表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/9

そのみっつ弐/01 「 はやかわ 」

 現在の この状況が 全く理解出来なかった。

 「 ハヤカワ 」は、 ヒゲをピクピクと動かしながら、 部屋の中を ふた通り見回した。

 見覚えのある場所だった。

 「 ここは・・・、 タケル君の部屋・・・ だよね 」

 

 何故、 こんな所にいるのだろう?

 主観者(タケル君) とのダイレクト接続は切れている。

 少なくとも、 周囲500m内には タケル君はいなかった。

 その状況だけは確実だった。

 しかし、 この部屋で再起動する直前の、 整合性と連続性が確保された記憶が全く存在しなかった。

 それどころか、 同期した標準時刻と 自身内部の継続累積時刻が大きくずれていた。

 2,828時間。

 約4ヶ月近くの記憶が消失してしまっている。

 64分毎にバックアップされているはずの 自分の行動ログにアクセスしてみるが、 そこもまた 空白となっていた。

 延々と遡ると、 時刻のズレと同じ 2,828時間前のログが 直近の最終バックアップとして見つかった。

 現状、 自身の構成プログラム内に残っていた キャッシュ記憶と一致している。


 その時、 ハヤカワは タケル君と一緒に南極にいた。

 外部の公式記録とも整合が確認できる。

 南極の ボストーク湖底で発見された大規模遺構の探査グループの一員として ・・・

 何か・・・重要な調査を・・・

 ・・・ ・・・ [ 全身が真っ白い 異常に白い小さな女の子 ] の映像が 一瞬 頭に浮かぶ。

 それは、 消失した視覚記憶の副次的残滓だった。

 それ以上 何も思い出せない。


 南極での探査に関する情報が、 重要な部分が全て 削除 若しくは厳重に封鎖されていた。

 念のため、 一緒に南極に居た タケル君の第一イマジナリーである 「 カーター 」 のバックアップ記憶も覗いてみる。

 データが存在していたはずの領域は、 完全にノイズデータで上書きされていた。

 ハヤカワは、 過去の情報の入手を諦めた。

 これ以上の情報を探る行為は、 それ自体が 様々な意味で危険であると推測出来た。

 自分が今ここにいる「目的」を、 今は思い出せない「目的」を 果たせなくなる危険。

 ハヤカワは 当面の行動指針を、 現在のこの場所での情報収集に切り替える事にした。


 ハヤカワは、 この家の敷地内に常設置されている各種センサーに接続を試みる。

 近赤外線域まで拡張された光学センサー 38箇所が確認できたが、 この規模の家としてはかなり少ない方だった。

 接続には 以前使用したパスキー認証が そのまま利用できたが、 さすがに同キーでは 過去の映像記録にまではアクセス出来なかった。

 現在、 家の中には 人間は一人。 

 タケル君のお父さん 「パパさん(佐伯崇師氏) 」 が居るのが見えた。

 記憶が正しければ、 タケル君の娘の ミシルちゃん も居るはずだが、 今は見えない。

 「パパさん」 であれば、 色々と情報を持っている可能性が高かった。

 一人で居るという状況も 都合がよかった。

 ハヤカワは、 この部屋を出るため 正面の襖に向かい歩き出した。


 しかし、 襖に空いた隙間に手を入れようとした瞬間、 その手が 何か見えない力に押し返された。

 

 現在の状況の謎を解く 「ヒント」 が、 早速 向こうからやって来てくれた。

 そう思い、 ハヤカワは少しワクワクしていた。


 ・・・・・・・・・・・・


 自身の手が押し返された瞬間、 常時起動している自身の頭部 三対二組のSPAD光学センサーは、 何も 異常な物を感知する事が出来なかった。

 ハヤカワは、 ふと、 現在起動されていないセンサーが 自身[ミスロド] の頭部に埋め込まれている事を発見した。

 そのセンサーの基本構造には見覚えがあった。

 それは、 タケル君が 調査のために南極に持ち込んでいた 「玄場干渉縞推象器」 と呼ばれる装置と 同一のものであると思われた。

 かなり特殊なセンサーであった。

 タケル君が所属している 新府島科学技術大学の穂田研究室が、 外部の研究機関と共同開発したものだ。

 それがどの様な機能を持っているものか 詳しくはハヤカワは知らなかった。

 しかし、 「極秘」 とか 「機密」 とかの肩書きがつく類の かなり貴重な装置であるはずだった。

 こんな所に、 単なる民家に放置されていた 小型ミスロド(ロボット) に内蔵される類の装置では無かった。

 

 この状況も 「ヒント」 であった。

 その装置は、 頭部スペースの75%を占用しているにも関わらず、 受信部が表面外装に塞がれており、 その形状のままでは使用できない奇妙な構造となっていた。

 ハヤカワは、 圧縮凍結されていた装置の制御ソフトを読み込み センサーを起動させた。

 『 心眼センサー フルオープン 』

 眼前の空間に 少しふざけたような手書き文字のロゴが現れる。

 と同時に、 頭部外装が開き センサーの受信部構造が表面に露出した。

 巨大な眼球の様な これもまた手書きのイラスト が書き込まれた構造部が。


 ・・・・・・・・・


 「 なるほど。 これは 『心眼センサー』 って言うんだ 」

 ハヤカワは、 この冗談に付き合うことにした。

 しかし、 収集し始めたばかりの 「ヒント」 がとっ散らかり始めているのを感じ 少し混乱していた。

 今の状況が、 単なる手の込んだ冗談である可能性が出てきてしまったのだ。

小説投稿サイト 「カクヨム」にて、

並列ストーリー


「 つくもぶね [ 境外宇宙より来襲する超常天体に抗する3人の厄災級異才者と人造意識体たち ] 」


を 投稿中。

https://kakuyomu.jp/works/16818093073160539410

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ