの服ってそうやって出してたんだね。
「ふふ♪ やっぱりどれも似合うわね♪」
「うん。どのステラも綺麗だ」
「……」
あら。ステラが照れてる?
「ねえ、ステラ」
「……なにかしら?」
「僕と結婚してくれないか?」
「……アミにはマリーとコルカがいるじゃない」
「構うことはありませんわ!」
「気にしない」
「……なんで今なのかしら」
そっぽを向いて髪をクルクルしてる。こんなステラは初めてだ。今ならいける! 押し通せる!!
「僕はいつだってステラを愛していたよ」
「……答えになっていないわ」
今度はジト目を向けてきた。ちょっと遠ざかったっぽい。
「僕にはステラが必要だ。世界は一つに纏ったけれど、本番はまだまだこれからだ」
「力ならいくらでも貸すわ」
バッドコミュニケーション。
言葉は歩み寄っているのに心は遠ざかってしまった。
「ステラ!!」
「っはい!」
ガバっといってみた。露出した両肩を掴んで正面から迫ってみた。これはいけそうだ。
「愛してる! 愛しているんだ! ステラ!!」
「!?!?!」
何故そこで混乱するのか。
そのまま強引に口付けてみた。
「……」
ステラは抵抗無く受け入れている。
「……ステラ。受け入れてくれるね?」
「……」
「ステラ。僕のものになれ」
「……はい」
そっか。ステラはこういうのが好きなのか。
僕は全然ステラのことをわかっていなかった。
いつだってそんなんばっかりだ。そんな僕が今や世界の王とも言える立場にまで成り上がってしまった。こんなダメダメな僕のままじゃこの先も戦っていけるとは思えない。
ステラの……マリーやコルカの横に並び立てる者にならないと。
「ねえちょっと。良いところを邪魔する気はないのだけれども。……アミったら私のこと忘れてないかしら? あとついでに御爺様……いえ、お父様とガルディオンのことも」
……なんでここで邪魔をするんだい。それに君こそ、ヴィオラの存在を忘れてないかい?
「カラミティとガルディオンはたった今ステラごと僕のものになったばかりだ。気にすることはないよ」
堂々といこう。すれがステラの愛する僕だから。
「お父様。僕はこの女性を伴侶へと迎えたく思います」
「……う、うむ」
お父様が怯んでる。珍しい。
……いずれ報告に行こう。もう一人のお父様にも。
「ガルディオン。僕をステラの番と認めてくれるかい?」
足元、僕らを乗せて飛ぶガルディオンにも問いかけた。
『無論だ』
「ありがとう」
「私は!? 本気で私のことをステラのおまけとして扱うつもりなの!?」
「自分でそれを望んだんじゃないか」
「違うわ! 間違っているわ!」
「冗談だよ。カラミティ。君には新しい名前をあげよう」
その名前には曰くがありすぎるからね。新しく生まれ変わった君には……この世界の王たる僕の隣に立つ君には、もっと相応しい名前を授けてあげなくちゃね。
「ルミナ。今後はそう名乗るといい」
「まあ♪ なんだか吹っ切れたみたいね♪ ありがたく頂戴するわ♪」
気に入っていただけたのなら何より。
ごほん。
「ステラ。マリー。コルカ。ルミナ。どうか僕を支えておくれ。いつまでも共にいておくれ」
「「「「はい!」」」」
ありがとう♪ 皆♪
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あれから。
世界は少しだけ平和になった。
この世界は呪いから解放された。
御爺様も、集落の皆も、既にこの世から旅立たれた。
けど……僕らが生きるために利用しているのは内緒だ。
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世界の中心を陣取る我が国、フォルテイア。
この地の繁栄は今も続いている。
世界は僕らの前に傅いた。
かつてこの世界を襲った大災厄。
それをいち早く察して動いた赤金等級冒険者。
未開拓領域を切り開き、被害を抑えた偉大な王。
その叡智を以って常に王を支え続けた美しき姫。
数々の発明で人々の暮らしを豊かにしてきた小さき少女。
度々復活しては騒動を撒き散らす愉快な魔王。
「私の紹介だけおかしくないかしら?」
「いつもわるいね。助かっているよ」
自作自演もあるかもしれない。僕らは歴史上の誰より多くの命を奪ってきたのかもしれない。
それでも。
今日も平和な世界が続いている。
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ステラはもう一人じゃない。
国も人々もずっと強くなった。ステラが一人で戦う戦場はもう世界のどこにだってありはしない。
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マリーはもう孤独じゃない。
母に疎まれ、兄に嫉妬する小さな姫の姿は過去のもの。マリーは多くの人々を纏め上げてきた。国の母たる者として、誰もが慕う王妃となった。
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コルカはもう孤高じゃない。
かつては工房に引き籠もり、名も存在も知られなかった少女は、世界の誰もが知る至高の職人として名を馳せた。
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ルミナはもう独善じゃない。
よかれと思って、無自覚の悪意を振りまいていたスライムは討ち倒された。
多くを学び、人の善悪を誰よりも理解した彼女は、世界のため、人々のため、今日も悪意を操り続けている。自ら悪を集め、滅ぼされるという形で。
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僕は……最初から一人ではなかったけれど。
だからこそ。そんな僕だからこそ。彼女たちの孤独を取り除けたのだと思う。
けどまだ足りない。世界に孤独は溢れている。
僕にはまだまだやるべきことがある。
世界の王として勤め上げねばならぬ責務がある。
「いつまでもお供いたします。陛下」
「……いや。なんでヴィオラがまだ生きてるの?」
あれから何百年経ったと思ってるの?
「酷いです。陛下。あんまりです」
「君も付き合い良いね。そんなに僕らのことが気に入ったのかい?」
「当然です。今更何を仰るのですか」
「なら僕の伴侶に加わるかい?」
「遠慮します。今の立ち位置が楽しいのです」
「だと思った」
ふふ♪ 振られちゃったぜ♪
「あ・な・た♪」
げっ……。
「アミったら。またナンパしていたのね」
「困ったものだ」
「私たちだけじゃ満足できないのかしら?」
皆も居たんだ。
戻ってきたなら声かけてくれればいいのに。
「ねえ、ステラ」
「なに?」
「そろそろ秘密を話してしまおうか」
「ふふ♪ 今更ね♪」
「よかったね。この世界に生まれてこれて。皆と出会えて。姉妹になれて。家族になれて」
「もちろんよ♪ アミにもいっぱい感謝しているわ♪」
「僕もだよ。ステラ。僕の姉になってくれてありがとう」
「今は伴侶よ♪」
「そうだね。これからもずっと」
「ええ♪ いつまでも♪」
これにて完結です。
ここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。
次回作のご案内です。お楽しみ頂けましたら幸いです。
【転生したら猫耳美少女メイドだった。悪役令嬢に攫われた。 ー 愛知らぬ光の悪役令嬢と気まぐれポンコツ猫娘。南国の楽園を目指す ー】
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