表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】異世界バディ ー 天才双子少女の転生チート異世界征服 ー  作者: こみやし
03.王国動乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/47

03-02.悪魔の所業


 なんなのだ。この若造は。



 眼の前でふんぞり返るのは、成人したばかりの線の細い少年……いや。少女だ。


 王家から与えられた姫君を従者のように侍らせ、執政官として、領の全てを取り仕切らせている。



 こやつは気付かぬのだろうか。


 父である、先代ラクティ辺境伯の偉大な功績を引き継ぎ、この一年あまりに至っては、先代をも上回る勢いで領地開拓を続けてきたというのに。


 今まさにその全てが王家に掠め取られようとしているというのに。


 人々は思うだろう。優秀だったのは先代と姫君であったのだと。この少女は一時しのぎの傀儡に過ぎなかったのだと。この一年の発展すらも先代の偉大な功績の残滓に過ぎなかったのだと。


 ふざけた話だ。王家はよっぽど未開拓領域の開拓にご執心らしい。奴らのやり方はわかっている。今回はこの愚かな少女を傀儡に仕立て上げようというわけだ。我が息子を奪い去るだけでは飽き足らず。つくづく反吐が出る。



 そう思っていた。ここに来るまでは。


 ……だが。……なんなのだこの若造は。


 何故全てを知るはずの姫君がそのような顔をするのだ。


 いや。知らされておらぬのか? この姫君もまた、王家の傀儡に過ぎぬのか?


 だからこのような幼き者どもに取り仕切らせていると?



 ……そもそもこの若造はどこから湧いてきた。なんなのだこの魔力量は。まるで化け物ではないか。隣に並ぶ姫と比べても別物だ。そもそもこやつが感覚を狂わせておるのだ。王家の者すら霞むほどだ。何故あの時気付けなかった。城の結界が原因か? それとも抑制する手段があるのか? 今回は敢えて開放していると? わからん。こやつはなんなのだ。


 まさかこやつ自身も王家の? 平民の出とは意図的にばら撒かれた偽りの情報なのか?


 いや。魔物に産ませた実験体とでも言われた方がまだ信じられもしよう。


 魔道具とやらも出どころは同じか。もとより王家が影で進めてきた禁忌たる実験なのやもしれん。


 だとすれば未開拓領域への執着にも説明がつく。奴らはこの地を実験場に作り変えるつもりなのだ。或いは既に……。




----------------------




「フォルティス伯爵閣下」


「……お久しぶりでございます。王女殿下」


「その呼び名は既に返上しておりますわ。今は辺境伯家の妻でございます。そして、此度の一件を取り仕切っております執政官にござます」


「執政官殿」


 マリーのことは案外素直に認めるんだね。僕より幼いくらいだから反感を示すかと思ったけれど。


 いや、反感はあるのか。



「続きはわたくしからお話させて頂きますわ」


 マリーが僕の隣に腰を下ろした。



「伯爵閣下の望み通り、単刀直入に申し上げましょう」


 仕切り直しだ。マリーは伯爵に隙を与えぬよう、すぐに言葉を続けた



「御子息の件。申し訳ございませんでした」


 は? え?



「執政官殿。執政官殿からそのような事を申される謂れはありませんな」


 伯爵は心底失望したと、冷ややかな視線を向けてきた。



「これはわたくし個人の言葉ですわ。元王家の者として、そしてこの地の領主に嫁いだ者としての言葉ですわ」


「あくまで王家も領主本人も関係が無いと?」


「ええ。わたくしにその権利はございません」


「ならば謝罪などに意味はありますまい」


「この地の執政を為す者としての判断ですわ」


「今更形だけの謝罪に何の意味があると?」


「求められていないことはわかっております。ただわたくしは理解すると。そう申しているのです」


「だから歩み寄れと?」


「伯爵閣下が私怨のみにて動いておられるわけではないと、存じておりますわ」


「……」


 え? そうなの?



「当時の記録を調べました」


 やっぱり。



「閣下が王家への不信感を抱いておいでの事も理解します」


「……」


 王家に? なんで? ラクティ辺境伯家にじゃなくて?



「……ならば何故そやつには伝えておらんのだ」


 こちらを睨みつけてきた。随分と嫌われたものだ。あと僕が知らないこともさらっと見抜いてきた。やるねえ。



「一つ。わたくしにも読み解けぬものがあったのです」


「付き合わんぞ。これ以上余計な話を続けるのであれば」


「閣下。暫しの辛抱を」


 メイドたちが一斉に動き出した。



「貴様!」


 伯爵と付き人たちが身動きを封じられた。



「これは相互理解のためです」


「何を言っておるのだ!!」


 どう見ても仲直りしようって光景じゃないよね。



「アミ様。伯爵閣下は被害者なのですわ」


 うん。言われなくてもわかってる。今まさにそうだもん。



「彼は愛する息子を奪われたのです。王家の傲慢によって」


「王家? 辺境伯家や伯爵家自身の都合じゃなくて?」


「はい。王家は以前よりこの辺境伯領を重要視しておりましたの。おそらく目的はアミ様と同じ。未開拓領域の完全なる開拓と、世界の中心たる心臓国家の樹立。伯爵閣下の御子息はその布石として利用されたのですわ」


 布石?



「つまり、マリー以前にも王家から辺境伯家へ降嫁させるつもりだったってこと? そのために先代辺境伯であるお父様に養子を取らせたの?」


「その通りですわ」


「ならなんで二十年も黙っていたの?」


「我が父である、現国王陛下が王位を継承したからですわ」


「そのゴタゴタで流れたと?」


「順を追って話しますわ」


 そうだね。その必要がありそうだ。



「今から三十年程前のことです。当時、フォルティス伯爵家には十に満たぬ齢の少年がおりました。彼は現フォルティス伯爵閣下の長子であり、当時の伯爵、現伯爵閣下の父君によって、ラクティ辺境伯家に養子へと出されました」


 そこに王家が絡んでいたんだね。



「それを裏で命じていたのが、先代国王陛下だったのです」


 ふむふむ。



「先代国王は、自らの娘を嫁がせるつもりでおられました。実際、婚約の話も取り交わされていたそうですわ」


 マリーと同じパターンだね。



「それから十年程が経過した頃の話です。王の死期が迫り、継承争いが始まった頃の話です」


 うん。



「当時の王太子は野心を抱いておりましたの。王の策を不服とし、自らの子の中から婿養子を送り込もうと考えました」


 より強い支配を実現したかったんだね。開拓を主導したかったのだろう。



「だとしたら兄の死因は……」


「謀殺されたのです。当時の王太子によって」


 ……そうなるよね。王太子は別の貴族令嬢を養子に迎えさせるつもりだったのか。いずれ自身の息子を婿養子に入れるために。そのためには王が送り込んだ義理の息子は邪魔だったのだ。



「結局王太子は失脚し、我が父が王位に就きました」


 そうして計画は流れたと。或いは、今の陛下は意図的に距離を置いたのかもしれない。



「……よく調べたものだな」


 宰相補佐のユリウスが、或いは陛下自身が力を貸してくれたのだろう。



「ただ一つ、分からぬことがございます。伯爵閣下は、なぜ御子息の痕跡を消させたのですか?」


「……それが本当にわからぬのか?」


「これ以上利用されたくなかったんだね」


「……そうだ」



 父たる彼にとっては、どちらも同じことだったんだ。


 我が兄は……伯爵の愛する息子は、生きている間、王家の企みに翻弄され、利用され、挙げ句の果てに謀殺された。


 お父様……先代ラクティ辺境伯は、そんな哀しき義理の息子をせめて英雄として祀ろうとした。


 しかし伯爵にとって、それは息子の死後までをも利用しようとする、悪魔の所業にしか映らなかった。


 だから忘れさせたのだ。彼が……せめて死後だけは、安らかに在れるようにと。



「フォルティス伯爵閣下。誠に申し訳ございません。我が父の過ちは、現ラクティ辺境伯であるこの私が償います。どうか、その御心の内をお聞かせ願えませんでしょうか」


 どのような理由があろうとも、お父様は我が子を守ることができなかった。ならば、その罪は僕が背負おう。この辺境伯の名にかけて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ