表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

空腹の野球部員

 OLが居なくなって空いた席は学ランを着た男の子が座った。坊主でエナメルを肩にかけていたから、おそらく野球部だろう。


 廣瀬も高校の時は野球部だった。朝練をして、授業は寝て、夜遅くまで練習。今思えば相当きついことしていたにもかかわらず、当時はあまりきついと思わなかった。強豪校にいたため、三年間で公式戦に出場したのは片手で数えることができるくらいだったが、振り返ってみると毎日が楽しかった。俺もこんな時期があったと感傷に浸っていた。


 すると、男の子がエナメルの中から、菓子パンを取り出した。朝食を食べていなかったのだろうか、菓子パンを食べ始めた。電車で化粧の次は飲食かと考えていたら菓子パンの匂いが廣瀬の鼻腔を刺激した。それと同時に、廣瀬は驚いた。その男の子が食べていたのは、カレーパンだったのだ。廣瀬は周りの乗客を横目で窺った。どうやら周りの乗客も気づき、冷たい視線を男の子に浴びせている。カレーパンの匂いを嗅いで、無性に食べたくなってきた。廣瀬は鍵探しに時間を追われて、朝食をまともに摂っていないのだ。コーヒーを飲みながら新聞を読むというルーティーンも行うことができなかった。


 カレーパンを食べ終わったと思いきや、男の子はまたエナメルの中を探って、次の食べ物を取り出した。次はなんと肉まんであった。廣瀬はにおいのするものばかり買うなと男の子に言いたかった。男の子は美味しそうに食べ始めた。どうやら周りの視線に気づいていないようだ。幸せな奴だなと眺めていたら、王子駅に到着した。男の子は口に肉まんを頬張りながら、降りて行った。それと同時に、廣瀬は自分も高校生の時に電車で食事をしていたことを思い出した。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ