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社会復帰への道 パート2 会話

「フィカスーーーー、フィカスーーーー。


(また来た………………。


フィカスの部屋の扉をあけてプリンが飛び込んできた。


「すごく、素敵な部屋をありがとう!目覚めがとっても良かった!

それにね、今朝起きたらバルコニーに青い鳥がいたんだだよ。

僕ね、僕…


「プリンセチア王子、何か用か。

「何って、朝の挨拶だよ。

「…………。

「ねえ、それよりフィカス、僕の事プリンって呼んでいいよ。


(それよりってどれよりだ!


「プリンと呼べば外に出てくれるか?

「いいよ。

「では、プリン。外に出ろ。

「オッケー、じゃあね。


プリンはあっさり部屋から出ると、くるりと踵を返してまた部屋に入って来た。


「はい、一回出ました!

「……………。

「フィカス、一緒に朝ごはん食べようよ!


フィカスはあまりの事に声を失い、頭が真っ白になった。

プリンに促せられるまま食堂に引っ張って行かれた。

食堂では 町から来たパートのおばさんがハムとオムレツ、オレンジ、パンという簡単な食事を作ってくれていた。

食事はもちろんプリンの分しかない。


「あれ?フィカスは何を食べるの?

「……………。これだ。


セダムがグラスに血液を注ぐ。


「わあ!僕も飲んでみたい。

「……………。や…………

「何?

「ふう、やめておけ。とても辛い。

「え!そうなんだ!聞いておいて良かった!


プリンは美味しそうに朝食をもぐもぐしている。

そんな幸せそうなプリンの顔を見ながらフィカスも血をすすった。


「ねえ、フィカスって絵が好きなの?部屋にいっぱいあったね。

どんな絵を描くの?

「むう……………

「見たい!この後、見せてよ!

「う………。

「あ、もしかしてヌードなの?


ぶっとフィカスは血をふきだした。


「はあ、月の絵だ。

「見たい!これ食べたら見せて!


プリンはいそいでオレンジを口に頬張って、むせた。


「お……………。う…………。

「ごふぉ、ゲホ……。はあはあ、フィカス今、何か言った?

「……………。

「何?もう一回言って。ゴホっ

「お……………、ふう。ゆっくり食べていい…。その…時間はある。

「うん、わかったありがとう、フィカス。


フィカスはため息をついた。

執事は面白そうにその様子を見ている。


この城にはフィカスの作品を展示するためだけの建物が敷地内にあった。

そこには何千枚もあるコレクションから厳選された絵画が展示されている。

プリンは黙って一枚一枚眺め、見終わった後一枚の絵画の所に戻りじっくり鑑賞した。

それは青白い月の絵だった。

ふいにプリンは思いついたメロディを口ずさみ始めた。

次第に歌詞もついて歌になってゆく。

フィカスはその歌を聞きながら遠い昔を思い出していた。

その絵は戦が終わって初めて描いた月の絵だった。仲間たちと一緒に見上げた月だ。

歌が終わった後もフィカスは余韻に浸っていた。

気づくとプリンの姿がない。

足音がこの建物の地下から響く。

フィカスは飛ぶように走った。

プリンは地下の奥の扉に手をかけている。

開こうとしたその瞬間走りこんで来たフィカスが抑えた。


「びっくりした!

「愚か者!一人でウロウロしよって!この扉の奥は危険なのだぞ。

「ごめん…。

「どこもケガはないか?大丈夫か?


フィカスはプリンをじっくり見て無事を確かめた。


「ん、どうしたのだ?


プリンはフィカスをじっと見つめている。


「フィカスがこんなに話してくれたの初めてだね。

「 なっ………


フィカスは目をそらして赤くなった。


「ねえ、もっと話して!危ないことしたら話してくれるの?

「この、調子にのるでない!

「わあ!あははは


プリンを肩に軽々と担いで階段を上るとプリンは喜んで笑った。


しばらくして、二人がいなくなった地下に柱の陰から人が現れた。

その人影は小さく笑うと風のようにかけていった。


つづく







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