社会復帰への道 パート3 外出
「おーい、コルディリネ、町に買い物行かない?
プリンは城で友達になった幼い少女に声をかけた。
美しいブロンドの美少女だ。薄いピンクのフリルたっぷりドレスを着ている。
「いいわね、何を買うの?
コルディリネは目を輝かせた。
「ピクニックの材料を買いに行くんだ。
ほら、暖かくなってきたし、城から見える花畑にみんなで行ったら楽しいかなって。
「ピクニックですって!?
コルディリネは目を潤ませた。
「えっと…嫌なの?
「ううん、私、そういうの夢だったの。ありがとう!プリン!
コルディリネはプリンに抱きついた。
プリンはコルディリネをよしよししている。
「町まで行くなら、馬車に乗って行きなよ。
オールバックの美しい青年が馬をひいている。
「あ、ローレンチ!いいの?
「ええ、もちろん、プリンのためならいつだって。
「やった!ありがとう!ローレンチ大好き
ローレンチは照れ笑いしている。
「あら、町に行くのね。迷子にならないように、目を離しちゃダメよ。
美しいブロンドの美女が現れて、妖艶に微笑んだ。
「はい、ガイラルディア。
「ええ。
二人の声が揃ったので、大笑いした。
城の住人はたったの5人。
プリンが来てから1ヶ月、最初は距離を置いていた者も、すぐにプリンが大好きになっていた。
プリンもみんなと友達になり毎日とても楽しく過ごしている。
ただ一人、フィカスを除いて。
突然笑っていたみんなが急に静かになった。
いつの間にきたのか、フィカスが少し離れた所に立っている。
「プリン、もう町にも慣れたか?
「はい、だいたいのお店覚えてるし、大丈夫だよ。
「そうか…。
「ねえ、フィカスも一緒に行かない?いい気分転換になるよ。
「いや、我は絵を描いている途中なのでな。
「そっか…、残念。
「コルディリネ、頼んだぞ。
「はい。
コルディリネは深々と首を垂れた。
それだけ言うとフィカスは自分の部屋に戻って言った。
町へ向かう馬車の中で、コルディリネはプリンに疑問をぶつけた。
「ねえ、プリンはフィカス様の事怖くないの?
「え?怖くないよ。なんで?コルディリネは怖いの?
「ええ…。いつだってすごく冷たいから。
「怒られたりするのかな?
「ええ、失敗は許されないは。厳しいお方よ。
「僕の兄が言ってたよ。子供が悪いことをした時に叱るのは愛してるからだって。
「こ、子供…、そ、そうよね、あっはは。
「僕はフィカスと一緒に買い物行きたかったんだ。
でも、フィカス!、外に出るの嫌いみたい。
何度誘っても断られるんだ。
「そう…なんだ…、プリンって本当にフィカス様が好きなのね。
「うん、だってすごくクールだもの!
「ふうん。確かに見とれてしまうくらい素敵だけど。
「ねえ、どういう時にフィカスは城の外に出るの?
「ううん…そうねえ…。…。そういえば、見たことないわ。フィカス様が外に出たところ。
「えええ、一度も?
「一度も!
二人は黙って顔を見合わせた。
「それは良くないよ!
「プリン…。
「良いこと思いついた!名付けてフィカスを外に出す作戦!
「うう…シンプルね。
「お願い、コルディリネ、協力して!
「うう…
プリンが至近距離で太陽のように微笑んでる。
コルディリネはしぶしぶうなづいた。
「命がけの作戦だわ…(ぶつぶつ)
しばらくして…。
いつものように絵を描いていたフィカスの所にプリンが飛び込んできた。
「フィカス!フィカス!大変だよ!
「どうしたのだ?
「コルディリネが、コルディリネが町で迷子になったんだ!
「……………、ほお。
「ほおじゃないよ、一緒に探して!
「ローレンチは何処にいるのだ?
「い、今探してくれてるよ!
「では、ローレンチに任せておけば良い。我は忙しい。
「な…
プリンは顔を真っ赤にして怒り出して、フィカスをボコボコ叩き出した。
さらに涙と鼻水もボトボト落としている。
「ひどいよ、よくそんなひどいこと言えるね!
自分の子供が危ない目にあってるのに、助けに行かないなんて、ダメだよ!
とにかく、ダメ、ダメなんだよ!
フィカスなんか大大…
フィカスはプリンの手を掴んで叩くのをやめさせて、至近距離で瞳を見つめた。
「コルディリネは無事に帰った。部屋に戻ってゆっくりしていろ。
ヴァンパイアの能力、暗示をかけた。
しかし…。
「………、何言ってるんだよ、ごまかすな!
そう言って、プリンは泣いて暴れた。
(なぜだ、暗示が効かぬのか。
フィカスは大きくため息をついて堪忍した。
「わかった、行く。頼むから、もうそんなに泣くな。
「うう…。フィカス。
「セダム、馬を用意しろ。
「御意。
どこからか執事が現れた。その顔は笑いをこらえている。
フィカスはゆったりしたローブから白いブラウスとズボンに皮のベルトを締めたシンプルな服装に着替えた。長い黒髪は一つにくくっている。
大きな黒い馬にプリンを乗せ、後ろに自分も飛び乗った。
そして、石造りの古びたアーチ門をくぐった。
実に5000年ぶりの外出だ。
前に乗っているプリンが歌を歌い始めた。
フィカスはため息をついたが、その歌声に心を預けた。
町に着くと、ローレンチとコルディリネがすでに待ち構えていた。
フィカスのその様子を見て二人とも目を丸くさせた。
「これは、陛下、実はす、すぐにコルディリネは見つかりましたもので。
ローレンチはガタガタ震えている。
フィカスは二人を睨みつけている。
「よかった、よかった!ねえ、フィカス!
プリンはコルディリネを抱っこしてくるりと回った。
(うまくいったね!
そして、こっそり耳打ちした。もちろんフィカスの耳にも聞こえている。
「満足したなら、帰るぞ。
「待って、まだ買い物してないんだ!手伝って!
「プリン、城に帰るんだ。
フィカスはもう一度暗示をかけてみた。
「お願い!フィカス!ねえ………一生のお願い。
またもや暗示は効かず、プリンはうるうるとした瞳でフィカスを真っ向から見つめた。
フィカスは目をそらしてため息をついた。
「あー…、仕方ないな、また迷子になっては困るからな。
「よーし、じゃあみんなで買い出しだー!レッツゴー
プリンはフィカスの手を引っ張ってマルシェの人混みに突入していった。
ローレンチとコルディリネも微笑み合うと、それに続いていった。
つづく




