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セレニウムの高熱

月もほとんど出ていない夜。

王宮の庭園に1つの黒い影があった。


王宮の一室を見るかのように木の枝に止まる黒い影。


それは黒い鷹である。


木の枝に止まっていた黒い鷹は、しばらくして静かに飛び立ち山へ姿を消す。


黒い鷹は山の深い森の中を飛び続け、その奥にある洞窟に入る。

洞窟の一番奥に着くと黒い鷹は、人の形になった。


黒い衣服と黒いマントを着たその男は

しずかに洞窟の中を歩く。

不思議な事にその男は足音がしないのであった。


洞窟は不気味なくらい静かで、男が歩くとその両端にある蝋燭がひとりでに付いて行っては消えていく。


男が洞窟の一部にある鷹の紋章のような物に触れると、壁が消え男は中に入った。


その紋章から入ると、そこは部屋になっていた。

質素なテーブルと椅子。

そして、ベッドがありその奥はまだ続いているように見える。


「お帰りなさいませ、アストロ様。」


黒いフードを被り腰の曲がった男がアストロと呼ばれた男のマントを受け取る。


「して、いかがでしたかな?」


アストロと呼ばれた男は、椅子に座り足を組んで笑った。


「ああ!見つけたぞ!」


アストロと呼ばれた男は、機嫌よく話し出した。


「王宮の中に穢れが集まりそうな奴を見つけた!」


アストロと呼ばれた男は、髭を触りながら何やら考えているようだ。


「これで私の惨めな潜伏生活も終わりだ!」


「それはようございました。」


黒いフードを被った男が大袈裟に喜んだ。


「あやつは使える。王宮筆頭魔法使いも落ちたな。」


「なるほど、王宮魔法使いに目をつけられたのですな。さすがはアストロ様です。」


「うむ。あやつの心は嫉妬や妬みに溢れておる。他の騎士はなかなか穢れに染まらなかったからな。」


「ええ。あの国の騎士はなかなかに手強かったですな。」


「わしを追い詰めた王宮魔法使いに仕返しもできる。時を見てあの王宮筆頭魔法使いに接触しよう。」


「はい。仰せのままに。」


アストロと呼ばれた男は、不気味な微笑みを作った。




その数日後、王宮筆頭魔法使いであるセレニウムは原因不明の高熱に侵されていた。

王宮の医師が処置をするが、熱は一向に下がる気配がない。


今日の朝から、セレニウムは意識がなくうなされていた。


王宮魔法使いは、魔法力が高い為自分の体の不調を即座に感じ取る事ができる。

しかし、セレニウムは高熱が出るまで何も感じ取れなかった。


セレニウムの高熱はその後2日に渡り続いた。

高熱が出て2日目の夜、セレニウムは朦朧とする意識の中で黒い何かが部屋に入ってくるのを感じた。


「誰…です。」


呼び掛けても返事はない。


これは夢なのか?


セレニウムは現実と夢の区別がつかなかった。


その黒い何かは音もなくセレニウムのベッドに近づく。

そして、その黒い何かは人に変身した。


「ご機嫌よう。王宮筆頭魔法使い殿。」


それはあのアストロと呼ばれた男だった。




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