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【完結済】異世界バディ ー 天才双子少女の転生チート異世界征服 ー  作者: こみやし
02.領地改革

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02-09.持たざる者


「魔道具ですの?」



「うん。けどこれは、僕の個人的な趣味みたいなものでね」


 もちろん実益も兼ねている。単に市場には出回らせられない品という意味だ。この工房を見せたことがあるのも、他にはステラとヴィオラの二人だけだ。



「どんな事が出来るんですの?」


「これかい? これはね。偵察機だよ」


「ていさつき?」


「偵察用の魔道具だよ。要はフィリーと同じさ」


「お姉様のぬいぐるみですわね」


「うん。あれは特別なものでね。魂の定着が容易なんだ。これは魔石を使って擬似的に再現したものだよ」


「あのぬいぐるみにも魔石が?」


「ううん。そうじゃないんだけどね」


「全く同じ物を生み出すのは難しいんですのね」


「うん。そういうこと」


「この小さな円盤がひとりでに飛び回り、遠く離れたアミ様に情報を届けてくださるのですわね」


「そういうこと。理解が早いね♪」


 ふふ♪ マリーは優秀だね♪ ステラだけじゃなくて僕の弟子にするのも良いかもしれないね♪



「何故円盤の形をしているんですの? 鳥を模した方が怪しまれないのではありませんか?」


「それは試作品だからね。シンプルでいいんだよ。形状は」


「そういうことですのね」


 本当に賢い子だ。偵察機なんて概念はこの世界に存在しなかったのに。


 そもそもこの世界の人類は基本空を飛べない。飛行機なんてものは存在しないし、飛行魔術を扱えるのだってステラくらいだ。何せ僕だって自力では使えないくらいだからね。


 当然航空戦力もステラが現れるまではガルディオンくらいしか存在しなかった。


 そんな世界に生きるマリーがあっさりと用途を理解して提案してみせた。この子は戦争に関わったことだって無かったのに。その想像力が羨ましい。この子は間違いなく僕に足りないものを持っている。



「これがなんだかわかるかい?」


 今度は逆に質問してみた。長細く、先だけ少し曲がった箱型の魔道具を手に取り、マリーに差し出した。



「両端に無数の小さな穴? 中身も何かありますのね……」


「実はこれ、二つセットで使うものなんだ♪」


「ならば浄水装置というわけではありませんのね」


 ああ♪ ふふ♪ 本当に賢いね♪



「惜しいね♪ 片方の穴から入って、もう片方の穴から出てくるという着眼点は良かったよ♪」


「なんですの?」


「通信装置さ。離れた人ともこれで話が出来るんだよ♪」


「まあ♪」


「試してみようか。それを耳に当てて待っていて」


 僕はもう一つを持って部屋の外に出る。



「もしもし。聞こえるかい?」


『バッチリですわ♪ アミ様のお声が耳元で聞こえていますわ! もっとですわ! もっと聞かせてくださいませ♪』


 大興奮だ。ちょっと興奮しすぎじゃない?


 部屋に戻り、マリーの耳元に唇を近づける。



「どっちが好きだい?」


「っ!?」


 ありゃ?


 突然力の抜けたマリーを慌てて抱きとめる。



「きゅ~……」


 気を失ってらっしゃる。



「ヴィオラ」


「見張りはお任せください」


「違うよ。ベッドに運んでおいて」


「湯浴みを先に済ませられるのですね。良い心がけかと」


「馬鹿言ってないで早く預かって」


「落ち着いてくださいませ。領主様。すぐに目を覚まされます。そちらのソファで十分かと」


「……そうだね」


 確かに冷静じゃなかった。自分で仕掛けておいて。なんだか調子が狂うな。



「ふふ」


「なに?」


「あまりにも熱心に見つめられるものですから。微笑ましいものだと。嬉しくなった次第にございます」


 こんにゃろ。



「……一度聞いてみたかったんだけどさ」


「なんなりと」


「ヴィオラはこれでいいの? お父様からよろしくって頼まれたんでしょ?」


 僕とマリーじゃ子は成せないよ? わかってるよね?



「アミ様の幸せが最優先にございます」


「マリーなら僕を幸せにしてくれるって? そう思うの?」


「もちろんでございます」


 自信満々だね。ちょっと複雑だよ。僕の心は相変わらずステラに囚われたままだからね。



「……アミ様」


「おはよう。マリー」


 顔が真っ赤だね。結局ずっと抱きしめたままだったね。



「立てるかい?」


「……ええと」


「いいよ。無理はしないで」


 マリーを横抱きにしてソファに移動した。



「……降ろしてくださいまし」


 珍しい。



「もう少しこうしていたいんだ。ダメかな?」


「は、はい、あ、いえ。構い、ませんわ……」


 どしちゃったん? らしくないじゃない。



「ねえ、マリー」


「……はい。アミ様」


「一つ相談に乗ってほしいんだ」


「……相談? ですの?」


「実は行き詰まっていてね。君の意見を聞かせてもらえないかな」


「なんなりと」


「ありがとう♪」


「い、いえ……」


 ふふふ♪ 可愛いものだね♪ 真っ赤になっちゃって♪



「マリーは通信装置の欠点がわかるかい?」


「……つうしん?」


 あれ? 落胆した?



「……わかりませんわ」


 ちょっと拗ねてる? 何か期待させちゃったかな?



「いくつかあるんだけどね。一つは特定の端末同士でしか通信が出来ないことなんだ」


 前世の携帯電話みたいに扱うのは無理がある。どこかに電話局でも作って、手動で中継するみたいな使い方は出来るのかもしれないけれど。


 所謂「交換手」ってやつだね。昔の電話は番号を指定してかけるんじゃなくて、人力で通話回線を繋いでいたそうだ。ト◯ロで主人公がお父さんに掛けていたあの電話みたいに。



「何故ですの?」


 お。興味を持ってくれた。切り替え早いね♪



「実はね。これって一つの魔石を二つに割って作るんだ。それぞれの箱に一欠ずつ。加えて通信可能範囲は元の魔石の大きさや質に応じた距離になるんだけどね。何故こんなことが出来るかと言うと、魔石は元々魔物の臓器の一部だからさ。実は自己修復機能が備わっているんだよ。魔石にも。だから引き合うのさ。目には見えないけれど、極めて細い魔力の線が繋がっていてね。どれだけ離れていても他の欠片の位置が掴めるようになっているんだ。興味深い性質だろう?」


「……大きな魔石が欲しいんですの?」


「ううん。そういう話じゃなくてさ。いや、それでも解決はするんだけどね。理論上は」


 そう。例えばガルディオンの魔石だ。あれ程のものがあれば世界各地に通信端末を配備出来るだろう。組織の件でも間違いなく優位に立てる筈だ。



「他の当てがあるんですのね」


「うん。実はね。とある魔物を特殊な飼育下に置くことで、魔石を無数に生み出すことが出来るんだ」


 不死性の高い魔物、中でもスライムなんかは魔石を多少削り取られた程度で死ぬことはない。魔力を与えて魔石を成長させつつ、少しずつ削り取っていくことは可能なのだ。



「……魔物の飼育は禁じられていますわ」


「うん。それに倫理の問題もある。いくら魔物だからって、痛覚が無いからって、そんな残酷なことを許容できるのかって話でもあるよね」


「ならば何故ご存知なのですか?」


「実は魔道具って僕一人で生み出したものではないんだよ」


「先人がいらっしゃると?」


「というより共同研究者かな」


「ならば同罪ではありませんか」


 手厳しい。その通りだけども。



「御爺様はこの国の住人ではないんだよ。そして当時の僕もね。だから大目に見てくれると嬉しいな」


 御爺様がおおよそ倫理観と呼べるようなものを持ち合わせていない件については黙っておこう。



「御爺様? アミ様は国外からいらしたのですか?」


「うん。実は僕もステラも未開拓領域の中で産まれたんだ」


「……どういうことですの? あの地に人が住んでいるんですの?」


「うん。まあね」


 世間一般的には未開拓領域なんて呼ばれているけれど、実は深部に、ごく一握りの強者が隠れ潜む集落が存在する。


 僕とステラは、その地に赤ん坊の頃に放り込まれたのだ。


 拾ってくれた御爺様は育ての親ではあるけれど、今世における実の両親はたぶん存在すらしていないのだろう。神様パワー的なやつで急にポップした感じだ。たぶん。今はまだマリーに前世のことまで話すつもりはないけれど。



「そこにご両親が?」


「ううん。居なかったよ。詳しいことはわからないけどね」


「それは……」


「気にしないで。それよりね。御爺様は僕の提案を聞いてとても強い興味を持ったんだよ。それから二人で魔道具の開発なんかを進めてね。魔物を使った実験なんかもその時にね」


 あのスライムは元気だろうか? ステラの魔力を貰っていたからか、随分と仲が良かったのだけど。流石にこっちには連れてこれなかったみたいだね。


 今頃寂しがってはいないだろうか。そもそもそんな感情、スライムにあるのだろうか。ステラならあるって言いそう。



「御爺様を迎えたいんですの?」


「それは無理だよ。御爺様は人里で暮らせるような方ではないから」


 だからあんな場所に引き籠もっているわけだしね。



「行き詰まってると言ったのはね、この少しだけ先の話さ。さっき言った方法を工夫して認めてもらうか、或いは全く別の方法を考えてみるべきか。そんな事を悩んでいたんだよ」


「……具体的な手段の話ではなく?」


「そう。僕はこうなんだ。僕は数多の案を出してきた。この領を精一杯発展させてきた。その成果は出ていると自負しているよ。けれど僕が進められるのはいつだって最初の一歩だけなんだよ。いつもそこからは誰かに頼むんだ」


 その最初の一歩だって自分で考えたわけじゃない。ただ前世の知識を持って産まれただけだ。僕は御爺様やステラとは違う。ただ魔力と知識が多いだけの凡人だ。


 きっとステラが領主をやっていれば僕のように毎晩毎晩必死に机に噛りついていることもなかったのだろう。マリーだってそうだ。間違いなく僕より上手く領主をやってのけるだろう。僕には圧倒的に才能が足りていない。要領が悪い。力が足りていない。こんな自分が嫌になる。


 だからって立ち止まっている暇なんてある筈もない。世界は滅びる直前だ。誰もそうとは気付いていないけれど。なんとしても奴らを止めねばならない。この僕が。



「魔道具だってそう。基本は専門のチームに任せてあるよ。ここにあるのは試作品だけ。必要なものではあるけど、果たして広めてしまって良いものなのかという悩みもある」


 通信端末を複製出来たとしても更なる問題が現れる。一つ奪われればこちらの情報が全て筒抜けになってしまう。苦労して量産したものがたった一つ失われただけで使い物にならなくなるのだ。



「アミ様。お決めになられるのはアミ様ですわ」


 マリーはもう僕の悩みの本質を理解したようだ。本当に賢い子だ。僕とは全然違う。何もかも。



「ですがアミ様。アミ様がそれを辛いと仰せならば、わたくしが代わりを務めてみせましょう」


「……」


 驚いた。まさかそんな事を言い出すなんて。



「……ありがとう。けれど遠慮しておくよ」


「差し出がましい事を申しました。どうかお許しを」


「ううん。本当にありがとう。マリーがそう言ってくれて嬉しかったよ」


 けどやっぱり僕にも意地があるからね。まるで男の子みたいに厄介なプライドが。



「アミ様。どうか本心をお話くださいませ」


 え?



「僕は本当に」


「その件ではございませんわ」


 というと?



「なんの為に必要とされていらっしゃるのですか? 未開拓領域を開発する為ですの? それとも他国を落とす為? 例の組織を壊滅させる為? アミ様が本当に見ていらっしゃるのはどこなんですの?」


 なるほど……。



「以前アミ様はお話してくださいました。広大な未開拓領域を切り広げ、世界の中心たる心臓都市の建設を成すのだと」


 そう言えばあの時は明言しなかったね。



「マリーの想像通りだよ」


「アミ様の口から聞かせて頂きたいのですわ」


「僕は世界を手にするよ。ステラが幸せに暮らせる世界を作る為に」


「それだけですの?」


 マリーはちょっとだけ頬に空気を溜めた。



「マリーと幸せに暮らす為に」


「本当に本当の本心ですのね?」


 ちょっと軽く言い過ぎたかな。



「信じておくれ」


「口付けの一つもしてくださりませんと」


「それはまだ早いんじゃないかな。だってほら。僕らむぐ」


 塞がれた!?



「……もう。強引なんだから」


「……そうですの。お姉様とは既に済まされていたのですわね」


 なんで気付いた!? 今の流れで!? どうしてそこ!?



「……僕らは姉妹だよ?」


「アミ様はもっと取り乱す筈ですわ」


 スルーされた。



「そりゃあ姉妹だからね。小さい頃は毎日でもしていたさ」


 嘘だけど。昔からバッチリ前世の記憶があったからね。



「アミ様。わたくしに嘘は必要ありませんわ」


「どんな僕にでも付いてきてくれるの?」


「そう言っているではありませんの」


「それもそうだね」


「全然響いていないのですわ」


「ショックかい?」


「当然ですのよ!! わたくしの乙女心をなんと心得ますの!?」


「ならもう一度むぐ」


 判断が早い。



「……ねえ、知ってる? マリー?」


「なんですの?」


「ヴィオラがずっと見てるんだ」


「問題ありませんわ」


「ヴィオラ。その魔道具から手を離しなさい」


 どうしてカメラを手に取ったのかな?



「回れ右。外に出て扉を閉める。良いって言うまで入ってこないで」


「承知いたしました♪」


 なんで嬉しそうなの?



「ふふ♪」


 こっちもだ。


 そうか。まだ続けるつもりだと思われたのか。



「アミ様♪」


「僕はむぐ」


 話を聞いておくれ。マイハニー。

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