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163/244

163.鑑定士、砂漠迷宮を超余裕で突破する



 ユーリたちからチョコをもらった、1週間後。


 俺は隣国【フォティアトゥーヤァ】へとやってきていた。


 この国一帯が、砂漠地帯となっており、冬のこの時期でもギラつく太陽が肌を焼く。


『この砂漠、に……【カノン】ちゃん、いるの?』


『アインよ。カノンとは9姉妹の【6女・カノン】のことじゃ』


 俺はうなずいて言う。


「砂漠のどこかに【ピラミッド】があって、その地下に隠しダンジョンがあるんだと」


『ピラミッド、どこ?』


 確かに、見渡す限り砂しかない。


『どうやら魔法で蜃気楼を発生させ、安易に見つからないように隠れておるみたいじゃな。どうする?』


「問題ない。マオ」


『くくく……わが呪われし力を欲するか……?』


「【浄眼】は別に呪われてないだろ」


『わ、わかってるし!』


 俺は禁術を発動させる。

 そして【浄眼】を使う。 


 ボシュゥウッ…………!


 青い光が一帯に広がる。


「アリス。どうだ?」


『……すごい。あっさり見つかったわ』


『禁術で出力を上げたことで、この国全土に浄眼の効果を届かせたようじゃな。さすがじゃ、アインよ』


 アリスの千里眼で位置を特定し、ピラミッドまで転移能力でテレポートする。


「ここか。妙な形の建物だな」


 巨大な三角形の建造物が、俺の目の前にある。


「この地下にカノンがいるんだな」


 そのときだった。


 ゴゴゴゴゴッ……!!!!


 ピラミット近くの砂が、こんもりと盛り上がったのだ。


 出てきたのは、巨大なサソリだった。


【ふははぁ! 矮小なる人間よ! この我の縄張りに無許可で踏み入るとは、貴様死にたいようだな……げぇええええええ!】


 サソリは俺を見て、目玉が飛び出るのではというほど、大げさに驚いていた。


【あぁあああああアインれれれれれレーシックぅううううう!?】


 ガタガタガタ……とサソリが体を激しく震わせる。


「なんだ、俺のこと知ってるのか?」


【そ、それはもちろんでございますぅ! アイン様はぁ、我々の間で恐怖……もとい、畏怖の対象ですからぁ!】


 サソリは俺の前でごろん、と転がり腹を見せる。


【もう二度と人を襲いませんすみませんだから見逃してください命だけは助けてくださいぃいい!】


 必死こいて、サソリは命乞いをしていた。

「とっとと消えろ」


【はいぃ! すみませんでしたぁああ!】


 サソリは地面に潜り込むと、凄まじい速さで逃げていった。


『どうやら、ジャスパーの推論は、正しかったようじゃな』


「モンスターたちが俺を恐れて近づかない、ってやつか。……確かにそうかも」


『ほんと、さすがじゃなアインは。古竜すらおぬしを見ただけで恐れるとはな』


 俺はピラミッドのなかへと、足を踏み入れる。


 石造りの通路が奥へと伸びている。


 天上からはパラパラと砂が落ちてきて、足元に砂場が出てきた。


『どうやらピラミッド内部は複雑な迷路となっているようじゃな。ゲートが開けぬ特殊な空間になっているようじゃ』


 転移で一発、とはいかないか。


「問題ない。千里眼使う」


 俺の脳内に、千里眼で見たダンジョンの内部構造が入ってくる。


「クルシュ。やるぞ」


 俺の左目が赤く染まり、【虚無】が発動する。


 ボシュッ……!


 眼前の床や天上、壁が……円形にくりぬかれていた。


『虚無でここから目的地までの通路にある障害物を消し飛ばし、最短ルートを作ったのね~。さっすがアイちゃん、あったまいい~』


 俺は床に空いた穴に向かって、歩き出す。

 斜め下へと伸びる、一直線の道を進む。


 途中、何度かモンスターと遭遇したのだが……。


【ひぃいい!】


【ば、バケモノだぁ!】


【逃げろぉ! 逃げろぉ!】


 モンスターは俺に出会った瞬間、一目散に逃げていく。


「俺、別に怖くないよな?」


『はい! アインさん、は、怖くないです! むしろ、かわいい、顔、してます!』


 ユーリが俺を励ましてくれる。


 一方でウルスラは、冷静な分析をする。


『しかたあるまい。おぬしは魔神を超越する力を持つ男じゃ。モンスターから見れば、死神が鎌を持って歩いているように見えるのじゃろう』


『おかーさん、ひどい! アインさん……死神じゃない、もん!』


『ゆ、ユーリ……今のは比喩表現じゃ』


『だとしても、死神はひどい、です! あやまって!』


『す、すまんアインよ』


「いや、気にしてないよウルスラ。それに、ユーリもかばってくれてありがとうな」


『えへへ~♡ アイン、さん……すき~♡』


『……まったく、おぬしは本当に誰にでも優しいな。そんなとこが……わしは好きじゃよ』


 そんなふうになごやかに会話しながら、俺は余裕で、ダンジョン内を歩いて行く。


 何度かトラップやモンスターとエンカウントしたが、どれもたいしたことは無かった。


 ややあって。


「この奥がゴールか」


 広めの部屋までやってきた。


 扉の前には、【人面の獅子】をもした、巨大なオブジェがあった。


『スフィンクスという古代の生物兵器じゃな。意思と知性を持ち、侵入者にクイズを出して、答えられぬものの魂を強制的に奪うらしい』


【……なんじに問おう】


 スフィンクスが俺を見下ろす。


 俺と目が合った瞬間。


【いや、なんでもないっす! はい! どうぞ! 先へ進んでくださいっす!】


 スフィンクスが脇にどいて、ペコペコと頭を下げる。


「良いのか? クイズを出すんじゃなかったのか?」


【いやいやいやそんなあなた様を試すようなマネしないっす! だからマジ命だけは勘弁してほしいっす! すんません! まじすんませんでした!】


 スフィンクスは立ち上がると、俺の前で土下座しまくっていた。


「わかった。見逃す」


【ははー! ありがたき幸せぇ!】


 スフィンクスが深々と頭を下げるその脇を、俺は歩く。


『倒さなくて良いのか?』


「いい。不要だ。かわいそうだしな」


『さすがですわ……アイン様。あんた様の前では……古代兵器すらも格下ということですね。ああ……素敵……』


 テレジアが熱っぽくつぶやく。


 俺は石造りの扉に手をかけた、そのときだ。


【バカめ! 油断したな! これでも喰らえええええ!】


 スフィンクスが俺めがけて拳を振る。


 やつの拳が、俺の禁術オーラの鎧に触れた瞬間……。


 パリィイイイイイイイイイイイイイン!


【ぐぇえええええええええええ!】


 鎧に弾かれて、スフィンクスは背後へとすっ飛んでいく。


 どごぉおおおおおおおおおん!


 背後の壁に、スフィンクスが埋まる。


『さすがじゃ、無意識に禁術を発動させるとは』


「まあ、禁術使うのは、もう呼吸するのと同じだからな。さて……」


 俺は背後を振り返り、スフィンクスを見やる。


「やるか?」


【ひぐぅっ……!】


 ガクッ……とスフィンクスが泡を吹いて、体の力を抜いた。


『どうやらおぬしに殺されるという恐怖で心臓発作を起こし、死んだみたいじゃな。凄まじいな、アインよ』


 そう言われると、マジで最近、自分が死神になったような気がするのだった。

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― 新着の感想 ―
『……まったく、おぬしは本当に誰にでも優しいな。そんなとこが……わしは好きじゃよ』 やっとウルスラが素直になったのにスルー!!??
[一言] 毎日読んでます。これからも頑張ってください!
[良い点] アインさん魔神通り越してもはや死神扱い噴いたwww でも相変わらず精霊さん達には愛されまくりで爆発しやがれですwww [気になる点] 全盛期の魔王ミクトランもこんな感じだったのでしょうかね…
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