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悪魔と天使のモノローグ  作者: 無名凡才
33/71

 三十三話 一対二百


 闇夜。

 月明かりを眺めつつ。

 俺は一人、草原に寝転んでいる。

 寝転びながら夜明けを待ち、日中での出来事を振り返った。

 

 ボーグは宣戦布告をしたものの、すぐに開戦したわけではない。

 ボーグの引き連れていた兵は百人程度、村人の方が幾分か多い。

 数で劣る以上、引き上げる選択は正しい。

 ボーグが引き上げていき、村では緊急会議が開かれた。

 会議場に入るなり、バリエノは俺に詰め寄り胸ぐらを掴んだ。

何故(なぜ)言う通りにしなかった!」

「お前の指図は受けない、そう言っただろ? それに、責任は取る」

巫山戯(ふざけ)るな!」

 バリエノが振り上げた拳を、アーツが止めてくれた。

「シュウに責任は無い! 止めるんだバリエノ殿!」

 アルテとロッサにも説得され、バリエノは怒りを(こら)え席に着いた。

「シュウ、まずはご苦労じゃった。村長として正式に礼を言う」

 アルテは手を突き、頭をテーブルにぶつけるまで下げていた。

「時にシュウよ。先の話は(まこと)か?」

 頭を上げたアルテは開口一番、俺の発言を取り上げた。

 責任は取る。確かにそう言った。

二言(にごん)は無い。バリエノに大見得(おおみえ)を切った以上、俺一人でやらせて欲しい」

 反対意見を押し切り、俺は会議場をあとにした。追い掛けてきたアーツに、失敗した場合のプランを(たく)して。

 せめて一度家に帰れば良かったと、そう思いもしたが止めた。

 (いと)しい娘たちに会えば、決意が揺らいでしまうから。

 エルバの想いを守るためには、これが最善なんだ。

 だから俺は一人で戦争をする。二百人と。

 下調べは済んだ。

 戦争前ということもあり、街は閉鎖され最新の情報は手に入らなかった。まぁ、古い情報でも問題はなさそうだ。

 エルバ村に来た兵数は百、半分は領地に残すものだ。だから情報は変わらないはずだから。

 兵種は四種、剣と槍と弓。そして術者。

 警戒すべきは弓と術だが、(さいわ)いなことに弓兵も術者も少なかった。

 何とかなる。何とかする。

 勝てないわけではない。

 大勢との戦いを何度も何度もイメージし、いくつものパターンを考え抜き導きだした答えだ。

 死ぬつもりはもちろん無い。フィオにだって約束したんだから。

 準備は終わった、あとは夜明けを待つばかりだが。夜明けまではまだ時間がある。

 詰め込み過ぎても良くない。

 他のことを考えようと。

 この世界の格闘技術の(つたな)さについて、思いを()せた。

 国家に関わる決闘をしているのに、この世界の闘技者は弱い。といっても、本当の決闘はホーディとの一戦だけだ。弱いと結論を出すには早いかも知れない。

 だからこれは想像でしかない。外れてると思ったほうがいい、単なる予想だ。

 ネーボと戦った時から疑問が生じ、ホーディと戦い発想が逆だと知った。

 国家の大事に関わるから、技術が遅れるんだと。

 技術を格段に向上させるのは一握りの天才達だ。格闘技だろうとそれは変わらない。 

 天才がいくらいようと、伝えなければ意味がない。

 この世界の格闘技は伝授されない。

 そりゃそうだ。下手に教えれば自分が危険になるんだから。

 仮に教える人物が居たとしても、決闘で負ければ死んでしまう。

 ボーグはホーディが死ぬことになんの抵抗も無かった。闘技者は使い捨てなんだ。

 ルナも言っていた、闘技者なら殺し合うものだと。

 だから技術が伝わらない。だからこの世界の闘技者は弱い。

 地球で連綿(れんめん)と受け継がれてきた格闘技術には、遠く及ばない。と、それが俺の予想だった。

 根拠は何も無い。

 思いを馳せてるうちに、太陽が水平線から姿を現していた。

 俺が待ち伏せているこの場所は、港街が見渡せる丘の上だ。

 朝日が昇るにつれ、徐々に敵の動きが見えてくる。

 仕掛けるべきは野戦。

 その時をじっと待つ。

 太陽が姿をさらけ出した頃には、街から続々と兵士が出てきた。

 やる気が無さそうな奴や怖がっている奴も居れば、血気盛んな奴らも居る。 

 そんな奴らが五十人を一組とし集まり、一組を四つに区切り、行軍を開始した。

 二百人で間違いない。

 一対二百人。

「はっ」

 無謀にも程がある。でも、やるしかない。

 二百人全てと戦うわけではない。

 数に頼った人間の中には必ず、逃げる者もいる。

 俺が相手をするのは、どんなに多くても百人までだ。

 一人を相手に仲間が殺されていき、半数を割れば必ず逃げる。

 これは心理戦だ。

 いかに多くの恐怖を見せつけられるかで、俺の勝率は上がる。

 最初から全力で行く。そのための(えさ)を探す。

 丸々と肥えた、あの餌を。

 憎むべき敵、ボーグ・ヴィランを!

 あいつが元凶なんだ! ルナとフィオの両親を奪った、元凶!

 怒りの火を燃やし、見つけ次第沸点(ふってん)に達するよう調節する。

 列の最後尾に、奴は居た。

「ボーーーグ!!」

 雄叫びとともに、盛大に歯を打ち鳴らした。

 

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